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27 翔の手 *

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 ヤバイ!!!
って思った時には大抵遅かったりする…。
今回ももれなくそれに当たってしまった。
 
 以前のように反応する俺に物凄く気を良くした翔を止めるのが完全に遅かった。自分の体の事よく分かってるはずなのに、もっと警戒するべきなのに…スルリと回された腕に上半身は捕らわれる…もう、翔の力から逃げられない事は分かってるんだ…あの時だって逃げられなかった…

「離せったら!」

 無理だと思っても身体を捻る。いってぇ…
少し、痛くて涙目にもなってくる。

「晴…洗うだけだから…暴れると痛むんだろう?」

 こっちの気なんか知る由もなく、翔は自分のしようとする事を続けてくる。掌で優しく背中や腕や足の方までさする様に擦り上げてくる。

 だから、触っちゃダメだって……
 あぁ、もう~~~

 痛みとは違う意味で涙が出てくる。

「あっ!」

 ヤバイ!……昨日の今日でこの刺激には、反応したっておかしくもないだろ?だからヤダって…………どうしようか………素知らぬふりを決めて出て行きたいのだが、いかんせん身体が動かない…

「晴、足の力抜いて?足の方良く洗えないよ?」
 
「無理だって…もう、ヤダって言ってるだろ?」
 
 早く、風呂から出たい…なのにまだ翔の奴は洗う気満々でさ…手を離してくれない。

「あ、晴それじゃきついだろ?」

 フグッ……バレた……!?やだ!

「離せってば!翔が色々触るからだろ!」

 必死に足を閉じてたのになんでわかった?
筋肉痛の足がプルプルして閉じ続けてるのもきつくて手でも隠そうとしてたからか?

「いいじゃないか?健康の証拠だろ?逆に反応があって嬉しい位だ。」

「お前、俺に何をしたか、覚えてるよな?」
  
 同意なくもうあんな事はしたくないし、させない。キュッと眉が寄る。最後のストッパーとして言ってみた。

「覚えてる…酷いことをしたと思う。だからちゃんと罪滅ぼししたいと思ってるんだ。」

 スルッと手が大腿に……

「いいって!」

 慌てて翔の手を止めに入る。  

「遠慮しないで…」

「してない!翔!」

 力の入らない大腿を割って翔の手が伸びる。翔の手を止めたくても力じゃ敵わないんだよ。

「自由に動けないんだから自分じゃやり難いだろ?」

「痛むのは下半身だけだから!だからいいって!!翔!!」

 どうせしなきゃいけないなら一人でゆっくりさせてくれ!
 アホだな俺……何度も防いだって最初からわかってるじゃん、勝てないってさ……

「…っくぅ……」

 昨日のを鮮明に思い出すし、俺のを握り締めているのが翔の手だって言うだけで、抵抗らしい抵抗ができなくなる。お湯の中だから何をしてるのかはっきりと見えないけど、浴室では俺の声だけ生々しく響いていく。

「んぅ……っ………っ」

 記憶が混乱する…意地でも声なんか出すもんか!
 何の意地か自分でもよく分かってもいないが、何かに縋り付いていないとパニックを起こしそうで……恐怖に負けそうで…
 
「晴……晴……力、抜いてて……大丈夫だから…」

「な、にがっ……」

 大丈夫なのか…!大丈夫ならこんなことにはなって無い…

 ただ違うのはずっと翔が優しく声をかけてくれていた事だけ…あいつの手、腕や熱、声はまんま同じでも、その優しさだけが違ってて混乱する……
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