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「失礼します。」
兵舎地下には牢屋が並ぶ。その中には昨日捉えた商人キャラバンの使用人や、用心棒、奴隷として売られて行く所だった子供達がそれぞれ室を違えて入れられている。
昨日の今日のためまだ子供達は釈放されていないが、これから始める取り調べで順次解放されて行くだろう。
不安に満ちる顔やら、憎々しげに見つめてくる視線をすり抜け最奥にある独居房に向かって行く。
独居房には重要参考人やら、重罪犯が入れられるが、その一室が昨日の商人だ。
房の前に立つ警備兵に一礼をして、鍵を開けて貰い中へ入る。
小さな寝台に、洗面、トイレ、椅子が一つ。寝台に腰掛けてでっぷり太った商人が入り口から入って行くスロウルをふてぶてしく見つめている。
「貴方の取り調べを担当します。」
「名は?何と言ったか?」
「は?貴方が私を名指したんでしょう?」
「そうだが、あんたの口から聞きたい。」
「………スロウル…」
「ふふん。やはり良い名だな…」
満足したように肯きつつ商人は独りごちる。
「貴方の名は?」
既に此処から取り調べだ。外に居る警備兵と共に書記官が控えているはず。独居房と言っても音は筒抜けで此方の会話は全て外に聞こえているはずだ。
「私はサタマー、ホルン・サタマーと言う。ホルンと呼んでくれ。」
「………ではサタマー、あの商人キャラバンにいた子供達は?」
「ホルンだよ、スロウル君。いや、スロウルと呼んでも良いかね?」
「………どうして、子供達が貴方のキャラバンに?」
「連れないね…スロウル…」
狭い独居房の事。手を伸ばせば向かい合って座っている相手に手が届く。スッと伸ばされたサタマーの手がスロウルの頬に伸びる。
「フフ、思った通りだ。芯のしっかりしている視線に似合わず、まだ肌は子供の様に滑らかだな…」
触り心地を堪能するかの様にゆっくりとスロウルの頬を遠慮なく撫で上げて行く。
スロウルはピクリとも動かない。この手の接触など今までに数え切れないほど体験して来た。今は職務を全うするのみ。スロウルの瞳に光るものにも動揺は見られない。
「流石に肝が座っている様子。敵陣に切り込んでくるだけはあるね。」
拘束されて独居房にまで入れられている男にこの余裕……
若干スロウルの眉が寄る。
「お遊びのお遊戯では兵士など務まらないでしょう…話を戻しますよ?子供達をどうするつもりでした?」
スロウルの瞳に冷たいものが走った。スロウルで無ければ話さないと言ったのはこの者だ。要望通り来てみれば先程から話を逸らし、落ち着き払ったこの態度。いずれ直ぐにでも釈放されると思っているのか?
「そうだね。遊びではない、此方もね。君に良い事を教えてあげようか。」
「………」
「あの子供達はね。財産になるんだよ?私達のね?」
「………奴隷として売り払うつもりだったのですか?」
「フフ…奴隷だけではない。使い方は色々だよ?あぁ、良いねスロウル。君の視線に射抜かれるのは最高だ。」
「…何に使うつもりだと?」
サタマーの手は遠慮なくスロウルの髪を撫で回す。
「…世界各地に、ああいう子を求める者は少なくなくてね。何に使うかは、さぁ引き取った者達の胸ひとつではないのかね?」
スロウルの眉が寄る。
「…いいね!君の美しい顔を動かすことができるのは、あの可哀想な子供達だけなのかい?」
「…余裕ですね?サタマー此処から出られるとでも?」
「逆に出られないとどうして言える?」
「貴方は国賊です。誰かが許しても国王は許されないでしょうから。」
「威勢が良いねぇ、益々好みだ…」
「………」
この男はわかっているのか?既に自分は囚人で、此処での返答次第で生きるか死ぬかが決まるのに。先程から自分の身を案じている様子など見られない。
理解できない。素直に話しす方が自分の為であろうに…
既に、膝に置いたスロウルの手を握りしめながらその感触を楽しむ様に手の甲をさすっている。
「サタマー、私は貴方と仲良くする気などありませんよ?」
スロウルの美貌に冷たい笑みを貼り付ける。人の生死に関わる中、この手で命を奪ったこともある。最早、任務のためならば人を切るのは厭わない位にスロウルの中では覚悟と納得がついている。
「……凄みがある美人か…君を縛り付けて側に置けたら周りの者が涎を垂らして羨ましがるな…」
「……………」
薄気味悪い事をさらりと言う……
「国賊から物を買う者は居なくなるでしょうから、そんな心配は必要なさそうですよ?」
「そうでもないのさ、スロウル。何処にでも、物を欲しがる輩はいる。そして何処にでも、私の味方はいるものだよ。」
「まだ、自分は助かると?」
「なぜ、助からないと思うのかね?」
この男の自信はなんだ?
手をさすっていたサタマーの手がスロウルの脚の上に置かれる。スルリと一撫でしてからゆっくりと大腿を移動し進んで来る。
「そこまで…」
スロウルの片手は静かに剣の柄へ添えられた。
「サタマー、此処で私は剣を引き抜く事も出来ますよ?」
囚人の暴挙には抜刀も許されている。
「続けるか、知っている事を話すか、どちらにしますか?」
兵舎地下には牢屋が並ぶ。その中には昨日捉えた商人キャラバンの使用人や、用心棒、奴隷として売られて行く所だった子供達がそれぞれ室を違えて入れられている。
昨日の今日のためまだ子供達は釈放されていないが、これから始める取り調べで順次解放されて行くだろう。
不安に満ちる顔やら、憎々しげに見つめてくる視線をすり抜け最奥にある独居房に向かって行く。
独居房には重要参考人やら、重罪犯が入れられるが、その一室が昨日の商人だ。
房の前に立つ警備兵に一礼をして、鍵を開けて貰い中へ入る。
小さな寝台に、洗面、トイレ、椅子が一つ。寝台に腰掛けてでっぷり太った商人が入り口から入って行くスロウルをふてぶてしく見つめている。
「貴方の取り調べを担当します。」
「名は?何と言ったか?」
「は?貴方が私を名指したんでしょう?」
「そうだが、あんたの口から聞きたい。」
「………スロウル…」
「ふふん。やはり良い名だな…」
満足したように肯きつつ商人は独りごちる。
「貴方の名は?」
既に此処から取り調べだ。外に居る警備兵と共に書記官が控えているはず。独居房と言っても音は筒抜けで此方の会話は全て外に聞こえているはずだ。
「私はサタマー、ホルン・サタマーと言う。ホルンと呼んでくれ。」
「………ではサタマー、あの商人キャラバンにいた子供達は?」
「ホルンだよ、スロウル君。いや、スロウルと呼んでも良いかね?」
「………どうして、子供達が貴方のキャラバンに?」
「連れないね…スロウル…」
狭い独居房の事。手を伸ばせば向かい合って座っている相手に手が届く。スッと伸ばされたサタマーの手がスロウルの頬に伸びる。
「フフ、思った通りだ。芯のしっかりしている視線に似合わず、まだ肌は子供の様に滑らかだな…」
触り心地を堪能するかの様にゆっくりとスロウルの頬を遠慮なく撫で上げて行く。
スロウルはピクリとも動かない。この手の接触など今までに数え切れないほど体験して来た。今は職務を全うするのみ。スロウルの瞳に光るものにも動揺は見られない。
「流石に肝が座っている様子。敵陣に切り込んでくるだけはあるね。」
拘束されて独居房にまで入れられている男にこの余裕……
若干スロウルの眉が寄る。
「お遊びのお遊戯では兵士など務まらないでしょう…話を戻しますよ?子供達をどうするつもりでした?」
スロウルの瞳に冷たいものが走った。スロウルで無ければ話さないと言ったのはこの者だ。要望通り来てみれば先程から話を逸らし、落ち着き払ったこの態度。いずれ直ぐにでも釈放されると思っているのか?
「そうだね。遊びではない、此方もね。君に良い事を教えてあげようか。」
「………」
「あの子供達はね。財産になるんだよ?私達のね?」
「………奴隷として売り払うつもりだったのですか?」
「フフ…奴隷だけではない。使い方は色々だよ?あぁ、良いねスロウル。君の視線に射抜かれるのは最高だ。」
「…何に使うつもりだと?」
サタマーの手は遠慮なくスロウルの髪を撫で回す。
「…世界各地に、ああいう子を求める者は少なくなくてね。何に使うかは、さぁ引き取った者達の胸ひとつではないのかね?」
スロウルの眉が寄る。
「…いいね!君の美しい顔を動かすことができるのは、あの可哀想な子供達だけなのかい?」
「…余裕ですね?サタマー此処から出られるとでも?」
「逆に出られないとどうして言える?」
「貴方は国賊です。誰かが許しても国王は許されないでしょうから。」
「威勢が良いねぇ、益々好みだ…」
「………」
この男はわかっているのか?既に自分は囚人で、此処での返答次第で生きるか死ぬかが決まるのに。先程から自分の身を案じている様子など見られない。
理解できない。素直に話しす方が自分の為であろうに…
既に、膝に置いたスロウルの手を握りしめながらその感触を楽しむ様に手の甲をさすっている。
「サタマー、私は貴方と仲良くする気などありませんよ?」
スロウルの美貌に冷たい笑みを貼り付ける。人の生死に関わる中、この手で命を奪ったこともある。最早、任務のためならば人を切るのは厭わない位にスロウルの中では覚悟と納得がついている。
「……凄みがある美人か…君を縛り付けて側に置けたら周りの者が涎を垂らして羨ましがるな…」
「……………」
薄気味悪い事をさらりと言う……
「国賊から物を買う者は居なくなるでしょうから、そんな心配は必要なさそうですよ?」
「そうでもないのさ、スロウル。何処にでも、物を欲しがる輩はいる。そして何処にでも、私の味方はいるものだよ。」
「まだ、自分は助かると?」
「なぜ、助からないと思うのかね?」
この男の自信はなんだ?
手をさすっていたサタマーの手がスロウルの脚の上に置かれる。スルリと一撫でしてからゆっくりと大腿を移動し進んで来る。
「そこまで…」
スロウルの片手は静かに剣の柄へ添えられた。
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