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魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる
31、王子の横槍 1
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当然の如くに俺は動けなくなりました。
頃合いを身図るのが至極上手いカーペ君の訪室によって身なりは整えられ、綺麗な大神官の紋がついた衣類を当然の様に着せられて、今何故だか動けない原因を作った大神官の両腕によって抱え上げられていて…
「あの…どこに行くんです?」
はっきり言って、事が終えた後は身体は勿論怠いし眠いのだ。出来るならば少し休みたいのに、大神官は俺を何処かへと連れて行こうとする。
「ええ、腹立たしい事に貴方に合わせろと息巻く方がおられますのでね。」
腹立たしい?大神官が断れないって言ったら相当の身分の方なんじゃ…?それを、腹立たしいって…誰が聞いているかも分からないこんな所で、そんなこと言っちゃう?
意外と筋肉質な大神官の腕に抱かれしばし運ばれていけば、そこは大神殿にある一番大きな面談室だった。非常に多くの人々が押し寄せてくるこの大神殿では、大小いくつかの面談室が設けられている。一般の人々にはあまり解放されない様なのだが、高貴な身分の方々のために随時使用されている。その中でも一番大きくて立派と言える面談室に大神官は躊躇なく俺を抱えたまま入っていった…
「お待たせしてしまいましたか?殿下。」
殿……下………!?
悲鳴が、出るところだった…!なんでこの魔王たる大神官はそんなに大切な事を言ってくれないんだ!殿下って言ったら王子様………王様の次に尊くあらせられる方じゃないか…!
「ふん。其方が多忙な事は今に始まった事ではないだろう?で、それが件の御使なのか?」
貴賓用なのだろう、柔らかそうなソファーに座っていた王子は立ち上がろうとする仕草をする。
「お座りになっていてください殿下。」
王子殿下の動きを止めて、大神官は俺を抱いたまま殿下の向かい側に優雅に着座した。
「なんとも、過保護すぎやしないか?」
いつまでも大神官の膝の上に当然の如くに座り続けている俺をじっと見つめながら殿下はそんな苦言を言ってくる。のだが、俺だって大神官が降ろしてくれるのならば自分で座ることくらいできるのに…!早く降ろせって暴れたい所だけど、目の前にいるのはこの国で最も高貴な方のうちの一人で、正直緊張で身体が固まってしまっている。
「先程まで、御使様は御技を行なっておいでだったのです。身体に負担がかかりますからね。転んでしまうよりはいいでしょう。」
「御技……ね?どの様にするのだ?」
女神の御使の御技は秘匿事項であったはず…国王にだとておいそれと話せないのではなかったっけ?そもそも、その御技自体が疚し過ぎるのだから、こんな所で言ってほしくはない…!
ジワジワとルアンの頬が熱くなる…
「方法が問題ですか、殿下?この国に起こった近況を良くよくご存知だと思うのですが?」
収穫が上がったとか、天候だとかその他色々……
「だからそれがなぜ御使の所業だと言えるのだ?偶然に偶然が重なったとは考えんのか?」
「………石を…」
「石?」
「聖石をご覧に入れましょう。」
大神官の一言で、あの不幸の元凶とも言える聖石が厳かに運ばれてくる。厳重に箱には施錠まで追加されているけれども、誰かに持ち去られてもどうせここに帰ってくるのにね………
「ほう?これか?」
全てに置いてぶっきらぼうな殿下は少し聖石には興味がある様だ。聖石担当の神官…こんな人いたんだ…が丁寧に鍵を開ける。箱を開ければ、光沢のある布の上に鎮座している聖石現れる。久しぶりに見たけれども、全く様子は変わっていない様だ。
「触れられるのか?」
じっと見つめていた殿下は少し警戒している様子。もしかしたら国王様から聖石に触れた際の様子を聞いているかもしれない。
「ルアン殿。殿下の御前に聖石を。」
大神官以下他の誰をもこれには触れないから俺がするっきゃないんだよね。
やっと身体を離してくれた大神官の膝の上から降りて、箱からそっと聖石を取り出して殿下の前に良く見える位置に置き直す。
「其方は触れられるのだな?」
「はい。その通りです。」
直接声をかけられるとは思わなくて、ついビクッと肩が反応してしまったけれども、ちゃんと受け答えはできたと思う。
「ふむ……其方の瞳もこれと同じ輝きを持っているとは…不思議なものだ。」
殿下はそっと聖石に手を伸ばした。
あ、と思ったけれど、こっちが止める前に案の定、パチっと聖石は殿下を弾く。これも以前と変わりない。
「……弾かれた……」
殿下もびっくりなさったのだろう。弾かれた手をそのままに呆然としている。
「はい。あの、皆様私以外はそうなります。」
お叱りを受けないかそれだけが心配で、テーブルの側に膝をついて殿下を見上げた。殿下はその後、怒るでもなく質問を投げるでもなく、ジッと聖石見つめながら何かを考えておられた。
「大神官、なぜこれがここにある?」
そんな事はこっちが聞きたいよ、そう言い返したくなる様な殿下の質問に大神官はなんとふん、と鼻で笑ってくれた。
頃合いを身図るのが至極上手いカーペ君の訪室によって身なりは整えられ、綺麗な大神官の紋がついた衣類を当然の様に着せられて、今何故だか動けない原因を作った大神官の両腕によって抱え上げられていて…
「あの…どこに行くんです?」
はっきり言って、事が終えた後は身体は勿論怠いし眠いのだ。出来るならば少し休みたいのに、大神官は俺を何処かへと連れて行こうとする。
「ええ、腹立たしい事に貴方に合わせろと息巻く方がおられますのでね。」
腹立たしい?大神官が断れないって言ったら相当の身分の方なんじゃ…?それを、腹立たしいって…誰が聞いているかも分からないこんな所で、そんなこと言っちゃう?
意外と筋肉質な大神官の腕に抱かれしばし運ばれていけば、そこは大神殿にある一番大きな面談室だった。非常に多くの人々が押し寄せてくるこの大神殿では、大小いくつかの面談室が設けられている。一般の人々にはあまり解放されない様なのだが、高貴な身分の方々のために随時使用されている。その中でも一番大きくて立派と言える面談室に大神官は躊躇なく俺を抱えたまま入っていった…
「お待たせしてしまいましたか?殿下。」
殿……下………!?
悲鳴が、出るところだった…!なんでこの魔王たる大神官はそんなに大切な事を言ってくれないんだ!殿下って言ったら王子様………王様の次に尊くあらせられる方じゃないか…!
「ふん。其方が多忙な事は今に始まった事ではないだろう?で、それが件の御使なのか?」
貴賓用なのだろう、柔らかそうなソファーに座っていた王子は立ち上がろうとする仕草をする。
「お座りになっていてください殿下。」
王子殿下の動きを止めて、大神官は俺を抱いたまま殿下の向かい側に優雅に着座した。
「なんとも、過保護すぎやしないか?」
いつまでも大神官の膝の上に当然の如くに座り続けている俺をじっと見つめながら殿下はそんな苦言を言ってくる。のだが、俺だって大神官が降ろしてくれるのならば自分で座ることくらいできるのに…!早く降ろせって暴れたい所だけど、目の前にいるのはこの国で最も高貴な方のうちの一人で、正直緊張で身体が固まってしまっている。
「先程まで、御使様は御技を行なっておいでだったのです。身体に負担がかかりますからね。転んでしまうよりはいいでしょう。」
「御技……ね?どの様にするのだ?」
女神の御使の御技は秘匿事項であったはず…国王にだとておいそれと話せないのではなかったっけ?そもそも、その御技自体が疚し過ぎるのだから、こんな所で言ってほしくはない…!
ジワジワとルアンの頬が熱くなる…
「方法が問題ですか、殿下?この国に起こった近況を良くよくご存知だと思うのですが?」
収穫が上がったとか、天候だとかその他色々……
「だからそれがなぜ御使の所業だと言えるのだ?偶然に偶然が重なったとは考えんのか?」
「………石を…」
「石?」
「聖石をご覧に入れましょう。」
大神官の一言で、あの不幸の元凶とも言える聖石が厳かに運ばれてくる。厳重に箱には施錠まで追加されているけれども、誰かに持ち去られてもどうせここに帰ってくるのにね………
「ほう?これか?」
全てに置いてぶっきらぼうな殿下は少し聖石には興味がある様だ。聖石担当の神官…こんな人いたんだ…が丁寧に鍵を開ける。箱を開ければ、光沢のある布の上に鎮座している聖石現れる。久しぶりに見たけれども、全く様子は変わっていない様だ。
「触れられるのか?」
じっと見つめていた殿下は少し警戒している様子。もしかしたら国王様から聖石に触れた際の様子を聞いているかもしれない。
「ルアン殿。殿下の御前に聖石を。」
大神官以下他の誰をもこれには触れないから俺がするっきゃないんだよね。
やっと身体を離してくれた大神官の膝の上から降りて、箱からそっと聖石を取り出して殿下の前に良く見える位置に置き直す。
「其方は触れられるのだな?」
「はい。その通りです。」
直接声をかけられるとは思わなくて、ついビクッと肩が反応してしまったけれども、ちゃんと受け答えはできたと思う。
「ふむ……其方の瞳もこれと同じ輝きを持っているとは…不思議なものだ。」
殿下はそっと聖石に手を伸ばした。
あ、と思ったけれど、こっちが止める前に案の定、パチっと聖石は殿下を弾く。これも以前と変わりない。
「……弾かれた……」
殿下もびっくりなさったのだろう。弾かれた手をそのままに呆然としている。
「はい。あの、皆様私以外はそうなります。」
お叱りを受けないかそれだけが心配で、テーブルの側に膝をついて殿下を見上げた。殿下はその後、怒るでもなく質問を投げるでもなく、ジッと聖石見つめながら何かを考えておられた。
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