3 / 11
3
しおりを挟む
色白は七難隠すって昔ばあちゃんが言ってたような…でもまさりの場合、少しばかり色白で顔が可愛くても、あの煩さじゃ誰も寄ってこないのではないだろうか…?
病室に戻って夕食を取ろうにも食欲がなく、案の定、熱が出てた…熱が出る前の怠さと寒気はどうにも慣れないし嫌いだったのだが…久々に家族や医療者以外の人間と話をしたからだろうか…?未だ興奮冷めやまない様なちょっとした変化は発熱前の不快な症状も気にせずに夕食まで過ごさせてくれた様に思う。
熱が出始めるとなんとも言えない倦怠感と全身が痛んでいつもなかなか寝付く事ができない………ふっと最初に入院した時のことを思い出した。グッタリベッドで動けなくなっている僕の側には両親が心配そうな顔を覗かせていたっけ?
「…あいつには……いなかったんだ………」
心細い時に手を握ってくれる人も、痛む身体を優しくさすってくれる人も、寝付けない時、取り止めのない愚痴に付き合って寝付くまで側にいてくれる人も…………
「……そっか……あいつ…いなかったんだ………」
寝入る前に不思議な連帯感みたいなものを勝手に感じ取って、まさりを自分が今いる不幸な底まで引っ張り込めた事に変な満足感を抱いてしまった僕は、きっと性格が悪い………
「あ、ここだ!」
ウトウトと怠い身体が休息を欲して、痛みがないうちに少しでも休もうとしていた所で、部屋の外から似つかわしくない元気な声が聞こえてきた…
「こ~んに~ちは~?いるかな?」
「……………」
聞いた事ある声は昨日初めてあったまさりで間違いない。ひょっこりとドアから室内を覗き込むその顔だってまだ忘れてはいないさ…
何してんの?あいつ?
「あっ!善君、いた!」
無言で見つめてた僕の視線と合えばまさりはニコ~~と満面の笑顔だ。
「…………何やってんの?」
素で遠慮もない低い声が出た。
「え、お見舞い?」
「……まだ、面会時間じゃねぇよ?」
「うん。知ってる!でも入院患者同志だしさ?今暇で暇で…する事ないんだよね~」
「………」
こっちは怠くて、眠くて、少し休もうとしてたのに……暇じゃねぇよ…
「…こっち来て、怒られねぇの?」
「うん。友達の顔を見てきますって言ってきたから。行ってらっしゃいって!」
「まじか……」
「もしや、しんどい?」
「……ん…」
まだ、下がったと言えども平熱までじゃない…やっと横を向いてまさりの顔をちゃんと見た。
「…大丈夫…?」
「ん~~どうだろ…?」
慣れていると言えば慣れている。でも
大丈夫かと言えば大丈夫じゃない…怠いし、気分悪いし、眠いし…お前くるし……
「そっか、ごめんね?昨日元気そうだから、またおしゃべりできるかなって思って……」
ほんのちょっとだけ、まさりが申し訳なさそうな大人びた顔になる。でも、そんな大人みたいなら、今ここにはいないよな?
「……いいよ…べつに……」
本当はぐっすり眠りたかったけど、なんだかまさりを突っぱねる事ができない。昨日、勝手に不幸認定しちゃった負い目が有るのかもしれないけど……
「本当?良かった……あのね?実は今病室にいたくなくてさ…」
「…なんで…?」
「話し合いに、来てるのね…?」
「………?」
話し合い?熱があって、夜もあまり眠れなかった僕の頭が働くわけはなくて、何のことかさっぱり分からない。
「…医者の回診?」
それしか頭に浮かんでなんてこないさ。
「ん~~ん!違う…里親とその家族かな……」
「里親?」
まさりは捨て子だったんだろ?
「そう、大人になるまで少しの間代わりに育ててもらってるんだけど……」
育てと言っても親がいるって言うことは心強いものじゃないか?なのに、まさりの顔がどんどん暗くなるのはなんでだろうな……
「私、あんまり歓迎されていなくてね…」
本当の子供ではない子供を預かるのだから本当の親子の様にできないのは分かっているけど、心底嫌われているとは思わなかった…と、真剣に話すまさりの口からは衝撃的な事実が飛び出した。
「お義父さんとお義母さんのお婆ちゃんに階段から落とされたんだよ……」
病室に戻って夕食を取ろうにも食欲がなく、案の定、熱が出てた…熱が出る前の怠さと寒気はどうにも慣れないし嫌いだったのだが…久々に家族や医療者以外の人間と話をしたからだろうか…?未だ興奮冷めやまない様なちょっとした変化は発熱前の不快な症状も気にせずに夕食まで過ごさせてくれた様に思う。
熱が出始めるとなんとも言えない倦怠感と全身が痛んでいつもなかなか寝付く事ができない………ふっと最初に入院した時のことを思い出した。グッタリベッドで動けなくなっている僕の側には両親が心配そうな顔を覗かせていたっけ?
「…あいつには……いなかったんだ………」
心細い時に手を握ってくれる人も、痛む身体を優しくさすってくれる人も、寝付けない時、取り止めのない愚痴に付き合って寝付くまで側にいてくれる人も…………
「……そっか……あいつ…いなかったんだ………」
寝入る前に不思議な連帯感みたいなものを勝手に感じ取って、まさりを自分が今いる不幸な底まで引っ張り込めた事に変な満足感を抱いてしまった僕は、きっと性格が悪い………
「あ、ここだ!」
ウトウトと怠い身体が休息を欲して、痛みがないうちに少しでも休もうとしていた所で、部屋の外から似つかわしくない元気な声が聞こえてきた…
「こ~んに~ちは~?いるかな?」
「……………」
聞いた事ある声は昨日初めてあったまさりで間違いない。ひょっこりとドアから室内を覗き込むその顔だってまだ忘れてはいないさ…
何してんの?あいつ?
「あっ!善君、いた!」
無言で見つめてた僕の視線と合えばまさりはニコ~~と満面の笑顔だ。
「…………何やってんの?」
素で遠慮もない低い声が出た。
「え、お見舞い?」
「……まだ、面会時間じゃねぇよ?」
「うん。知ってる!でも入院患者同志だしさ?今暇で暇で…する事ないんだよね~」
「………」
こっちは怠くて、眠くて、少し休もうとしてたのに……暇じゃねぇよ…
「…こっち来て、怒られねぇの?」
「うん。友達の顔を見てきますって言ってきたから。行ってらっしゃいって!」
「まじか……」
「もしや、しんどい?」
「……ん…」
まだ、下がったと言えども平熱までじゃない…やっと横を向いてまさりの顔をちゃんと見た。
「…大丈夫…?」
「ん~~どうだろ…?」
慣れていると言えば慣れている。でも
大丈夫かと言えば大丈夫じゃない…怠いし、気分悪いし、眠いし…お前くるし……
「そっか、ごめんね?昨日元気そうだから、またおしゃべりできるかなって思って……」
ほんのちょっとだけ、まさりが申し訳なさそうな大人びた顔になる。でも、そんな大人みたいなら、今ここにはいないよな?
「……いいよ…べつに……」
本当はぐっすり眠りたかったけど、なんだかまさりを突っぱねる事ができない。昨日、勝手に不幸認定しちゃった負い目が有るのかもしれないけど……
「本当?良かった……あのね?実は今病室にいたくなくてさ…」
「…なんで…?」
「話し合いに、来てるのね…?」
「………?」
話し合い?熱があって、夜もあまり眠れなかった僕の頭が働くわけはなくて、何のことかさっぱり分からない。
「…医者の回診?」
それしか頭に浮かんでなんてこないさ。
「ん~~ん!違う…里親とその家族かな……」
「里親?」
まさりは捨て子だったんだろ?
「そう、大人になるまで少しの間代わりに育ててもらってるんだけど……」
育てと言っても親がいるって言うことは心強いものじゃないか?なのに、まさりの顔がどんどん暗くなるのはなんでだろうな……
「私、あんまり歓迎されていなくてね…」
本当の子供ではない子供を預かるのだから本当の親子の様にできないのは分かっているけど、心底嫌われているとは思わなかった…と、真剣に話すまさりの口からは衝撃的な事実が飛び出した。
「お義父さんとお義母さんのお婆ちゃんに階段から落とされたんだよ……」
20
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説

愛するあなたへ最期のお願い
つぶあん
恋愛
アリシア・ベルモンド伯爵令嬢は必死で祈っていた。
婚約者のレオナルドが不治の病に冒され、生死の境を彷徨っているから。
「神様、どうかレオナルドをお救いください」
その願いは叶い、レオナルドは病を克服した。
ところが生還したレオナルドはとんでもないことを言った。
「本当に愛している人と結婚する。その為に神様は生き返らせてくれたんだ」
レオナルドはアリシアとの婚約を破棄。
ずっと片思いしていたというイザベラ・ド・モンフォール侯爵令嬢に求婚してしまう。
「あなたが奇跡の伯爵令息ですね。勿論、喜んで」
レオナルドとイザベラは婚約した。
アリシアは一人取り残され、忘れ去られた。
本当は、アリシアが自分の命と引き換えにレオナルドを救ったというのに。
レオナルドの命を救う為の契約。
それは天使に魂を捧げるというもの。
忽ち病に冒されていきながら、アリシアは再び天使に希う。
「最期に一言だけ、愛するレオナルドに伝えさせてください」
自分を捨てた婚約者への遺言。
それは…………

愛してほしかった
こな
恋愛
「側室でもいいか」最愛の人にそう問われ、頷くしかなかった。
心はすり減り、期待を持つことを止めた。
──なのに、今更どういうおつもりですか?
※設定ふんわり
※何でも大丈夫な方向け
※合わない方は即ブラウザバックしてください
※指示、暴言を含むコメント、読後の苦情などはお控えください


忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。

優柔不断な公爵子息の後悔
有川カナデ
恋愛
フレッグ国では、第一王女のアクセリナと第一王子のヴィルフェルムが次期国王となるべく日々切磋琢磨している。アクセリナににはエドヴァルドという婚約者がおり、互いに想い合う仲だった。「あなたに相応しい男になりたい」――彼の口癖である。アクセリナはそんな彼を信じ続けていたが、ある日聖女と彼がただならぬ仲であるとの噂を聞いてしまった。彼を信じ続けたいが、生まれる疑心は彼女の心を傷つける。そしてエドヴァルドから告げられた言葉に、疑心は確信に変わって……。
いつも通りのご都合主義ゆるんゆるん設定。やかましいフランクな喋り方の王子とかが出てきます。受け取り方によってはバッドエンドかもしれません。
後味悪かったら申し訳ないです。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

もう惚れたりしないから
夢川渡
恋愛
恋をしたリーナは仲の良かった幼馴染に嫌がらせをしたり、想い人へ罪を犯してしまう。
恋は盲目
気づいたときにはもう遅かった____
監獄の中で眠りにつき、この世を去ったリーナが次に目覚めた場所は
リーナが恋に落ちたその場面だった。
「もう貴方に惚れたりしない」から
本編完結済
番外編更新中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる