［完結］ひきこもり執事のオンオフスイッチ！あ、今それ押さないでくださいね！

12 ちょっと困ってます

　
　柔らかくて温かい唇がそっと触れて、そっと離れていった。

　人がしているのを偶然見てしまった事はあっても、今まで自分はしてみた事なくて…


　思うよりも、柔らかくて、くすぐったくて、温かくてびっくりしてしまった…
　
　旦那様は本当に嬉しそうで、柔らかく微笑んでは口付けてくるものだから、心の傷の癒し方とやらは間違いではなさそうだ、と胸を撫で下ろす。


「シェイン……」

　何度か目の口付けで、そっと囁く様な呼びかけに何故か心が騒ついてしまう。


　旦那様？貴方は私がした事で心が傷ついているのですよね？なんでそんなに大切そうに私の名を呼ぶのです？

　あの方が、そっと名前を呼んでくださる時にとても響きが似ていて……
　


　嫌でも思い出してしまう…暁のあの方を……



「シェイン……私に集中してね…？」

　集中と言っても、自由を奪われ、話す事も出来ずに口付けられては、嫌でもそちらに意識が行きます！


「ふぅ…ん…」

　深く、舌を絡めとられて、体の底に見知った感覚を感じる…

　がっちりと抱え込んだ手の中にはシェインの石が握られてゆっくり揉み込まれている。


　また！ムニムニと！側にいるのに如何して揉むのです！


　抗議の声も封じられ、ただ注がれている感覚に今は耐えるしかない。




「如何して、石を揉むんです？」

　やっと解放されてフゥと息を整えれば、旦那様はニコニコ笑顔。ご機嫌よろしい様で…
　

「君を可愛がりたいと思ってね？」

「私なんかをですか？」

「心の糧と言ったよね？人間の愛情表現の一つだよ？」

「触る、ことがですか？」

　いつもの様にサワサワと体のあちこちを触りながらもしっかりとシェインの体は離さない。

「言葉で話す事も、触れる事も…」


「旦那様愛情に飢えておられるのですか？」

　この屋敷には使用人のメアリーさんと私しか居ないし、寂しいのも分かるんだけど。


「そうだね。ある愛情にはとてつも無く飢えてはいるね…」

「伴侶の方をお迎えしたらよろしいのに…」

「……君が思う伴侶では満足できないんだよ、困ったことに……」


　？？？


　どういう意味かよく分からない。如何して伴侶では満足できないのだろう？人間は愛情を分け合って生きていくものでしょう？

　困った旦那様はいつもに増して楽しそうに、石を弄り、私の体を撫でている。


　触れ合いたいという思いなら分かる。私もあの方に、おこがましいけれど許されるなら触れてみたいと思った事はあるのだ…今も尚、心はあの方を求めていて早く帰りたいとさえ思う。


　けれど、困ったことに、なぜか旦那様のこの行為を嫌だと思えない自分がいて、その事に今一番驚いている…