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しおりを挟む討伐隊の中でも、部隊長のお手つきという事でスロウルが一目置かれる様になった時期に、大きな討伐計画が部隊に舞い込んだ。
隣接村や町からの陳情が多く、以前から足取りを追っていた誘拐組織の足取りを掴んだのだ。精鋭隊員を中心に幾つかの小隊を作り数ヶ月間による諜報の成果の大捕物が始まった。
部隊長や副隊長を始め、主要たる隊員は全て駆り出される事になり、勿論アクサードもその小隊に名を連ねていた。
居残り組は遠征準備や兵舎の管理に駆り出され、長期戦に持ち込めば残った兵で他の討伐に駆り出される。
「スロウル、ほら、隊長室の鍵だ。留守中頼む。」
部隊長が帰ってくるまでの間、隊長室で過ごせとの事だろう。皆が見ている前でこれをされれば文句も拒否もできるものではない。
留守の間をまとめ上げるのは訓練兵士長になる。まだまだ下っ端の訓練兵達は自らの訓練と残った雑務に追われる事になる。
「お前ら!俺達がいないからと言ってさぼるなよ!帰還後、各隊訓練兵の昇級試験をする!心して励んでおけ!」
「はい!!」
皆整列して送り出して行く隊の中に濃紺の髪が見えた。
アクサードだ…
アクサードは既に副小隊長として兵を率いる立場にある。スロウルに比べれば、待遇にも昇進にもずいぶん差がついているものだが、自分に置き換えて考えたなら、自身の昇級は無いものと捉えていた方が良い事はよく分かっていた。
スロウルがする事は、生き残る事…ルウアの元に無事に帰る為に確実に生きる力を身に付ける事だ。
久々の大捕物ときて、出兵して行く兵士達はやや興奮もし、荒々しく馬を操っているが、その中で姿勢も崩さず凛と騎乗し堂々としている様は嫌でもスロウルの目を引いた。
彼の様になれたのならば今の自分はどうなっていただろう…何度考えても答えを得られぬ疑問を振り払って、スロウルはその場を離れた。
討伐隊の出兵はおよそ2週間程の期間でこちらの圧勝となった。数十名で結成されていた誘拐組織を相手に怪我人は数名出たものの、死者はおらず素晴らしい成果をあげたと言える。
遠征部隊が帰還すれば兵舎が一気に騒がしくなった。事後処理に走り回りる者達が収監された囚人達の世話に取り調べ、調書作成に取りかかれば、遠征を共にした馬の世話に武器の手入れ、そこ彼処で自らの武勇伝に自隊の隊長自慢に花が咲き、それが終われば食堂で宴会が始まる。
大きな討伐を終わらせれば興奮冷めやらぬ血気盛んな男達のことだ、気も大きくなるし、箍が外れた行動を取る者も出てもくる。
その日は久々の大捕物の為に部隊長、副隊長揃って城へと報告に上がって行き、その隙をついてまたもやスロウルに手を出そうという者が現れたのだ。
この所スロウルにちょっかいを出す者がすっかり減りスロウルも周囲に警戒する事を忘れていたのもまずかった。
倉庫を行き来し、物品を運び込んでいたスロウルを数人の兵士が空き倉庫に引き摺り込んだ。
「何を…!」
最後まで言わせずスロウルの口を塞ぎ倉庫の奥まで引きずって行く。他の者は倉庫の扉を閉めてご丁寧に内鍵までかけている。
スロウルは数人に囲まれていることを悟れば、この後何が待っているのか嫌でも分かってしまって怖気が走る。
けれど、相手は屈強な兵士数人だ。嫌でも、抵抗したくても力では到底敵わない。
……我慢してしていれば、その内終わる。
こんな事、何でもない………
自分の為に、今も心を砕いて心配し、何も言わずに耐えてくれる人がいる。だから、私も耐える…!
ルウア、私は帰るんだ、君の元へ…
青くなりそうな自分の顔色を自覚しながら唇を噛む。
ニヤニヤとしながらゆっくりと体に触れる者を精一杯睨みつけながら耐えようと……
身体を撫でさする手が服を脱がしつつ下半身へと伸びてくる。
……嫌だ、いや、だ……
生理的な嫌悪感か、寒気にも似たものが背中に走った。
「嫌、だ!嫌だ!…さわ、るな!」
それまで大人しくしていたスロウルは力では敵わないと思いつつも思い切り、暴れ出す。
「はな、せ!!」
「おいおい、活きがいいな!いつも隊長と宜しくやってるんだろう?だったら俺たちもおこぼれを貰ったって良いじゃねぇか?」
「俺たちだって頑張ってきたんだぞ?なぁ?」
「誰が!お前達と、なんて!」
力一杯暴れてみても、屈強な彼らからしたらかわいいものだ。暴れるスロウルもなんのそのと衣類を全て剥ぎ取ってしまった。
「おい、誰か咥えてやったら?大人しくなるんじゃねぇ?」
スロウルを押さえつけている男の一人が言う。
前に回っていた一人の兵士がまだ細いスロウルの大腿に手を掛け開かせる。他の者も暴れるスロウルの足を押さえつけてきた。
……誰が!こんな事!あの人が手を出したのは、お前達みたいな者から身を守る為だ!!……
男が身を屈めてくる。
「や、だ!!いや、だ!いやぁぁぁ!!」
ガン!!!!
思い切り叫んだ瞬間に倉庫の扉が蹴破られる音がした。
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