聖石を拾った村人Aに付いてきたのが魔王の溺愛

小葉石

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魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる

25、微睡の中では 1

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 ことが終わって、案の定意識を飛ばした俺は、大神官に綺麗にしてもらった後にもまだ膝の上に抱っこされている。あの後、ソファーと言う狭い場所にもかかわらず、押し倒されたままされて、後ろからされて、座ったままされて…とこの辺くらいまでは記憶にあるのだが……もう、今は指の一本も動かしたくない程身体がしんどい…
小さな声でカーペ君と大神官が話しているのは聞こえているが、疲労で眠気が酷くて、夢の中の出来事の様だ。

「もう~主人!!何も椅子の上ですることは無かったでしょう?」

 なんだかカーペ君はプリプリと怒っている。

「なんです?私がちゃんと綺麗にしたでしょう?」

「ええ、嬉々としてされているのは見ていましたけど、御使様…かなりお辛そうでしたよ?」

「大丈夫でしょう?ルアンには女神ルシェーラの加護がありますからね。通常の人間よりも丈夫にはできていますよ。」

 うぇ……と、カーペ君の呻き声が聞こえる。

「それでもですよ!大切な方なんだったら大事にしないと!いつか愛想を尽かされても知りませんからね?」

「ふふ…愛想尽かされようとも、契約の証なのだから…女神ルシェーラはこれを守るでしょう。」

 緩やかに逞しい腕に抱き止められているのは、酷く気持ちがいい。人肌の体温がそうさせているのかとても落ち着くし、疲れた身体に程よい眠気を運んできてくれる。大神官の大きな手は乱れてしまった俺の髪を優しく整えてくれている様なんだが、そんな気遣い見せるくらいならば最初からこんな所で襲わないで欲しい…!

「さぁ!主人、どうするんです?今日の仕事は?まさか御使様をその様に抱きしめたまま神殿内を巡るわけではありませんよね?」

「あぁ!それは良いですね?カーペ!良い案です!そうすればルアンは完全に私の庇護の元にいることが分かりますから、虫除けにもなるでしょう。」

 本気か冗談か、大神官は俺を横抱きにしてスックと立ち上がる。
 フワリと身体が浮いた感じがして、あぁ、今運ばれているんだと知ることができた。

「うわぁ!主人!やめておいた方が!!御使様の性格を考えますと、後から非常に恨まれることにもなりかねませんよ!?」

「ああ……良いですね、カーペ。それならばルアンの睨みつける瞳も、侮辱に満ちた瞳も、更には増悪に満ちた瞳も私を捉えて映し出すのでしょう?あの方から貰えなかった全てを私は貰えるのですから、これ以上の喜びはないでしょう。」

「うわぁ!主人!いけませんってば!そうやって御使様を手元に置いて自慢して、人間の王を刺激するつもりではないですよね?」

 長らく戦争を仕掛けてはいないものの、かつて人間とは命をかけて戦った敵同士なのだから。少しくらい刺激して可愛がったって良いだろうとでも魔王は思っていそうだ。

「そんな事をしたら!本気で女神に愛想をつかれますよ!折角手に入れた御使様だって取り上げられるかも知れないんですからね!?」

「おや、それは困りますねぇ?これはもうの者ですから…」

 ニッコリと人の良い笑みを浮かべる大神官の瞳は不敵な怪しい光を帯びている。そのままスタスタと大会議室まで歩いて行った。

「あ~ぁ……し~らないっと……」

 物凄く複雑そうな表情のルーペ君が渋々ながら大神官の後に付いてきて、会議室のドアを開けた。室内に一歩入ると、集まっている神官達は皆一斉に無言で立ち上がって、大神官に礼を取る。

「座りなさい。」

 大きな室内に、大神官の凛とした声が静かに響く。そして、大神官の腕に横抱きにされた俺を見て、一瞬だが、会議室がざわついた様だ。

「ご苦労様です、皆さん。まずは午後の会議に遅れた事を謝罪いたしましょう。そして、私はここに、御使様が再び魔王封印をかけてくださった事を宣言致します!」

「おお!」

「やはり、その方は御使様でございましたか!」

「素晴らしい事でございます!」

「して、御使様は如何しましたので?」

 ずっと大神官の腕に抱かれて意識がない俺を心配する声も上がる。

「大事ありません。の使いすぎではないかと…」

 いけしゃあしゃあと大神官はそう言ってのけた…ここで意識がなくて良かった……

 大神官が宣言後、わあぁ、という歓声が室内いっぱいに響き渡る。ここまで大きな騒ぎになれば、眠気からは呼び戻されるもので、俺の意識は浮上していた。
 そして、神官といえば品性良好な方々と思っていたけれども…町にいたやる気の無い神官もいるにはいるが…こんなに大きな声で感情表現するんだなぁと、恥ずかしすぎるので目を瞑っていてよかったなぁと、ぼんやりと考えながら大神官に抱き続けられていたんだ。

「大神官様!御使様の御技はどの様なものでしょうか?」

 まだ若そうな神官が、ワクワクとした声を隠しもせずにそう、聞いてきた。





 




















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