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「何…?」
何が、悪い事じゃ無いって?これが……
逃げようとしない有都にラウードはキスを続けてくる。身体に回された手は背中や腰を怪しく伝って来てて………
「ふぅ……」
息継ぎの時に声が漏れるのが恥ずかしい。唇に与えられる刺激が甘く痺れて背筋を伝ってゾクゾクする……
男なのに…こんなの…恥ず……
息が上がってきている有都の顔は真っ赤だ。
「アリー…キスは気持ちがいいだろう?これは自分の連れに愛情を表す行為でもある。だから、汚らしい行為でも、ましてアリーが汚れているのでも無い。」
「んぅ……っん…」
「分かった?アリー……?」
「わ……かった、から…もぅ…止め…」
「立ってられないか?」
グッタリした有都に比べ、クスクスと楽しそうに笑っているラウードは余裕綽々だ。
くっそ……!何で、いい様にされて……
顔が熱くて、熱くて目の前がぼうっとする。
「今の感覚を覚えておくんだ、アリー。今の君は心から嫌がっている様にはとてもじゃ無いけど見えないよ?いつか、好きな人ができたら嫌悪なくその人と触れ合える様に…」
情けない事に、その場にヘタリと座り込んでしまった有都は下から恨めしそうにじっとラウードを見つめる。
「もしかしてだけど、ラウード……人の記憶も、視れる?」
随分と的確なのだ。有都が何に嫌悪してて、自分をどう見ているのか……人になんて絶対に話すことができない様な事までラウードは知っている様な気がする。
「………苦悩、を引き受ける時には、引き金になっている記憶や痛みも引き受ける………」
やっぱり…………ラウードは何歳?今まで生きてきた中で引き受けてきたもの、全部?
「全部?……今までの全部…!?」
「そうだな………」
「そんなスキル!ラウードにとっていい事一つもないじゃないか!」
ラウードは好きで自分からスキルを行使している。だから有都がそう思っていたとしても有都には関係ない事なのだ。でも、ラウードは関係ない有都の苦悩も引き受ける。本人が寝ていて助けてもらっている事を知らなくても。
「それが、俺の定めだろう。」
キスなんかしたからか、少しだけだラウードが砕けた物言いだ。
「そんなの、嬉しくないよ?ラウードの事を好きな人なら誰でも絶対に嬉しく無い!サクも、オリバーも俺も嬉しくない!ラウードの家族だって!絶対に悲しむ……」
「ほら、アリーは優しい。俺の家族の事は知らないだろうに…そこまで心配してくれるなんてな…」
「消失!」
「アリー?」
いきなり有都は自分のスキルを口にする。
「!?……何で……消失!!」
「アリーどうした?」
「消失ったら、消失!!」
「アリー!」
無我夢中で自分にスキルを使おうとしている有都をラウードは止める。
「自分に使おうとしてるのか?」
「そう!それだったらラウードはスキルを使わなくてもいいだろ!?」
「………自分には、効果はないんだな?」
取り乱した様に何度も何度もスキルを叫び続ける有都を見れば自分に対しての効果がないことがわかるだろう。
「何で………」
今までも、人に対して作用してきたものだった。有都が自分に使うのは今日が初めてだ。
「人によって、スキルの特性はみんな違う。別に、アリーが自分に使えなくてもおかしい事じゃない。」
有都はまたラウードに抱きしめられてしまった。
「だって、俺が消せればもうラウードはスキルを使わなくて良いんだろ?あんた、どうせみんながやめろって言ったって止めないだろうし…!」
ラウードに抱きしめられている有都は涙目だ。
だって、スキルを使ったのがずっと昔からだったら、その記憶も、辛さも、まだラウードの中にあって…これからも、苦しむ事になるんだろ?そんなの、良いはずないじゃないか…!
「優しくて、お人好しだな…アリーは…」
「お人好しって…!ラウードの事を言うんだろ!」
「ふふふふ…違う。アリーの事を言うんだ。」
「違うって!絶対にラウードの事だ!さっきだって気が付かない様に使ってたんだろ?」
さっき……ラウードが有都にキスをした時…その感触や、体温の熱は嫌でも過去を思い出す。有都にとっては性的な接触はトラウマ級の思い出になっている節がある。その不快感が全く無かった。
「おや?バレたか?」
「ほら!何も言わずにそう言う事をするのがお人好しなんじゃないのかよ?」
だったら、こっちにだって考えがある…!
「……俺が取る…!ラウードの苦痛全部消す…!」
人と関わるのが嫌だった…怖かったし、気持ちが悪かった…良い思い出なんて何にもない。けど……多分ラウードは、書き換えようとしてるんだ…やり方はどうかと思うけど、悪いものじゃなくて、良い思い出に……
だったら………
何が、悪い事じゃ無いって?これが……
逃げようとしない有都にラウードはキスを続けてくる。身体に回された手は背中や腰を怪しく伝って来てて………
「ふぅ……」
息継ぎの時に声が漏れるのが恥ずかしい。唇に与えられる刺激が甘く痺れて背筋を伝ってゾクゾクする……
男なのに…こんなの…恥ず……
息が上がってきている有都の顔は真っ赤だ。
「アリー…キスは気持ちがいいだろう?これは自分の連れに愛情を表す行為でもある。だから、汚らしい行為でも、ましてアリーが汚れているのでも無い。」
「んぅ……っん…」
「分かった?アリー……?」
「わ……かった、から…もぅ…止め…」
「立ってられないか?」
グッタリした有都に比べ、クスクスと楽しそうに笑っているラウードは余裕綽々だ。
くっそ……!何で、いい様にされて……
顔が熱くて、熱くて目の前がぼうっとする。
「今の感覚を覚えておくんだ、アリー。今の君は心から嫌がっている様にはとてもじゃ無いけど見えないよ?いつか、好きな人ができたら嫌悪なくその人と触れ合える様に…」
情けない事に、その場にヘタリと座り込んでしまった有都は下から恨めしそうにじっとラウードを見つめる。
「もしかしてだけど、ラウード……人の記憶も、視れる?」
随分と的確なのだ。有都が何に嫌悪してて、自分をどう見ているのか……人になんて絶対に話すことができない様な事までラウードは知っている様な気がする。
「………苦悩、を引き受ける時には、引き金になっている記憶や痛みも引き受ける………」
やっぱり…………ラウードは何歳?今まで生きてきた中で引き受けてきたもの、全部?
「全部?……今までの全部…!?」
「そうだな………」
「そんなスキル!ラウードにとっていい事一つもないじゃないか!」
ラウードは好きで自分からスキルを行使している。だから有都がそう思っていたとしても有都には関係ない事なのだ。でも、ラウードは関係ない有都の苦悩も引き受ける。本人が寝ていて助けてもらっている事を知らなくても。
「それが、俺の定めだろう。」
キスなんかしたからか、少しだけだラウードが砕けた物言いだ。
「そんなの、嬉しくないよ?ラウードの事を好きな人なら誰でも絶対に嬉しく無い!サクも、オリバーも俺も嬉しくない!ラウードの家族だって!絶対に悲しむ……」
「ほら、アリーは優しい。俺の家族の事は知らないだろうに…そこまで心配してくれるなんてな…」
「消失!」
「アリー?」
いきなり有都は自分のスキルを口にする。
「!?……何で……消失!!」
「アリーどうした?」
「消失ったら、消失!!」
「アリー!」
無我夢中で自分にスキルを使おうとしている有都をラウードは止める。
「自分に使おうとしてるのか?」
「そう!それだったらラウードはスキルを使わなくてもいいだろ!?」
「………自分には、効果はないんだな?」
取り乱した様に何度も何度もスキルを叫び続ける有都を見れば自分に対しての効果がないことがわかるだろう。
「何で………」
今までも、人に対して作用してきたものだった。有都が自分に使うのは今日が初めてだ。
「人によって、スキルの特性はみんな違う。別に、アリーが自分に使えなくてもおかしい事じゃない。」
有都はまたラウードに抱きしめられてしまった。
「だって、俺が消せればもうラウードはスキルを使わなくて良いんだろ?あんた、どうせみんながやめろって言ったって止めないだろうし…!」
ラウードに抱きしめられている有都は涙目だ。
だって、スキルを使ったのがずっと昔からだったら、その記憶も、辛さも、まだラウードの中にあって…これからも、苦しむ事になるんだろ?そんなの、良いはずないじゃないか…!
「優しくて、お人好しだな…アリーは…」
「お人好しって…!ラウードの事を言うんだろ!」
「ふふふふ…違う。アリーの事を言うんだ。」
「違うって!絶対にラウードの事だ!さっきだって気が付かない様に使ってたんだろ?」
さっき……ラウードが有都にキスをした時…その感触や、体温の熱は嫌でも過去を思い出す。有都にとっては性的な接触はトラウマ級の思い出になっている節がある。その不快感が全く無かった。
「おや?バレたか?」
「ほら!何も言わずにそう言う事をするのがお人好しなんじゃないのかよ?」
だったら、こっちにだって考えがある…!
「……俺が取る…!ラウードの苦痛全部消す…!」
人と関わるのが嫌だった…怖かったし、気持ちが悪かった…良い思い出なんて何にもない。けど……多分ラウードは、書き換えようとしてるんだ…やり方はどうかと思うけど、悪いものじゃなくて、良い思い出に……
だったら………
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