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51 旦那様のお仕事は

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 旦那様に好いてもらえてる自覚ありです。非常に嬉しいことではありますが、執事としては減俸ものだと思います。
 

 精霊である旦那様のお声も聞けず、朝はゆっくり寝かせてもらい、栄養のあるご飯をたっぷりと、午睡を取り、軽食を取り、十分に日向ぼっこをさせて貰って、夜半もよく休む……

 仕事、してませんよね?これ……

 原因は、私が弱っていること。仕事どころかこれでは介護…される側。


 非常に情け無いので、この頃は言われる前に篭りにいくようにしました。旦那様のサポートをしようと思ってもメアリーさんに先回りされてしまうので、仕事と言う仕事がないのです。

 
 よって、今も篭ります……




「シェインは?」

「部屋に寝に行った様ですよ?」

 ガラット王子の執務室。国王の封蝋が押された王城からの招集命令と言う招待状がどっしりとした机の上に封も開けずに置いたままになっている。


「今年もやって来ましたわね。お一人でいかれます?それともフランカ様と?」

「一人で行くには目立つだろう…気が進まぬがフランカか…」

「でしょうね…相変わらず人間の世は生きにくいですわ…」


 ガラット王子はこの国コラルト国の第三王子。コラルト国には一年に一度王族が集まる恒例行事という名の、国家の威信を示す大切な催しがあり、王族の一人に連ねられているガラット王子も勿論参加者の一員となっている。

 国民も王城に集まってくる王族の行列を見物に来たりして、王都はお祭り騒ぎになり、経済的にも良い影響を与えている。

 そして精霊付きのありがたいガラット王子の仕事は、王族の一員としてこの行事に参加する事。精霊の加護が王家にあり、と国民と周辺国に知らしめる事にある。


「煩わしいだけの行事だな………」

「お断りいたしますか?」

「それはならんだろう?役を熟す代わりにここを得ているからな。」

 ガラット王子の住む離宮は人払いをされ、メアリーが一人でほぼ全ての事を受け持って来たが、これもガラット王子の希望の一つ。
 気に入らぬと言って約束を反故にするなどとなっては精霊自体の品位も落とす。そんな事を気にも留めていない精霊の方が多いのだが……
 この人間の生終わるまでは、ここにとどまる約束で、人間に世話にもなる。そのお返しとばかり、毎年この機会だけは必ず出席する様にして来た。


「…シェイン君も共に連れて行きます?」

「ふ、あれは私の執事だからね。共にいても問題あるまい?」

「了解しました。ではその旨をフランカ様と王城へ伝えますわね。」

「そうしてくれ。」

 あれが居れば退屈な王城滞在にも花が咲く。与えられた人間の仕事が初めて楽しいと思えるガラット王子であった。
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