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36 篭城 2
しおりを挟む………私も好きだよ…………
…………私も好きだよ…………
応えてくれた声が心に木霊する……
彼の方はあそこに居られたのかな?周りを見たけどお姿を見るまでには至らなかった。つい心を閉ざして戻って来てしまったけど、今の私の姿を見られたのだろうか?
精霊の姿をとっていない私に幻滅されただろうか…
あぁ、けれど、お声が聞けた……!せめて夢の中だけででも会えたならと思っていた方のお声………懐かしい、声…
幸せな気分と、見つかってしまった後ろめたさと、どうせなら目の前に現れてはくれないかと淡い期待を持ちながらシェインは夢の中へと落ちて行く……
ピクニックから帰って来たシェインはフラフラと自室へ下がった。今日はもう仕事にならない…
あの方の声を聞いたなら、この姿を脱ぎ捨てて、皆の非難も物ともせずにひたすらに彼の方を探し彷徨ってしまいそうで、一旦落ち着く必要があった。
あの方の声と旦那様の赤く輝いた瞳が脳裏を掠める。人間の愛情表現と触れてくる旦那様、彼の方と同じ瞳で……
この姿を脱いだなら、もう二度とあの瞳は見れないんだろう。
チクンと痛む胸を無視して更に夢の中へと潜って行く…
******
……シェインリーフ、そんなに急いで大きくなる事はない、しっかりと栄養を蓄えて大きくおなり………
かつての私は、早くあの方の隣に立ちたいと、背伸びをし急いで力を蓄えようとしていたっけ…
けれどその度に、ゆっくりでいいからと優しく諭してもくださった。
幼いあの時、共に風に乗り大地を見ながら駆け巡ったら一体どんな気分になれたのだろう…あの方に全てを委ねて………
******
「シェイン……」
コツンとシェインの部屋、殻の扉に額をつけて静かに囁きかけるのはガラット王子。
手には勿論愛しそうにシェインの石を優しく握りしめている。
「シェインリーフ……」
本当の、シェインの名を呼ぶ…城に帰って来てから直ぐに閉じこもってしまったらしいシェインに間をあげずに呼びかけるためだ。
随分と待ったのだ。シェインを探しに探して、人にまでなって…
愛しい者の全てを知るのはこの上もない喜びだが、もうそろそろ本当の名をその口で呼んで欲しい…
永遠に等しい精霊であるから気が長いと思ってもいたが、どうやら忍耐には限界がある様だ。
「シェインリーフ。出ておいで?」
殻には両手と頬を着け、そっと寄り添う形で密着している。直ぐそこに愛する者がいる喜びを、お前は知っているだろうか?
先程の野原でお前に直に思いを伝えた事で、如何やら歯止めが効かなくなりそうだよ?
愛しそうに、手に持つ石に口づけを落として、ガラット王子は優しく石を押した…
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