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「狂いの塔には背負い込んだ苦悩のゆえに気が触れた皇族達が投げ込まれるのだ。」
表情一つ変えずにオロンガル皇帝はそう告げる。多くの皇族の苦悩や痛みを背負い続けた精神はやがて病み、壊れて行く…
ラウードが物心ついた時にはラウードの母はたび重なる皇族達からの召し出しで苦悩を取り続けた結果、心は壊れて夢か現か定かでは無い状態であった。
"それが、定め……"
ラウードはそう自分自身の事を幼い時から理解していたが、時折目の焦点が合う母親はその度にこう言ったのだ。
「お前の代で、この帝国を終わらせて欲しい…出来れば、スキル持ちを解放して…」
と………
狂ってる……!こいつら、狂ってる…!!
産まれた時から定められた運命に、従順に我が子までも差し出して従うしかなかったラウードの母の無念はどれほどだろう…そんな母を物心付く前から、いや産まれた時からまたラウードも見せられて来たのだ。
有都の中では言いようの無い怒りが渦巻いている。愛する家族であるべきなのに、血を分けた兄弟であるのに、一方は蔑み踏みつけ、一方はそれを良しとする…
こんなの、あってたまるか!!
ラウードは有都がここに来てからの有都の支えとなってくれた最早恩人以上の存在で…虚しい人生を送るかもしれなかった有都の中に愛したり、愛されたりする事の素晴らしさも教えてくれた。苦しめられて、苦しめられて、ゴミの様に捨てられて良いはずがない…!
「ヨピール…スキル持ちを解放しろ…そうすれば、これ以上反抗はしないし、おとなしく帝国のものともなろう。」
ラウードの母の生涯で願った数少ない望み……
「フフフ…フフフフ!何を!馬鹿げた事を!兄上だとて知っているのだろう?我らの皇室の苦悩を!?国々をまとめあげ、一つの国家とし、民に平和をくれてやるまでは、此奴らの力とて必要不可欠!それが成されれば喜んで!兄上だとて共に泣いて下さっていたではないか?」
「………お前が、力の無い町の人々を焼き捨てた時か…?お前が見せしめのために罪の無いスキル持ちの子供達を吊るした時か……?それとも、皇族の男児を皆殺しにした時か!?」
「左様ですとも…その傷が未だに夜な夜な痛むのだ!兄上もよぉくご存知でしょう?」
「ヨピール……為政者ともなればその重圧に押し潰される事もあろうと思えばこそ……!?」
「そうでしょうとも?それこそ我が帝国のスキル持ち!あぁ!兄上には拘束はかけぬ。映えある第一皇子が帰還するのだからな!見苦しい姿を晒すことはできますまい。そして此処に!光のスキル持ちを用意しましたので、セレモニーの如くに帰還は賑々しく執り行いましょうぞ?」
「いい…加減に、しろ!!」
ラウードは好きにしろと言った!!
「アリトよ。拘束されてても威勢がいいな?」
上機嫌なのだろうか?椅子の上から見下ろすオロンガル皇帝はニヤニヤと鼻に付く笑みを浮かべている。
「うるさい!ラウードは物じゃない!スキル持ちだって物じゃないし、奴隷でもない!!」
「フン!いくらお前が吠えた所で帝国の根幹は変わらん。要らぬ我を張らずに素直になれば良いものを…」
「素直になってるから言ってるんだ!ラウードはお前達に従う必要なんてない!」
「そうかな…?」
ニヤリ、オロンガル皇帝の顔が歪む。
「兄上は知っているのだ。我が皇室の苦悩をな…?それ故、離れられんのだ。」
「……!?」
反旗をひるがしているラウードに対し、オロンガル皇帝は焦りも見せない。
「残念だが……ヨピール…お前達の苦しみを知ってはいても…それでも、お前達はやり過ぎたのだ…」
「ククク…ククククク……兄上…全てを無にされるつもりか?帝国の安寧こそ人々の幸福と、皇室の為に身を挺して来た人々の犠牲を無碍になさるか?出来ぬだろう?血反吐を吐く思いを舐め尽くした先人達をその足で踏みつけるおつもりか?」
ギリッ……有都の隣から、苦しそうな歯軋りが聞こえてくる。ラウードは剣の構えを崩さないままオロンガル皇帝と対峙し、その首を取る勢いの気迫を込めている。がその反面、ラウードの中にある己の苦悩の記憶とも戦って、震える拳を握りしめながら耐えているのだ。
「………ラウード……」
有都はずっと、ここに来てからラウードの苦しみを見て来た。大柄な屈強と思える騎士が蹲って、声を殺して必死に耐えている姿を…そんな情けない姿誰にも見せまいとして…夜中にひっそりと…
思いつきで消すだけじゃ…全然ダメだった…
もっと、もっと深い所でラウードは苦しんでて今まで一人で耐えて、これからも……?
「……消すって…約束したんだ……」
それができる、スキルがある……
表情一つ変えずにオロンガル皇帝はそう告げる。多くの皇族の苦悩や痛みを背負い続けた精神はやがて病み、壊れて行く…
ラウードが物心ついた時にはラウードの母はたび重なる皇族達からの召し出しで苦悩を取り続けた結果、心は壊れて夢か現か定かでは無い状態であった。
"それが、定め……"
ラウードはそう自分自身の事を幼い時から理解していたが、時折目の焦点が合う母親はその度にこう言ったのだ。
「お前の代で、この帝国を終わらせて欲しい…出来れば、スキル持ちを解放して…」
と………
狂ってる……!こいつら、狂ってる…!!
産まれた時から定められた運命に、従順に我が子までも差し出して従うしかなかったラウードの母の無念はどれほどだろう…そんな母を物心付く前から、いや産まれた時からまたラウードも見せられて来たのだ。
有都の中では言いようの無い怒りが渦巻いている。愛する家族であるべきなのに、血を分けた兄弟であるのに、一方は蔑み踏みつけ、一方はそれを良しとする…
こんなの、あってたまるか!!
ラウードは有都がここに来てからの有都の支えとなってくれた最早恩人以上の存在で…虚しい人生を送るかもしれなかった有都の中に愛したり、愛されたりする事の素晴らしさも教えてくれた。苦しめられて、苦しめられて、ゴミの様に捨てられて良いはずがない…!
「ヨピール…スキル持ちを解放しろ…そうすれば、これ以上反抗はしないし、おとなしく帝国のものともなろう。」
ラウードの母の生涯で願った数少ない望み……
「フフフ…フフフフ!何を!馬鹿げた事を!兄上だとて知っているのだろう?我らの皇室の苦悩を!?国々をまとめあげ、一つの国家とし、民に平和をくれてやるまでは、此奴らの力とて必要不可欠!それが成されれば喜んで!兄上だとて共に泣いて下さっていたではないか?」
「………お前が、力の無い町の人々を焼き捨てた時か…?お前が見せしめのために罪の無いスキル持ちの子供達を吊るした時か……?それとも、皇族の男児を皆殺しにした時か!?」
「左様ですとも…その傷が未だに夜な夜な痛むのだ!兄上もよぉくご存知でしょう?」
「ヨピール……為政者ともなればその重圧に押し潰される事もあろうと思えばこそ……!?」
「そうでしょうとも?それこそ我が帝国のスキル持ち!あぁ!兄上には拘束はかけぬ。映えある第一皇子が帰還するのだからな!見苦しい姿を晒すことはできますまい。そして此処に!光のスキル持ちを用意しましたので、セレモニーの如くに帰還は賑々しく執り行いましょうぞ?」
「いい…加減に、しろ!!」
ラウードは好きにしろと言った!!
「アリトよ。拘束されてても威勢がいいな?」
上機嫌なのだろうか?椅子の上から見下ろすオロンガル皇帝はニヤニヤと鼻に付く笑みを浮かべている。
「うるさい!ラウードは物じゃない!スキル持ちだって物じゃないし、奴隷でもない!!」
「フン!いくらお前が吠えた所で帝国の根幹は変わらん。要らぬ我を張らずに素直になれば良いものを…」
「素直になってるから言ってるんだ!ラウードはお前達に従う必要なんてない!」
「そうかな…?」
ニヤリ、オロンガル皇帝の顔が歪む。
「兄上は知っているのだ。我が皇室の苦悩をな…?それ故、離れられんのだ。」
「……!?」
反旗をひるがしているラウードに対し、オロンガル皇帝は焦りも見せない。
「残念だが……ヨピール…お前達の苦しみを知ってはいても…それでも、お前達はやり過ぎたのだ…」
「ククク…ククククク……兄上…全てを無にされるつもりか?帝国の安寧こそ人々の幸福と、皇室の為に身を挺して来た人々の犠牲を無碍になさるか?出来ぬだろう?血反吐を吐く思いを舐め尽くした先人達をその足で踏みつけるおつもりか?」
ギリッ……有都の隣から、苦しそうな歯軋りが聞こえてくる。ラウードは剣の構えを崩さないままオロンガル皇帝と対峙し、その首を取る勢いの気迫を込めている。がその反面、ラウードの中にある己の苦悩の記憶とも戦って、震える拳を握りしめながら耐えているのだ。
「………ラウード……」
有都はずっと、ここに来てからラウードの苦しみを見て来た。大柄な屈強と思える騎士が蹲って、声を殺して必死に耐えている姿を…そんな情けない姿誰にも見せまいとして…夜中にひっそりと…
思いつきで消すだけじゃ…全然ダメだった…
もっと、もっと深い所でラウードは苦しんでて今まで一人で耐えて、これからも……?
「……消すって…約束したんだ……」
それができる、スキルがある……
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