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62 最早見せ物では?

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 王城と言うのは離宮と比べようもないほどの広さがある。一体何人の人々がここで働いているのか?覚えの良いシェインとて、とてもじゃ無いが城内で迷子になる自信がある程広く、複雑に作られていた。


 その中でも、大広間は格別でそこだけで一屋敷スッポリと入ってしまうかと思われる程の広さと高さを誇り、王族の人々全てを収容してもまだタンススペースを取れるほどの広さがある。


 華やかに飾られた各テーブルに、序列の低い王族から順次着席をして晩餐会が始まるのだ。


 王家直系の方々のテーブルは、他のテーブルよりも一段高くなっている所に、出席者の方に向く様に設えられており、そこに国王夫妻を中心とし、第一王子から第三王子とその伴侶、婚約者が同席する形になっていた。


 各家の使用人は、会場の壁際に待機。用向きがあれば主人に呼ばれる様になっている。


 ここでもやはり、旦那様が入場され着席する迄、皆様の注目を一身に受けておられたご様子…着座されている方々の一糸乱れぬ様な視線の流れはそれは統率の行き届いた軍隊の様で…


 あの皆様、只今は国王様の演説中でございますが?皆さん見事に視線は旦那様ですね…
 あの容姿に精霊付きの燃える赤い綺麗な瞳ですから、見ていたくなるのは痛いほど良く分かります。分かるのです、分かるのですが…なんでしょうか…このモヤモヤは…


「お疲れさん。君、何方の家の付き人?毎年の事だけど、嫌になるよね、この晩餐会。」

 隣で控えていたシェインよりも長身の柔らかい雰囲気の若者が見かねた様にシェインに声を掛けてきてくれた。
 またもや、顔に出ていただろうか?

「コホン。お疲れ様です。失礼しました。嫌な顔をしていたでしょうか?」

「うん、結構ね。王族付きなんだからもう少し抑えたほうがいいと思うよ?」

 クスクスと笑いを堪えて可笑しそうに話してくれる。

「こればかりは、鍛錬が必要そうですね。」

 何しろ元が精霊だから、感情を押さえて何かする、と言うことがほぼない。気を抜けば仕事中にもこの様に顔に出る…

「精進する事はいい事だよね?自分の査定にも響くし。王族付きになれたのだから、尚更頑張ろうって思えるしね。」

「貴方は、長く働いているのですか?」

「5年位かな?」

「では先輩です。私は少し転々としてまして、今の所で三ヶ所目に成るのです。」

「色んなお屋敷を知るのもいいと思うよ?それだけ君の経験になる訳だし。」

 なる程、前向きな方ですね。嫌な職場でも明るく溶け込んで行けそうな人あたりの良い方。

 
 旦那様が男女問わず皆様の視線を独り占めしているのを今目の当たりにすれば防波堤であったフランカ様の存在が非常に、大変ありがたかった事がよく分かりました。

 この様に他人に心配される様ではダメですね。声をかけてくださった方の様に前向きに行きましょう。

 今度はフランカ様の代わりに私が旦那様の防波堤になります!あの方を誰彼の見世物なんかにしたくはありません!


 和やかに歓談が進む中、人々の羨望の的なる愛すべきレーン様を守る為に更に自分の力を取り戻さなくては、と心に誓うシェインだった。


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