[完]僕の前から、君が消えた

小葉石

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11 完

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 遠くの建物の煙突から、煙が空高く上がっていく。今日は快晴、これでもかって言うくらいに晴れ渡っていて、きっと汗だくになるに違いない程の残暑厳しい日になった。

 田舎の長閑な風景を周囲に見つつ小高い丘の上の岩場に腰をかけて、今はで遠目にその建物を眺めていた。

(お前怖いよ、まさり…)

(でも善君、寂しくなかったでしょ?)

(そうだけど、これってストーカーだぞ?)

 照れ臭い事この上なし。素直になれないのは男だからだとか今は関係ない。

(最初で、最後の御褒美だったんだよ。)

(あれが?)

(そう…もう我儘は言いませんから、これが最後ですからってお願いしたの。)

 誰に?とは突っ込むまい…………

 まさりの手はしっかりと僕の手を握りしめて、離さない。

(二人共…大変だったね?)

(まぁね…)

(私はラッキーだったな!)

(トラックに轢かれたのに!?)

(ふふふ…でも、生まれて最初で最後の大我儘を聞いてもらったの!もう、思い残すことはないね。)

(そんなに、僕の所に居たかったのかよ…?)

 ちょっとこの質問には、照れ臭すぎてそっぽを剥いてしまったけれど…

(そうだよ~居たかった…最後まで、ちゃんと手を握って一緒にいるよって言ってあげたかった…)

(執念で、居たじゃん、あそこに…)

(おしゃべりは出来なかった…ちゃんと励ましたかったのに…善君の時間下さいって言った分……)
 
 ポンポンとまさりの頭を撫でてやる。今はもう、どこも苦しくも痛くもない。あの時だって、まさりが居てくれたから耐えられたし、怖くなかった。だって、まさりのお迎えだもんな……

(十分だったよ、まさり。一緒に居てくれただけで十分だった…)

 建物からの煙が細く少なくなっていく…
僕らは同じ所に一緒に収められるんだって、両親が話していた。だから、もう心配は無い…

(さ、もう行こう?今度は僕がお願いしなくちゃ。)

(善君が…?何をお願いするの?)

 まさりはちゃんと頑張った。先生から言われた通りに、自分の手で掴めるチャンスを逃すまいと必死に掴み続けてくれたんだ。
 
 だったら、今度は僕の番………

(今度は、ちゃんとまさりと生きたいってお願いする。)


 今度は僕がまさりを幸せにするために…



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