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11 光の中へ

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 早く!早く…!
 それからの俺は、係官と翔を急き立てる様に急いで光のある場所へと向かった。もう、翔を逆に鷲掴んで引きずる様に引っ張っていった。
 
 色んな花が咲き誇る庭園の端に、係官が言っていた様なこじんまりした光のドームみたいのが見える。

「あれ?」

「ええ、そうです。」

「よし!行くぞ翔!お世話になりました。」

 ペコリと頭を下げて、グイッと更に翔を引っ張る。

「晴。そんなに急がなくったって、俺も一緒に行くから…」

 別に置いて行くなんて言ってないだろ?ただお前とこれ以上こっちの世界にいたらいけない様な気しかしないんだよ…だから、急かしてんの!
相変わらず腰をガッチリキープされた姿勢のまま俺達は光の中に吸い込まれて行った…


 やっぱり眩しくて目をギュッと閉じたまましばらく待つ………眩しさが感じられなくなったらそっと目を開ける。

「お…?帰ってきた?」

 周りを見回せば、あの公園の前だ…!

 ひゃっほー!!声に出したい所をぐっと我慢だ…!ここで叫んでたらただのやばい人……

 で、帰れたのはいいけど、今が何日で、何時……?

「やっば!カバン置いてきた……」

 スマホで日時を確認しようにもカバンを持っていないことに今更ながらに気がつく………

 一度、帰るか?

 何か大事な事を忘れている様にも感じたけど、元の場所にいる事の安心感の方が遥かに優ってる。

 くるりと向きを変えて、一度家に帰ることにする。今まで帰ってこなかったこと、カバンも無くしたことをどう説明しようかと頭を悩ませる所だが、家に戻れる喜びに比べたらそんなのは小さい事でしか無かった…

 もう少しで、家が見えるって所でホッとため息が出た。この時俺、絶対に家しか見てなかった。ただいま~って帰る事しか見てなかった。
うん、絶対。だから、横から誰かの手が伸びてきても気付きもしなかったんだ…

 いきなり、凄い力で横に引っ張られたと思ったら、あっという間にガチャリと鍵の閉まる音がする。懐かしい、昔見たことあるこの玄関は…

「翔!?」

 すっかり忘れてたわこいつの事。一緒に飛ばされて、一緒に帰ってきてるんだからそりゃ近くにはいたんだよな?もう、自分の事しか考えてなかったよ俺。

 で?

「なんでお前ん家に引っ張り込まれてんの?」
  
 そう、懐かしい景色なのもそのはず、小学校の時によくお邪魔した翔の家だからだ。懐かしい匂いがするのもそのはずだわな。

「そりゃこっちのセリフだろ?」

 心なしか…翔の声が低い……低すぎる…

「何?お前怒ってんの?」

 あっちに行った時なんて拍子抜けするほどニコニコと笑顔でくっついていたあいつが、今や真逆…怖い程眉間にシワが寄っている。喧嘩する時に凄みを聞かせている様な容赦ない顔……

 自分が帰れるってだけで喜んで浮かれてた気分が飛んでいく位には不穏なものを感じる…

 何?喧嘩売られてんの?買えるわけねぇだろ?絶対に勝てねぇ………

 もともと喧嘩する気も勝つ気も無いのだが、本格的に喧嘩突入する前になんとか回避はしたい所。

 どうするかな~~なんて一瞬しか考えられなかった。翔が握りしめている俺の腕が更に引き寄せられた。有無を言わさぬ翔の力の強い事。ここで逆らったらボッコボコにされる運命しか見えんわ……もう、なされるままになるしか無い…

 身を任せていたら翔の部屋までほぼ引きずられる様に移動することになって…ここも久しぶりに入るな~なんて現実逃避的に翔の部屋を見回していたって別に悪くは無いだろ?

 なんて、余裕があったのはそこまでだった……
 翔の奴、俺を思いっきりベッドに投げ入れたと思ったらあろうことか、そのまま覆いかぶさってきた……
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