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グス……グスッ……ウック……グス…
泣いてる…?
夢うつつの頭の隅に、誰かの堪える様な泣き声が響いて来て…物凄く、気になる……
寝られない……
気にしない様にしても、どうしても鳴き声が頭にこびりついて来て…
「誰……!?」
泣いている本人を確かめようと有都はガバッと起き上がった。
起き上がった、と思ったのに…実際には有都の身体はガッチリとした何かに固定されてて動かない。
「え?何これ…?」
「目が覚めたか?」
すごく間近から低い声……?思わず見上げて声の主を確認しても、やっぱり思考が停止する。
誰…?これ……?
映画の主人公……?
そんな表現がぴったりの外国人が目の前にいる……赤い瞳に銀の髪なんて、見たことも無い………
「……誰……?」
半ば呆けた様な顔で、不躾にそんな事を有都は声に出していた。
「私か…?私はラウードと言う。この森の守護騎士だ。」
森……?守護騎士……?
「ここ…どこ……?」
さっきまで学校に居た…先輩達に抑えられてて……それで……?
「あら、目が覚めたの?」
ラウードと名乗った守護騎士の後ろから今度は女子の声がする。そっと覗き込む様にしてこちらを見てくるその子は、黒髪に黒目で目の前のラウードとは違い親近感が持てたし、見たこともないくらいの美少女…!
「ああ、今しがた目覚めた。」
有都の代わりにラウードが答えれば、やっと有都はラウードの腕に抱き締められている事に気がつく。
「わ!すいません。退きます、退きますから離してください!」
じっと黒髪の美少女に見つめられてるのに、知らない男の腕の中なのは、やはり男としては居た堪れない。
「まだ、ダメよ。ラウード。」
離すな、との指示はなぜか美少女から出てきた。その指示通りにガッチリと掴まれている有都は身動きすらできない。
「貴方、倒れていたのよ?どこからか逃げて来たスキル持ちなんでしょう?」
「…倒れて…?学校で…?」
先輩達に押し倒されて、脱がされて、ローターを抜かれて……その先が受け入れがたく、物凄く嫌で、嫌で………
あれ……?嫌だったはずなんだけど……
「違うよ。森の中でだ。巡回中に私が見つけた。」
「森って…ここ、どこ?」
「シャラの森と言う。知らないで来たのか?」
ちょっと驚いた風のラウード。それだけの仕草でも、整った顔の人は見応えがある。
「………知らない。俺、学校に居て……」
「そこで、スキルを使ったのね?」
スキル…ここでは産まれ持った能力の事らしい…このシャラの森にはそんな能力者が沢山居て、ほとんどの人々が今まで住んでいたところから逃げて来たのだそうだ。黒髪、黒眼の美少女は自分の事をサクと名乗り、そう話してくれた。
「スキルなんて…………」
そんなの物語の中だけだろう…?
「貴方、持ってるわよ?」
有都の心の中をバッサリ切り捨てる様にはっきりとサクは言う。
「ここに来る子達は皆んな辛い目にあっているの…逃げ場はここしかないんだもの………ラウード、もう少し落ち着くまでお願いね?」
「分かっている。」
まだ混乱している有都を置いてサクはどこかへ行ってしまってからも、ラウードは有都を離さない。
離して………くれない…………
何度か離れようとはしたものの、ラウードにはその度ににっこりと微笑まれてかわされてしまう。
大柄な大の男に抱きしめられてるって…どんな状況?
先輩達の時には確かな目的があって、理解できるところはある、が、これは?
「あの………」
居た堪れなさすぎて、おずおずと有都はラウードを見上げる。やっぱり凄く綺麗な赤い瞳だ…有都は今までにこんな瞳を見たことがなくて、凝視してしまっている事にも気がつかない位に見つめてしまっていた。瞳と同じく、ラウードの目元も少し赤い…?
「ん…?もう、落ち着いたか?」
いえ、この状況は落ち着きません………
「大丈夫なんで、いい加減…離してもらえます?」
「そうか…確認しても?」
「確認?何を?」
キョトンとして有都はラウードを見つめ返す。
「君の名前は?」
「胡古、有都…」
「こ…こ、あり…と?どちらが名前だ?」
「え…?あり、とです。」
「アリー…?」
そうか、外国の人には日本名は言い難いのかもしれない…
「それでいいです。」
「分かった、では、アリー少し確認するよ?」
なんの確認なのだか、首を傾げた有都の身体に見知った感覚が走る。
「え……ちょっと…!」
ラウードの大きくて温かい手が、有都の背中から腰に降りてくる。不意打ちでそんな動きをするものだから、思わず有都は背中を反らせて反応してしまった。
「大丈夫。酷い事はしないよ…落ち着いて…」
穏やかな言葉に反して、ラウードの手は明確な意志がある様にしか思えない動きをしてくる。
腰から、臀部へ、臀部から大腿に降りて前に………
「な…何して……!」
一気に先輩達に触られていた感覚も戻って来た。
身体中を触られた……ゾワゾワする嫌な感覚。抑えられて中心を扱かれて、その感覚から逃れたくてもできなかった……
気持ち悪い………
自分の身体が自分の意志とは別の物みたいに感じる嫌な感じ……
「大丈夫…アリーは綺麗だ。どこも汚れていないし、真っ新だよ…落ち着いて、大丈夫……」
ラウードの手は際どい所まで撫で上げてくるのに、その核心には触れてこなくて、でも何かを確かめるみたいに有都を触り続ける。
耳元で囁き続けている低い落ち着いた声は、ずっとずっと大丈夫だと繰り返しながら。
泣いてる…?
夢うつつの頭の隅に、誰かの堪える様な泣き声が響いて来て…物凄く、気になる……
寝られない……
気にしない様にしても、どうしても鳴き声が頭にこびりついて来て…
「誰……!?」
泣いている本人を確かめようと有都はガバッと起き上がった。
起き上がった、と思ったのに…実際には有都の身体はガッチリとした何かに固定されてて動かない。
「え?何これ…?」
「目が覚めたか?」
すごく間近から低い声……?思わず見上げて声の主を確認しても、やっぱり思考が停止する。
誰…?これ……?
映画の主人公……?
そんな表現がぴったりの外国人が目の前にいる……赤い瞳に銀の髪なんて、見たことも無い………
「……誰……?」
半ば呆けた様な顔で、不躾にそんな事を有都は声に出していた。
「私か…?私はラウードと言う。この森の守護騎士だ。」
森……?守護騎士……?
「ここ…どこ……?」
さっきまで学校に居た…先輩達に抑えられてて……それで……?
「あら、目が覚めたの?」
ラウードと名乗った守護騎士の後ろから今度は女子の声がする。そっと覗き込む様にしてこちらを見てくるその子は、黒髪に黒目で目の前のラウードとは違い親近感が持てたし、見たこともないくらいの美少女…!
「ああ、今しがた目覚めた。」
有都の代わりにラウードが答えれば、やっと有都はラウードの腕に抱き締められている事に気がつく。
「わ!すいません。退きます、退きますから離してください!」
じっと黒髪の美少女に見つめられてるのに、知らない男の腕の中なのは、やはり男としては居た堪れない。
「まだ、ダメよ。ラウード。」
離すな、との指示はなぜか美少女から出てきた。その指示通りにガッチリと掴まれている有都は身動きすらできない。
「貴方、倒れていたのよ?どこからか逃げて来たスキル持ちなんでしょう?」
「…倒れて…?学校で…?」
先輩達に押し倒されて、脱がされて、ローターを抜かれて……その先が受け入れがたく、物凄く嫌で、嫌で………
あれ……?嫌だったはずなんだけど……
「違うよ。森の中でだ。巡回中に私が見つけた。」
「森って…ここ、どこ?」
「シャラの森と言う。知らないで来たのか?」
ちょっと驚いた風のラウード。それだけの仕草でも、整った顔の人は見応えがある。
「………知らない。俺、学校に居て……」
「そこで、スキルを使ったのね?」
スキル…ここでは産まれ持った能力の事らしい…このシャラの森にはそんな能力者が沢山居て、ほとんどの人々が今まで住んでいたところから逃げて来たのだそうだ。黒髪、黒眼の美少女は自分の事をサクと名乗り、そう話してくれた。
「スキルなんて…………」
そんなの物語の中だけだろう…?
「貴方、持ってるわよ?」
有都の心の中をバッサリ切り捨てる様にはっきりとサクは言う。
「ここに来る子達は皆んな辛い目にあっているの…逃げ場はここしかないんだもの………ラウード、もう少し落ち着くまでお願いね?」
「分かっている。」
まだ混乱している有都を置いてサクはどこかへ行ってしまってからも、ラウードは有都を離さない。
離して………くれない…………
何度か離れようとはしたものの、ラウードにはその度ににっこりと微笑まれてかわされてしまう。
大柄な大の男に抱きしめられてるって…どんな状況?
先輩達の時には確かな目的があって、理解できるところはある、が、これは?
「あの………」
居た堪れなさすぎて、おずおずと有都はラウードを見上げる。やっぱり凄く綺麗な赤い瞳だ…有都は今までにこんな瞳を見たことがなくて、凝視してしまっている事にも気がつかない位に見つめてしまっていた。瞳と同じく、ラウードの目元も少し赤い…?
「ん…?もう、落ち着いたか?」
いえ、この状況は落ち着きません………
「大丈夫なんで、いい加減…離してもらえます?」
「そうか…確認しても?」
「確認?何を?」
キョトンとして有都はラウードを見つめ返す。
「君の名前は?」
「胡古、有都…」
「こ…こ、あり…と?どちらが名前だ?」
「え…?あり、とです。」
「アリー…?」
そうか、外国の人には日本名は言い難いのかもしれない…
「それでいいです。」
「分かった、では、アリー少し確認するよ?」
なんの確認なのだか、首を傾げた有都の身体に見知った感覚が走る。
「え……ちょっと…!」
ラウードの大きくて温かい手が、有都の背中から腰に降りてくる。不意打ちでそんな動きをするものだから、思わず有都は背中を反らせて反応してしまった。
「大丈夫。酷い事はしないよ…落ち着いて…」
穏やかな言葉に反して、ラウードの手は明確な意志がある様にしか思えない動きをしてくる。
腰から、臀部へ、臀部から大腿に降りて前に………
「な…何して……!」
一気に先輩達に触られていた感覚も戻って来た。
身体中を触られた……ゾワゾワする嫌な感覚。抑えられて中心を扱かれて、その感覚から逃れたくてもできなかった……
気持ち悪い………
自分の身体が自分の意志とは別の物みたいに感じる嫌な感じ……
「大丈夫…アリーは綺麗だ。どこも汚れていないし、真っ新だよ…落ち着いて、大丈夫……」
ラウードの手は際どい所まで撫で上げてくるのに、その核心には触れてこなくて、でも何かを確かめるみたいに有都を触り続ける。
耳元で囁き続けている低い落ち着いた声は、ずっとずっと大丈夫だと繰り返しながら。
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