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ガサ!!ガササササ!ガサササ!!
突然に聞こえてきた葉擦れの音に、全身がビクッとなった。
「オリバー!!!」
「オ、オリバー?」
サクがオリバーを見つけた様だが、葉擦れの音はどう聞いても一人の物じゃない。
「ダメだ!サク来ないで!!」
大の大人数人に追いかけられながらも身体の小さなオリバーは負けず劣らず、右へ左へと体を振って何とか振り切ろうとしているのだ。
「オリバーどうしたの?ラウードは?ラウード、やられたの!?」
まさか、と言うサクの表情。
「違う!サク逃げて!あっちの兵士はお取りだったんだ!何箇所にも分散してる!逃げてーー!」
「オリバー!」
逃げろと言うオリバーに、見捨てられないサクが大木の影から飛び出していく。
「な!?」
こんな事、現実には起こらなかった…!どうやって対処したらいいかなんて有都にはわかるはずもない。
もうスピードで走って来るオリバーに向かって、サクも真っ向から突っ込んでいく。向かう先は帝国の兵士だろう。甲冑を着た兵士たちがチラチラと見えた。
「サクッ!!だめーーー!!」
「どいて!オリバー!」
「くぅっ!」
ばっと傍に飛び退いたオリバーの後ろから追いかけてきた兵士に向かってサクが手を上げる。
「鑑定!!!」
サクの手が兵士の額近くに伸びた時、サクは自分のスキルを叫ぶ。
「ぐぅ……」
何と、兵士はそのままバタンと倒れてしまったのだ。
「オリバー、早く逃げて!」
「サクも一緒!!」
ガササササササササ!!!
避けたオリバーがサクの方へと走り寄って来る。
「このチビ!!!」
「ギャン!!!」
草むらに足を取られて転びそうになっていた兵士の一人が、思い切り振り下ろした剣の間合いに運悪くオリバーが入ってしまった。兵士はそのまま草むらへと勢いよく転倒して行った。
「オリバーーー!!!」
サクの絶叫の中、足音がもっと増えていって………
「サ、サクちゃん!こっち!!」
居ても立ってもいられずに、有都も手軽に掴んだ木の棒を持って走り出す。
サクは斬られたであろうオリバーを両腕に抱えて、次に来た兵士から身を翻していた所だった。
「サクちゃん!!」
有都は持っていた木の棒を兵士に向かって思い切り投げつけた。これでも高校生男子だ。女子や子供の攻撃よりもまともに当たれば痛いだろう。
「アリー!!逃げて!」
「サクちゃん!こっち!こっちにオリバー渡して!!」
女子のサクよりも有都のほうが力がある。小さな子供一人抱えて走るのだって有都のほうが有利に決まっているからだ。
サクからオリバーを受け取った有都は、全身の血の気が引く思いをする。オリバーの身体から流れ出て来る温かいものは……………
「アリー!!早く!!こっちへ!!!」
サクに促されるまま、グッタリとしたオリバーを抱えて、走る。何も考えずに、考えられずに…ただ、ひた走った…
「小娘!!」
ザッと音がして…藪の中から、兵士が…
「サク……!」
先に走るサクに兵士が襲い掛かって、スローモーションの様にサクが倒れて行こうとしたところで、襲い掛かっていた兵士が横に飛ばされて行った…
「!?」
何が起こったか分からなくて、全速力で走っていた有都は、倒れ込んだサクの上にオリバーと一緒に、サクを守る様に倒れ込んだ。
「サク!…サクちゃん!」
「う…いった…」
良かった…意識はある…
「さっきのは?兵士を飛ばしたの、サクちゃん?」
大人の男一人をほぼ真横に吹っ飛ばして行ったのだから、物凄い力技だろうと思うのだが…
「違う…ラウード、間に合った…」
「ラウー…」
ダァン!!!
有都が名前を言い終わる前に、物凄い音が後ろから聞こえて来た。第二波、第三波と続け様に何をしているのかと言うほどに大きな音。
「…オリバー?アリー、オリバーは?」
サクの上に倒れ込んでいるから、オリバーはサクの足元に有都と一緒に倒れている。サクはもう兵士の事を気にもしていない様子だ。
「そうだ、オリバー!」
サクも有都もオリバーに近付いて状態を確認した。
グッタリとして動かないオリバー。かろうじて浅く速く胸は動いていて呼吸はしている。けれど、オリバーを抱いていた有都の両手はオリバーの血でベッタリと濡れてしまっているのだ。
こんなに、出血…して……
オリバーは背後から肩から背中にかけて斬られていた様で、傷口が大きく、抑え様にも血が止まらない…
「ど…どうしよう……?どうしよう?オリバー…?オリバ………」
気丈なサクは取り乱し、必死にオリバーの傷口を手で抑えているが、血は止まらない…
有都だってただの高校生だ。ちょっとした応急処置なら出来るかもしれないが、本格的な医療が必要な大怪我に対しての知識なんて無い。
「オリバー…!オリバー!しっかり!しっかりしろよ!」
サクと一緒になってただ傷口を抑える。
「誰か…!オリバーを助けて…まだ、こんなに小さいのに…!」
有都の手に触れる柔らかいオリバーの肌。子供特有のモチモチの肌が何の反応も示さない…
やだ、嫌だ!嘘だろ?こんな小さい子が?何で!何で、こんな事に………
「うぅぅ…アリー…助けてぇ……ラウード、助け…てぇぇぇ……」
サクはもう錯乱状態だ、誰彼構わず藁をも掴む心境で泣きながら助けを求めている。
「血、止まれよ!こんな傷、無くなっちまえばいいのに!!」
有都もただ、願うしかできなかった。
突然に聞こえてきた葉擦れの音に、全身がビクッとなった。
「オリバー!!!」
「オ、オリバー?」
サクがオリバーを見つけた様だが、葉擦れの音はどう聞いても一人の物じゃない。
「ダメだ!サク来ないで!!」
大の大人数人に追いかけられながらも身体の小さなオリバーは負けず劣らず、右へ左へと体を振って何とか振り切ろうとしているのだ。
「オリバーどうしたの?ラウードは?ラウード、やられたの!?」
まさか、と言うサクの表情。
「違う!サク逃げて!あっちの兵士はお取りだったんだ!何箇所にも分散してる!逃げてーー!」
「オリバー!」
逃げろと言うオリバーに、見捨てられないサクが大木の影から飛び出していく。
「な!?」
こんな事、現実には起こらなかった…!どうやって対処したらいいかなんて有都にはわかるはずもない。
もうスピードで走って来るオリバーに向かって、サクも真っ向から突っ込んでいく。向かう先は帝国の兵士だろう。甲冑を着た兵士たちがチラチラと見えた。
「サクッ!!だめーーー!!」
「どいて!オリバー!」
「くぅっ!」
ばっと傍に飛び退いたオリバーの後ろから追いかけてきた兵士に向かってサクが手を上げる。
「鑑定!!!」
サクの手が兵士の額近くに伸びた時、サクは自分のスキルを叫ぶ。
「ぐぅ……」
何と、兵士はそのままバタンと倒れてしまったのだ。
「オリバー、早く逃げて!」
「サクも一緒!!」
ガササササササササ!!!
避けたオリバーがサクの方へと走り寄って来る。
「このチビ!!!」
「ギャン!!!」
草むらに足を取られて転びそうになっていた兵士の一人が、思い切り振り下ろした剣の間合いに運悪くオリバーが入ってしまった。兵士はそのまま草むらへと勢いよく転倒して行った。
「オリバーーー!!!」
サクの絶叫の中、足音がもっと増えていって………
「サ、サクちゃん!こっち!!」
居ても立ってもいられずに、有都も手軽に掴んだ木の棒を持って走り出す。
サクは斬られたであろうオリバーを両腕に抱えて、次に来た兵士から身を翻していた所だった。
「サクちゃん!!」
有都は持っていた木の棒を兵士に向かって思い切り投げつけた。これでも高校生男子だ。女子や子供の攻撃よりもまともに当たれば痛いだろう。
「アリー!!逃げて!」
「サクちゃん!こっち!こっちにオリバー渡して!!」
女子のサクよりも有都のほうが力がある。小さな子供一人抱えて走るのだって有都のほうが有利に決まっているからだ。
サクからオリバーを受け取った有都は、全身の血の気が引く思いをする。オリバーの身体から流れ出て来る温かいものは……………
「アリー!!早く!!こっちへ!!!」
サクに促されるまま、グッタリとしたオリバーを抱えて、走る。何も考えずに、考えられずに…ただ、ひた走った…
「小娘!!」
ザッと音がして…藪の中から、兵士が…
「サク……!」
先に走るサクに兵士が襲い掛かって、スローモーションの様にサクが倒れて行こうとしたところで、襲い掛かっていた兵士が横に飛ばされて行った…
「!?」
何が起こったか分からなくて、全速力で走っていた有都は、倒れ込んだサクの上にオリバーと一緒に、サクを守る様に倒れ込んだ。
「サク!…サクちゃん!」
「う…いった…」
良かった…意識はある…
「さっきのは?兵士を飛ばしたの、サクちゃん?」
大人の男一人をほぼ真横に吹っ飛ばして行ったのだから、物凄い力技だろうと思うのだが…
「違う…ラウード、間に合った…」
「ラウー…」
ダァン!!!
有都が名前を言い終わる前に、物凄い音が後ろから聞こえて来た。第二波、第三波と続け様に何をしているのかと言うほどに大きな音。
「…オリバー?アリー、オリバーは?」
サクの上に倒れ込んでいるから、オリバーはサクの足元に有都と一緒に倒れている。サクはもう兵士の事を気にもしていない様子だ。
「そうだ、オリバー!」
サクも有都もオリバーに近付いて状態を確認した。
グッタリとして動かないオリバー。かろうじて浅く速く胸は動いていて呼吸はしている。けれど、オリバーを抱いていた有都の両手はオリバーの血でベッタリと濡れてしまっているのだ。
こんなに、出血…して……
オリバーは背後から肩から背中にかけて斬られていた様で、傷口が大きく、抑え様にも血が止まらない…
「ど…どうしよう……?どうしよう?オリバー…?オリバ………」
気丈なサクは取り乱し、必死にオリバーの傷口を手で抑えているが、血は止まらない…
有都だってただの高校生だ。ちょっとした応急処置なら出来るかもしれないが、本格的な医療が必要な大怪我に対しての知識なんて無い。
「オリバー…!オリバー!しっかり!しっかりしろよ!」
サクと一緒になってただ傷口を抑える。
「誰か…!オリバーを助けて…まだ、こんなに小さいのに…!」
有都の手に触れる柔らかいオリバーの肌。子供特有のモチモチの肌が何の反応も示さない…
やだ、嫌だ!嘘だろ?こんな小さい子が?何で!何で、こんな事に………
「うぅぅ…アリー…助けてぇ……ラウード、助け…てぇぇぇ……」
サクはもう錯乱状態だ、誰彼構わず藁をも掴む心境で泣きながら助けを求めている。
「血、止まれよ!こんな傷、無くなっちまえばいいのに!!」
有都もただ、願うしかできなかった。
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