聖石を拾った村人Aに付いてきたのが魔王の溺愛

小葉石

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魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる

27、魔王の小さな嫉妬 1

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「嫉妬ってなんですか!?嫉妬している人の顔じゃ無いですよね?」

 今まで嫉妬されたこともないからそれがどんな顔をしているのか分からないけれども…でも、大神官よりも、俺の方が確かに先に怒ってる!

「それに、あんな大勢の人の前で、何も変な事を匂わせる様な言い方しなくても良いじゃないですか!そもそも何だよ?女神の愛の御技って!?」

 まだ顔の赤みが引かないまま、情けなさと羞恥にぶり返した涙を堪えつつ勢いに任せて食ってかかる。相手、魔王なんだけど…余りの勝手さにこっちも我慢なんてできなかった。

「嫉妬ぐらいするでしょう?ルアン、貴方、私にではなくカーペに縋りつこうとしたのですから。」

「はあ!?」

 そんなの仕方ないじゃないか!

 ギッと睨みつける目線を受けても、大神官は案の定ビクともしないし、なんなら少し嬉しそう…

「あぁ、ルアンのその瞳は好きですよ?けれども良く考えて?私がどれほど貴方を待ち望んだと?それなのに、私以外を目の前で求められたりしたら……」

 ザワリ………一瞬で、周囲の雰囲気が変わった……周囲じゃくて、大神官の姿が一瞬で変化したんだ。それに伴って、黒い靄のようなものまで辺りに見える、のは錯覚じゃない……

「其方が求めるもの、全てを破壊し尽くそうと思うくらいには…我の胸を焼き尽くすのよ……」

 本気だ………魔王イグショールの瞳の中にゆらめく焔は暗く…何処までも暗く…底知れぬ闇しか見せてこない…希望なんて、一切見出すことができなかった…

「や、やだ!!」
 
 やだやだやだ!!カーペ君の無惨な姿なんて見たくもない…!

「我は本気だ…其方の心がこの地上の者達にあるのでさえ、豪腹であるのに…」

 スッと細められた目元に、残虐で冷たい殺気さえ漂わせている、目の前の魔族…

 残虐非道な、魔王なんだ……

 地上にいる人達……一瞬で、懐かしい村の人々が目に浮かぶ…懐かしい、あったかい笑顔達が……

「やだ!!それだけは嫌だ!!」

 まさか、村の人達を?何かする気?ここでは暴れないって、暴れられないって言ってたじゃないか!!!村の人々は親代わりだ。寂しい日々を全く寂しくない様に皆構ってくれた…大切な大切な人達なのに!!

「止めろったら!!そんな事したら、二度と許さないからな!!もう、絶対に、名前も呼んでやるもんか!!」

 俺は半狂乱になって、魔王の服、大神官の神官服に縋り付く。

 絶対に嫌だ…何かされた所なんて見たくない…!

「やはり……可愛いな…………泣くな、ルアン。我の悋気は根深いぞ?だから、我以外に頼るのを止めるがいい……」

 恐ろしい脅しをかけて来る魔王イグショール…ここまでくれば、カーペ君や村の人々の命を盾に、魔王の寵愛を受けろと言っているのも同じ事だ。

「まぁ、そんな其方も可愛いのだから、我の負けなのだがね……」

 泣き喚く俺の両手を握りしめて暴れる俺を抑えると、イグショールはチュッと軽くこめかみにキスをする。泣き喚く俺に、可愛いとうっとりとしながら呟く魔王…
 時間ですよ~、とカーペ君が部屋に入って来るまでそんな状況は続いてた……

「あ!ほら、大神官様!御使様激怒されているじゃありませんか!」

 大泣きしている俺を見てカーペ君が大勢の神官達の前でした先程の失態がいけなかったんだと大神官を攻める。カーペ君が入ってきた時にはもう大神官の姿だったのだから、物凄く変わり身が早いんだ…

「もう~こんなに泣かせてしまって……可哀想に……」

 カーペ君は全く怖くはないのだろうか?確かに人前だと、人の優しそうな大神官なのだけれども、それでも神官の中では最高位のくらいの神官がシハル大神官なのに。泣い続ける俺の涙を柔らかい布でそっと押さえて拭き取りながら、ジッと俺を見つめ続けている大神官に、なんとカーペ君が喝を入れている。

「ほら!ぼ~っとしてたら、またもっと、嫌われちゃいますよ!大神官様!御使様をお部屋に返してあげないと!」

 先程の痴態のせいで、俺は多分歩けない…そして、残虐非道な魔王の片鱗を見せられたショックで、大泣きした後で動く気力もないのだから…

「分かっています。カーペ…でも、ルアンが、私の腕の中で、私に縋って泣いている…これは夢にまで見た光景なのですよ!」

 神官のくせになんて夢を見てるんだと突っ込みたくもなるけど、こいつは魔王だから、自分の私利私欲の為に生きている様なもんだろうし、魔王としては当たりまえなのか…

「分かりましたから…けれど他の者達が心配して押し入って来ない内に、お部屋へ連れて行ってあげてください。僕ではお運びできませんよ?」
 
 全く、動けなくなった原因を作ったのは誰ですか?とカーペ君はプリプリだ。

「あぁ、離したくないな…」

「大丈夫ですって、大神官様が離したって、御使様は逃げられませんから!」

 カーペ君………

 さ、ほらほら!とカーペ君にせきたてられて、大神官は俺をまた横抱きにして、大神官の部屋へと連れて行った。余りにも泣きすぎて、まだグスグスしていたから、掛け物を頭まで掛けてくれたのには助かった…
 

















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