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国王の召喚
3 臣下の務め
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「ほう?変わらずに威勢は良いではないか?つい先日人に襲われたと聴いたのだが?」
目を細めながら、王太子タルコットは嘲笑を浮かべている。
「本当に、お前は嫌な人間だな…!好きで襲われたわけじゃない!」
「嫌な人間か。褒め言葉と受け取っておこう。」
そういうと耳を低くして警戒しているキールの側のソファーにドサリと腰をかけるのだった。
「うむ。その姿ならば合格だろうな。」
何のことやら、王太子タルコットはいきなりキールの容姿を誉めてくる。
「………?」
いきなり腕を掴まれた事があるキールにしてみたら、少しばかり誉められたとてそれが何だというのだろうか。喜ぶよりも何よりも王太子に対する警戒心の方が今は強い。
「見てくれは合格だが、後は素養か?」
「何のことを言っている?」
「王命だ。」
「……?」
「其方を本宮に連れてこいだと。」
「………だから?」
「……驚かんのか?国王がお前に会いたいそうだ。」
一国の王が御前に呼んでいるというのにキールは一向に驚きも興味も何も示してこない。
「俺は会いたくない…!」
それどころかキッパリと断ってくる始末。
「はははは……!」
ブスッとした顔で本当に嫌そうに言うキールを見た途端に王太子タルコットは周囲の者達が驚くほど笑い転げたのだ。
「で、殿下?」
「………?」
キールは面白い事を言った覚えも無いのだが王太子タルコットがなぜ笑っているのか全く検討もつかず憮然とした顔をしている。
「ふふふ…其方が嫌だと言ってもな。其方を連れていかねばならない者がいるのだ。なぁ?フレル?」
「………はっ…」
「だから、何のことだよ?」
「其方が行かないとな、フレルが罰を受ける事になっている。さて、父上は何をするかな?」
「なんだ、それ?」
「人間の中で王の命令は絶対だ。これに従え無い者ならばこの国では生きていけまい。鞭打ちか、水責めか、火炙りなんて物もあるな?さて、どうなるか…」
「…!?…なんで、そこの人間が!」
「フレトールだよ?キール殿?其方に名がある様に人間にもあるのだ。」
「だから、何でフレトールが罰を受けるんだ?」
初めて……名を呼ばれた………
思いの外急に呼ばれたもので、フレトールの心臓が思いがけずにバクバクと鳴っている……
「それが臣下の務めだからだ。王の臣下は王の為に働くものだ。王の命を反故にするならばそれなりの罰はある。」
「だからってどれも酷すぎるだろ?俺が王の前に行かない事でなんで……フレトールがそこまで負わなければいけないんだ…!」
「なら其方が断らなければいい。」
「!?」
「フレルの罰が嫌ならば、其方が大人しく王の前に出ればいい事だが、どうする?」
既に王太子タルコットは勝ち誇った様な笑顔をキールに向けてきている。ここで、キールは断らないだろうと踏んでわざとこんなふうに言っている様にさえ見える。
「…殿下。キール殿は見せ物ではありません。」
「分かっている。が、致し方ないであろう?この国は父王の物だ。それともならず者どもに何処ぞへと売られてもっと劣悪な場で見せ物になった方が良かったか?」
「うっ……」
そんな事は勿論ごめん被る。王の前だろうと、ならず者どもの前であろうと見せ物なんてまっぴらごめんだとキールは唇を噛み締めた。
「殿下、見せ物ではございませんよ?国王もその妃であられる側妃殿下方もキール殿とただお会いしたいのです。」
「フレル、自分に言い聞かせている様に聞こえるぞ?」
「……」
「それと、キール殿?先の様に城を抜け出さない事だ。監督不行き届きでフレルが罰せられるだけだからな。」
「……卑怯だ…こっちには選択肢すら無いのか?」
「あるだろう?王の前に出る、出ない。この二選択だからな?キール殿、其方の好きにすればいい。では、私は帰る。」
言いたいことだけ言って、前回と同じく振り返ることすらせずに帰っていく王太子タルコット……残されたキールは怒りでフルフルと震えながら王太子が消えていった方を睨み付けることしかできなかった。
目を細めながら、王太子タルコットは嘲笑を浮かべている。
「本当に、お前は嫌な人間だな…!好きで襲われたわけじゃない!」
「嫌な人間か。褒め言葉と受け取っておこう。」
そういうと耳を低くして警戒しているキールの側のソファーにドサリと腰をかけるのだった。
「うむ。その姿ならば合格だろうな。」
何のことやら、王太子タルコットはいきなりキールの容姿を誉めてくる。
「………?」
いきなり腕を掴まれた事があるキールにしてみたら、少しばかり誉められたとてそれが何だというのだろうか。喜ぶよりも何よりも王太子に対する警戒心の方が今は強い。
「見てくれは合格だが、後は素養か?」
「何のことを言っている?」
「王命だ。」
「……?」
「其方を本宮に連れてこいだと。」
「………だから?」
「……驚かんのか?国王がお前に会いたいそうだ。」
一国の王が御前に呼んでいるというのにキールは一向に驚きも興味も何も示してこない。
「俺は会いたくない…!」
それどころかキッパリと断ってくる始末。
「はははは……!」
ブスッとした顔で本当に嫌そうに言うキールを見た途端に王太子タルコットは周囲の者達が驚くほど笑い転げたのだ。
「で、殿下?」
「………?」
キールは面白い事を言った覚えも無いのだが王太子タルコットがなぜ笑っているのか全く検討もつかず憮然とした顔をしている。
「ふふふ…其方が嫌だと言ってもな。其方を連れていかねばならない者がいるのだ。なぁ?フレル?」
「………はっ…」
「だから、何のことだよ?」
「其方が行かないとな、フレルが罰を受ける事になっている。さて、父上は何をするかな?」
「なんだ、それ?」
「人間の中で王の命令は絶対だ。これに従え無い者ならばこの国では生きていけまい。鞭打ちか、水責めか、火炙りなんて物もあるな?さて、どうなるか…」
「…!?…なんで、そこの人間が!」
「フレトールだよ?キール殿?其方に名がある様に人間にもあるのだ。」
「だから、何でフレトールが罰を受けるんだ?」
初めて……名を呼ばれた………
思いの外急に呼ばれたもので、フレトールの心臓が思いがけずにバクバクと鳴っている……
「それが臣下の務めだからだ。王の臣下は王の為に働くものだ。王の命を反故にするならばそれなりの罰はある。」
「だからってどれも酷すぎるだろ?俺が王の前に行かない事でなんで……フレトールがそこまで負わなければいけないんだ…!」
「なら其方が断らなければいい。」
「!?」
「フレルの罰が嫌ならば、其方が大人しく王の前に出ればいい事だが、どうする?」
既に王太子タルコットは勝ち誇った様な笑顔をキールに向けてきている。ここで、キールは断らないだろうと踏んでわざとこんなふうに言っている様にさえ見える。
「…殿下。キール殿は見せ物ではありません。」
「分かっている。が、致し方ないであろう?この国は父王の物だ。それともならず者どもに何処ぞへと売られてもっと劣悪な場で見せ物になった方が良かったか?」
「うっ……」
そんな事は勿論ごめん被る。王の前だろうと、ならず者どもの前であろうと見せ物なんてまっぴらごめんだとキールは唇を噛み締めた。
「殿下、見せ物ではございませんよ?国王もその妃であられる側妃殿下方もキール殿とただお会いしたいのです。」
「フレル、自分に言い聞かせている様に聞こえるぞ?」
「……」
「それと、キール殿?先の様に城を抜け出さない事だ。監督不行き届きでフレルが罰せられるだけだからな。」
「……卑怯だ…こっちには選択肢すら無いのか?」
「あるだろう?王の前に出る、出ない。この二選択だからな?キール殿、其方の好きにすればいい。では、私は帰る。」
言いたいことだけ言って、前回と同じく振り返ることすらせずに帰っていく王太子タルコット……残されたキールは怒りでフルフルと震えながら王太子が消えていった方を睨み付けることしかできなかった。
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