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48 求めていました
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恥ずかしさのあまり、寝具の上でしばしのたうち回れば、急に体が重くなる。
殻の部屋は主に光なく音もそんなに入らないから静かに眠るにはちょうど良い。
体が重くなるのと同時に、もう、起きていられなくなってシェインは静かに目を閉じた。
******
ヒラヒラヒラと舞う蝶が、枝葉の間をすり抜けて行けば、木漏れ日がキラキラと眩しく後を追う。
夢も見ぬ位に深く眠っていたはずなのに?
青々とした木々の葉が、楽しそうにサラサラと優しい声で内緒話。
チョロチョロと身体をくすぐる小さな影は木を駆け上り、地を走り飛んでいく、リスや野ネズミ。
瑞々しい下草は朝露のしっとりとした重みを受けてお辞儀をしている…
……森だ、森にいる……
求めても、求めてももう取り返す事なかった森。あの場に留まれば、再度育て育む事もできたかもしれない森…
けれど、私は選んでしまったから…焦がれて焦がれて止まないあの方を。
だから夢に見るのかな?豊かな森はシェインの傷ついた魂をゆっくりと埋め尽くしてくれるみたいだ。
……ここは、大きい兄弟の森ですね?凄く精気に満ちている。私がどれだけ飢えていたか、良く分かってしまう……
本能を捨てる、それは自分を捨てる事。
森の精だからここが自分の生きる場所とハッキリと分かる。
フワフワと綿毛の様な小さな精がクルクル、クルクル周りを回る。
シェインリーフを誘う様に、からかう様に追いかけっこしながら。
見てるだけで楽しくて、クスクス笑みが溢れてくる。
……少し、眠りなさいシェインリーフ……
暖かい綿毛に包み込まれる様に、フワリと優しく眠りが包んだ…
******
「上手く、行っているようですね?」
シェインが走り去ってから、ガラット王子とメアリーはいつもと変わらぬ様に食事につく。
ガラット王子の手の中の精霊石が、時折小さな光の粒を弾く様に輝いて行く。
愛しそうに、大切にいつもガラット王子はこの石を持つ。
「大森林の精が居るからな、安心して休めよう。」
自分の身体も、心も傷付き癒えていないのに、ここに居ようと踏ん張るシェイン。愛しい者の苦しむ姿も無理強いなどもしたく無いのだ。
大森林の精に協力を仰ぎ、夢を通して森へ誘ってもらった。
一体森の精はどんな夢を見ているのか?内容までは見えないが、楽しそうにクスクス笑う声が聞こえてくる。
「非常に楽しそうで良かったですわ。しばらく彼方にお任せしましょうか?」
「私が我慢できない。あれが居なければここにいる意味なんて無いからな。」
フフ、と不適にガラット王子は笑みを溢す。
「シェイン君、大変ですね……」
自分の事ながらちょっと同情してしまうメアリーだった。
殻の部屋は主に光なく音もそんなに入らないから静かに眠るにはちょうど良い。
体が重くなるのと同時に、もう、起きていられなくなってシェインは静かに目を閉じた。
******
ヒラヒラヒラと舞う蝶が、枝葉の間をすり抜けて行けば、木漏れ日がキラキラと眩しく後を追う。
夢も見ぬ位に深く眠っていたはずなのに?
青々とした木々の葉が、楽しそうにサラサラと優しい声で内緒話。
チョロチョロと身体をくすぐる小さな影は木を駆け上り、地を走り飛んでいく、リスや野ネズミ。
瑞々しい下草は朝露のしっとりとした重みを受けてお辞儀をしている…
……森だ、森にいる……
求めても、求めてももう取り返す事なかった森。あの場に留まれば、再度育て育む事もできたかもしれない森…
けれど、私は選んでしまったから…焦がれて焦がれて止まないあの方を。
だから夢に見るのかな?豊かな森はシェインの傷ついた魂をゆっくりと埋め尽くしてくれるみたいだ。
……ここは、大きい兄弟の森ですね?凄く精気に満ちている。私がどれだけ飢えていたか、良く分かってしまう……
本能を捨てる、それは自分を捨てる事。
森の精だからここが自分の生きる場所とハッキリと分かる。
フワフワと綿毛の様な小さな精がクルクル、クルクル周りを回る。
シェインリーフを誘う様に、からかう様に追いかけっこしながら。
見てるだけで楽しくて、クスクス笑みが溢れてくる。
……少し、眠りなさいシェインリーフ……
暖かい綿毛に包み込まれる様に、フワリと優しく眠りが包んだ…
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「上手く、行っているようですね?」
シェインが走り去ってから、ガラット王子とメアリーはいつもと変わらぬ様に食事につく。
ガラット王子の手の中の精霊石が、時折小さな光の粒を弾く様に輝いて行く。
愛しそうに、大切にいつもガラット王子はこの石を持つ。
「大森林の精が居るからな、安心して休めよう。」
自分の身体も、心も傷付き癒えていないのに、ここに居ようと踏ん張るシェイン。愛しい者の苦しむ姿も無理強いなどもしたく無いのだ。
大森林の精に協力を仰ぎ、夢を通して森へ誘ってもらった。
一体森の精はどんな夢を見ているのか?内容までは見えないが、楽しそうにクスクス笑う声が聞こえてくる。
「非常に楽しそうで良かったですわ。しばらく彼方にお任せしましょうか?」
「私が我慢できない。あれが居なければここにいる意味なんて無いからな。」
フフ、と不適にガラット王子は笑みを溢す。
「シェイン君、大変ですね……」
自分の事ながらちょっと同情してしまうメアリーだった。
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