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魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる

26、微睡の中では 2

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「ん?気になりますか?」

「はい!魔王を再度封印する程のお力でしょう?それはどの様に発動するのでございましょう?」
  
 この若い神官は学習意欲旺盛で、ズイッと前に出てきて聞き出そうとしてくる。

「そうですね…御使様の秘技ゆえ、詳しくは語れませんが…」

「それでも構いません!ぜひ!ぜひお聞かせ下さいませ!」

 この神官の意見に同調し、他の神官達も皆こちらに注目してくる。

「わかりました。では、当たり障りのない所だけですよ?」

「「はい!!」」

 まるで長閑な村の村人が、年一回の聖戦の物語の劇を楽しみにしている様に、神官である者達も大神官の次なる発言を齧り付く様に待っている。

「それでは…まず女神はこの世を愛しておられます。それはもう諸君も良く存じている事でしょう。御使様の技もそれと同様なのですよ。」

「女神様と……」

「世を愛してくださっている方と同様…」

 うっとりする様な声がちらほら聞こえてきていて、どれだけの神官達がこの話に集中しているのかを知ることができた。

「ええ、そうです。女神のを御使様はで行ったのです。」

 室内が感嘆の声の嵐で包まれていく。

 ん……?

 大人しく聞いている俺の頭の中にここで疑問が浮かび上がる。俺ははっきり言って神殿の教えを詳しくは知らない。貴族にも成り立てで取り敢えずは一般教養をと叩き込んできたから。だから大神官が言う愛の技って何?ねぇ、何?まさかとは思うけれども…さっきしていたあれこれとかのことを指すのでしょうか? 
 すやすやと寝ていると思われている俺の背中は羞恥のためにジンワリと汗が出て来た……

「愛の技は自己犠牲の技でもありますね…シハル大神官様、御使様はお倒れになる程のものを?」

「ええ…それはもう…素晴らしいものでした。」

 やめて……何を言い出す気だよ…?

「大神官様が見届けられたのですね!?この時代に生まれ、神官になれた私達はなんと恵まれていることでしょうか。」

「本当に、女神には感謝しか無いですね。」

 大神官の腕に抱かれた俺は固まったまま動けない。そのままの俺の額に、あろうことか大神官は唇を落とした………

「おお!シハル大神官様が敬愛の印を!」

「なんという事でしょう!国王陛下にもお与えにならなかったのに…!」

「流石は…御使様です…!!」

「さあ、諸君!我らも我らの使命を果たそう!大神官様にの証を頂ける様に!」

「「「はい!!」」」

 会議室にいる神官達が一致団結して受け応える様は、迫力がある。普段はおとなしい感じで、物静かな方々なのに…敬愛…?何が欲しくて、大神官の口付けなんだよ?

 意味がさっぱり分からない俺には、これ以上大神官が余計な事をしない様にと必死に心の中で祈りながら、ここ一番の寝たふりを発動させている。御使の技じゃなくて、狸寝入りの技だ……けれども顔が赤くなっているだろうから、きっと大神官にはバレている……

「さあ!午後からの奉仕にも力を入れましょう!きっと女神は見てくれておられますから!」

 大神官の最もらしいこの言葉で、衆人環視に晒されてしまった俺の晒し者タイムも終わりを告げるんだ。今の会議で、ほぼ全部の神官に顔がバレたじゃ無いか…本気で泣いてしまいたい…………




「ふふふ…どうです?我が神殿の神官達は頼りになりそうでしょう?」
  
 何を持って魔王がそんなことを……あの辱めの会議が終われば、また俺は大神官の腕に抱かれたまま、大神官の執務室に帰ってきた。御使様のお部屋を是非とも用意しまょうと再度持ち上がった案は、まだ状態が安定しないからと言う大神官の一言で却下されてしまう………

「…………………!!」

 恥ずかしさのために、怒りでプルプルしている俺を一向に離さずに笑顔でいられるその神経は、確かに常人のものじゃないな!!

「ほら~だから言ったではありませんか…大神官様…御使様は絶対に怒るって………」

 この魔王の前でカーペ君だけが俺の心を汲んでくれる…!もう、まだ少年と言える年齢だろうに、全力で頼ってしまいたくなるくらい、ちゃんと汲んでくれてる!

「カーペ…………」

「あぁ、もう………御使様、すみませんが、少し外しますね?」

「え!?」

 この部屋で唯一、まともな神経の持ち主だと思っているのに、そのカーペ君が居なくなったらまた、大神官、もう魔王でいいや、と一緒………

「おや?何か不都合でも?」

 穏やかに微笑むその微笑みが、その表情の通りではないことを知っているので、俺は思いっきり顔を顰めてしまった。

「はぁぁぁ…カーペ…早くなさい。消しますよ?」

 ちょっ………こわ……怖い、カーペ君になんてことを…!

「わかりました。大神官様。外します。では、失礼します。」

 ああ!カーペ君!!

 魔王の圧に押されたのか、カーペ君はあっさりと執務室から出て行ってしまった。

「全く、貴方は…私を嫉妬で焼き殺す気ですか?」

 嫉妬って言っている割には、頬を赤らめた大神官の姿のままの魔王は酷く嬉しそうに微笑むのは何故だろうか…












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