聖石を拾った村人Aに付いてきたのが魔王の溺愛

小葉石

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魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる

30、女神の権限地 2 *

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 カーペ君の願い?が、順調に叶っているのだろうか…外国の特使なる者達の来国が着々と進んでいるそうで…なんでも俺に目通り願いたいと懇願されているらしいのだが……そこはおいそれと女神の御使を出すわけにはいかないと国王以外国の中枢の者達が申し出を留めてくれているらしい。それもそのはず、女神の御使が見つかってからと言うもの気候は安定し作物の収穫量は増え、周辺国に取っては注目せずにはいられない様な変化がこの国に起こっているのだと言うのだから。女神様からの祝福と恩恵、それは確かに俺と共にあると皆様に刷り込まれてしまったようなものなのだから。極め付けは俺と婚姻を結ばせて頂きたいと言い出す国もあり、その必死さが垣間見えて来て、俺としては戦々恐々としている………




「凄いですよ!!御使様!!」
 
 今日も朝から元気なカーペ君…まだ眠くて、だるい身体を起こしたくない俺としては声の方に顔だけ向けて視線で答える。大体俺が眼を覚ます時にはもう大神官はいないんだ。

「この大神殿にも、御使様当てにお手紙がこんなに…!あれ?でも主人が止めていたはずなんですけどね?んん?」

 どうやら俺とお近づきになりたい他国の王族やら有力貴族家からの圧力は相当なもので、大神官の検問を突破し手を回して来ているらしい…

「これを、どうしろと…?」

 トレーに山の様に積まれた手紙…それぞれきっと求婚だとか、何かのお誘いだとか、そんな物が書かれているだろう物をどうしろと言うのだろうか?

「読みます?」

 コテンと首を倒してカーペ君は良かれと思って聞いてくるのだろうけれど、恋文だった場合、返事をした暁にはその人、あの魔王に消されるんじゃないの?そんなことを考えていたら、ブルブルっと寒気が走って、勢いよくフルフルフルフルと首を振っていた。

「賢明な判断ですよ?ルアン。」

「!?」

「主人!?」

 すっかりこの部屋には二人だけ、の気がしていたんだ。だからいきなり声が掛かればビック、と身体が反応してしまう。

 仕事に行ったんじゃ……?

 何となく嫌な雰囲気を感じ取ってそろうりと後ろを振り向けば、瞳は笑っていないのに笑顔を湛えた大神官が仁王立ち…普通に立っているだけなんだろうけど…しているのが目に入ってくる。

 なんだろう、これ?主人の在ぬ間に浮気現場が見つかった、そんな雰囲気だろうか…?そんな経験ないけれど、物凄く居心地が悪い…

「お戻りですか?」

 カーペ君が不思議そうに小首を傾げている。

「…………」

 やっぱり、怒っていらっしゃる?

 大神官は無言でカーペ君が持っている手紙の束を手に取ると一部始終無言で読み出した。

 こ、怖い…………

 浮気をしているわけでも、裏切る、とはまた違うけれど、魔王に対して心は捧げてないし、不貞行為っていうものに当てはまることは一切していないのだから堂々としていても良いのだろうけれど、この無言の時間が怖い…

「カーペ……」

「はい、主人。」

「先方に少し遅れると伝えておきなさい。」

 大神官は表情を崩さないままにカーペ君に一枚の封筒を渡している。とても上質な紙が使われている封筒だから、どこぞ貴族家の物からだろう。会談の予定でもあったのかもしれない。手紙を受け取ったカーペ君は急いでお使いに行ってしまった…

 大神官って忙しいんだもんな…なんて、オドオドしながら俺はぼうっと大神官とカーペ君のそんなやりとりを見つめていた。

「……ルアン……」

「ひゃい!」

 大神官の良く通る低い声で名前を呼ばれただけなのに、背中にビリッと寒気という名の電流が走る。

「…手紙を読みました?」

「いいえ!」

「そう、ですか…全く、油断も隙もあったものではないな…」

 一気に昼夜が逆転する。何度見ても大神官が魔王に変貌する瞬間は一瞬で、一気に闇に包まれた様な室内では身動きも取れなくなった。

「あ……の…?仕事、があるんじゃ?」

が我の最重要課題よ。」

 決して笑顔じゃない笑顔を俺に向けて、当然の如くに漆黒の魔王は俺をベッドへ沈めにかかる。

「ち、ちょっと!待たせている人がいるのでは?」

 さも当然という様に服を脱がせにかかる魔王は、これまた当然という様にささやかな胸の突起をいじりだす。

「待たせておけば良い。それとも、文を送って寄越した者どもを先に八つ裂きにでもするか?」

「ダメだろ…!」

 いつも抵抗らしい抵抗ができなくなるんだ。こうやって魔王イグショールは人の命を駆け引きに使ってくるし…!

 悔しいけど、慣らされてきている身体が反抗してしまって、反抗らしい反抗なんていつも直ぐにできなくなる。

「フ……可愛らしい……やはりここを離れて其方の故郷の神殿にでも居を移すか?」

 勝手知ったる俺の身体のいい所を次々に攻めてくる魔王の手が憎らしい…

「あぅ……」

 食いしばったのについ、立ち上がってきた物を優しく包み込まれた快感に声が出てしまって、俺の上で魔王が鼻で笑った気配がして、悔しい…!
 
「我を張らずに、楽しめばいいものを…」

 クックと隠そうともしない笑い声をあげて、魔王は一つも手を緩めずに自分の思いをぶつけてきた。









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