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ウトウトと、暖かい眠りの中は気持ちがいい。フッと意識が浮上した所は、暖かいベッドの中で、スッポリと自分よりも暖かい何かに包まれているのを有都は感じた。
ん…暑い…………
暖かいを通り越して、少し暑い……モゾモゾと掛け布団から足を出して、手を出して、少しでも涼もうと………
「アリー……ダメだよ…風邪を引く……」
自分より大きな腕でまた、スッポリと掛け布団の中に戻されてしまった………
この声……!?
「ラウード…さん?」
今、有都をスッポリと包んでしまっているのはラウード本人だ。一番最初にここで気がついた時の様に有都はラウードの腕に抱かれて寝ていた事になる。
あのまま…寝ちゃったのか…?
川のほとりにいたのを覚えているし、そこでラウードに抱きついて泣き出したのも覚えている。で、そのまま眠った、と………
「あ、あの…ラウードさん…?」
気恥ずかしいものだが、このままのほうがもっと気まずい。せめて、もう目は覚めたからベッドから出させてもらいたい。
「………ん……?」
低い寝起きの掠れた声は、大人の色気というものか、まだ若い有都とは違うものがある。
「ベッドまで、運んでくれたんですか?すみません…色々ご迷惑をおかけして…良く、眠れましたか…?」
頭が冴えれば、昨夜のラウードの苦しみようがはっきりと思い出される。あの後、悪夢も見ずにちゃんと眠れたかどうか心配になった。
「ふふふ……やはり、有都はいい子だ…優しいね?君にそんなに悲しそうな顔は似合わないんじゃないかな?」
寝起きだと言うのに、ラウードの整った顔はやはり整っていた。間近で見てる方の心臓に良くない気がする。同性からしてもこうだもの、ラウードは絶対にモテる…!そんな仕方のない事を考えているうちに、有都はラウードの腕に包まれ直されて未だ布団の中だ。ラウードの寝息が首筋に掛かるくらいにギュウッと抱きしめられたまま……
寝れるはずない…………………
寝具が一つだけだって言うのはわかる。けど、こんなにくっついて眠らなくてもいいんじゃないか…?
「やっぱり………ラウード!!!」
突然ドアが開いたかと思ったら、そこにはサクが立っていて、この状況に顔色一つ変えずにラウードを起こしにかかった……
「あ、あの、サクちゃん?あの、これは、ラウードさんが、離してくれなくて!」
自分の力ではどうにもならないラウードの腕を振り解こうと、サクへの誤解を弁明しつつ渾身の力を出しているつもりでも、有都はラウードの腕を解けない………
「あ、大丈夫よアリー。良く解っているから。力を使った後って人肌が恋しくなるんですって。だから、アリーが悪いんじゃないの。さ!ラウード、起きて!!オリバーが、外の様子がおかしいって言ってるの。」
ガバッと、一気に寝台の布団が飛んだ……?
サクのその一言で、ラウードの目は覚めたらしい。流石騎士とでもいうのか既にラウードの表情は臨戦体制で、腕には剣を持っていた。
「どこだ?」
「南の泉の方よ。」
「昨日は何も無かったが…?」
「兵士が居るって。」
兵士……?帝国の兵士?
ざっと有都の顔から血の気が引く。昨日の皆殺しの話から見つかったら自分達も同じ運命に合うのでは……
「アリー………」
余り、表情の変わらないサクの表情が歪んでる。
「大丈夫だよ…アリー。オリバーは鼻が聞くんだ。それに私は強い。ここでサクと待っていて…」
コクコク…と、子供の様にうなづくことしか有都にはできなかった。
「アリーこっち!」
サクに案内されて、小屋から離れた大木の幹に二人で隠れる。手には持てるだけの荷物を持って………
「見つかったら、どうなるの?」
「私は殺されるかも…」
「え…………」
「アリーは初めて帝国側に連れて行かれるから、まだ生き残れる可能性があるわ。私は、顔が知れてるから……」
心なしか、サクの表情も強張っている。
「オ、オリバーは?オリバーは何処?」
「落ち着いてアリー。大きな声を出しちゃダメ!向こうもスキル持ちを使ってると思うから見つかっちゃうわ。」
サクにそう言われて、有都はグッと言葉を飲み込んだ。
どれくらいラウードは強くて、どれくらいオリバーの鼻は効くのか……
早く…早く、帰ってきて………
必死に願う時間が永遠にも思える。
「ね、アリーはスキル使えないの?」
「スキルって……俺の?」
「そう…分かってないかも知れないけど、アリーのスキル、消失でしょ?」
「消失……?」
「あ、やっぱり分かってなかったのね?」
「なんで分かるの?」
「私のスキル、スキル鑑定よ?その人の持っているスキルを見る事ができるのよ。」
「消失って…何を、消せるの?」
「それは…アリーにしか分からないと思う…私はスキル鑑定だけなの。」
「そんな……」
今まで使えたのは、相手から自分の存在を消すことだけだ。もし、ここに帝国の兵士が来たら?相手から自分を消せばいい?でも、一人でなんて来るか?何人も連れ立って来るんじゃないのか?そもそも、大人しく瞳を見てるだけなんて無いと思う…
「どうしたら………」
ん…暑い…………
暖かいを通り越して、少し暑い……モゾモゾと掛け布団から足を出して、手を出して、少しでも涼もうと………
「アリー……ダメだよ…風邪を引く……」
自分より大きな腕でまた、スッポリと掛け布団の中に戻されてしまった………
この声……!?
「ラウード…さん?」
今、有都をスッポリと包んでしまっているのはラウード本人だ。一番最初にここで気がついた時の様に有都はラウードの腕に抱かれて寝ていた事になる。
あのまま…寝ちゃったのか…?
川のほとりにいたのを覚えているし、そこでラウードに抱きついて泣き出したのも覚えている。で、そのまま眠った、と………
「あ、あの…ラウードさん…?」
気恥ずかしいものだが、このままのほうがもっと気まずい。せめて、もう目は覚めたからベッドから出させてもらいたい。
「………ん……?」
低い寝起きの掠れた声は、大人の色気というものか、まだ若い有都とは違うものがある。
「ベッドまで、運んでくれたんですか?すみません…色々ご迷惑をおかけして…良く、眠れましたか…?」
頭が冴えれば、昨夜のラウードの苦しみようがはっきりと思い出される。あの後、悪夢も見ずにちゃんと眠れたかどうか心配になった。
「ふふふ……やはり、有都はいい子だ…優しいね?君にそんなに悲しそうな顔は似合わないんじゃないかな?」
寝起きだと言うのに、ラウードの整った顔はやはり整っていた。間近で見てる方の心臓に良くない気がする。同性からしてもこうだもの、ラウードは絶対にモテる…!そんな仕方のない事を考えているうちに、有都はラウードの腕に包まれ直されて未だ布団の中だ。ラウードの寝息が首筋に掛かるくらいにギュウッと抱きしめられたまま……
寝れるはずない…………………
寝具が一つだけだって言うのはわかる。けど、こんなにくっついて眠らなくてもいいんじゃないか…?
「やっぱり………ラウード!!!」
突然ドアが開いたかと思ったら、そこにはサクが立っていて、この状況に顔色一つ変えずにラウードを起こしにかかった……
「あ、あの、サクちゃん?あの、これは、ラウードさんが、離してくれなくて!」
自分の力ではどうにもならないラウードの腕を振り解こうと、サクへの誤解を弁明しつつ渾身の力を出しているつもりでも、有都はラウードの腕を解けない………
「あ、大丈夫よアリー。良く解っているから。力を使った後って人肌が恋しくなるんですって。だから、アリーが悪いんじゃないの。さ!ラウード、起きて!!オリバーが、外の様子がおかしいって言ってるの。」
ガバッと、一気に寝台の布団が飛んだ……?
サクのその一言で、ラウードの目は覚めたらしい。流石騎士とでもいうのか既にラウードの表情は臨戦体制で、腕には剣を持っていた。
「どこだ?」
「南の泉の方よ。」
「昨日は何も無かったが…?」
「兵士が居るって。」
兵士……?帝国の兵士?
ざっと有都の顔から血の気が引く。昨日の皆殺しの話から見つかったら自分達も同じ運命に合うのでは……
「アリー………」
余り、表情の変わらないサクの表情が歪んでる。
「大丈夫だよ…アリー。オリバーは鼻が聞くんだ。それに私は強い。ここでサクと待っていて…」
コクコク…と、子供の様にうなづくことしか有都にはできなかった。
「アリーこっち!」
サクに案内されて、小屋から離れた大木の幹に二人で隠れる。手には持てるだけの荷物を持って………
「見つかったら、どうなるの?」
「私は殺されるかも…」
「え…………」
「アリーは初めて帝国側に連れて行かれるから、まだ生き残れる可能性があるわ。私は、顔が知れてるから……」
心なしか、サクの表情も強張っている。
「オ、オリバーは?オリバーは何処?」
「落ち着いてアリー。大きな声を出しちゃダメ!向こうもスキル持ちを使ってると思うから見つかっちゃうわ。」
サクにそう言われて、有都はグッと言葉を飲み込んだ。
どれくらいラウードは強くて、どれくらいオリバーの鼻は効くのか……
早く…早く、帰ってきて………
必死に願う時間が永遠にも思える。
「ね、アリーはスキル使えないの?」
「スキルって……俺の?」
「そう…分かってないかも知れないけど、アリーのスキル、消失でしょ?」
「消失……?」
「あ、やっぱり分かってなかったのね?」
「なんで分かるの?」
「私のスキル、スキル鑑定よ?その人の持っているスキルを見る事ができるのよ。」
「消失って…何を、消せるの?」
「それは…アリーにしか分からないと思う…私はスキル鑑定だけなの。」
「そんな……」
今まで使えたのは、相手から自分の存在を消すことだけだ。もし、ここに帝国の兵士が来たら?相手から自分を消せばいい?でも、一人でなんて来るか?何人も連れ立って来るんじゃないのか?そもそも、大人しく瞳を見てるだけなんて無いと思う…
「どうしたら………」
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