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魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる
17、封印とは 3
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「当たり前ではないですか。貴方は私の封印の鍵の様なものだ。貴方がいなければ私の封印など、意味がないのですから…」
後ろから大神官はそっと耳元に口を近づけてそんな事をコソリと言ってくる。後ろにはカーペ君が従順な犬の様に張り付いているのに…!
「ばっ!あんた、馬鹿なのか!封印とかそんな事、人前でペラペラ喋ったら…カーペ君が怖がるじゃないか!?大神官っていう自覚をもっとしっかり持って!!」
もう大神官だって魔王だって構わないと、必死に声を落として俺は大神官に抗議する。カーペ君は本当に良く働くいい子であった。良い所の家に養子にでも貰ってもらい、可愛がられて幸せに暮らして欲しいと思う程には、物凄く世話になっている。それなのに、封印やら何やらとここで話すには少々敏感にもなろうと言う単語を出して…カーペ君が巻き込まれて酷い事にでもなったら…そんな事を考えてたら涙がジワッと出そうになる…今の俺の状況だって受け入れ難いのに、完全に心が病んでしまうかも知れない……
「………ふふ!貴方は本当に可愛いですね!!」
一瞬、ポカンと動きが止まった大神官だったけれども、次の瞬間には満面の笑顔で相好を崩し、後ろから俺にギュッと抱きついてきた。
「うわぁ!だから!!違うんだよ、カーペ君!大神官様、普通はこんな事しませんよね?ね?しませんよね?」
カーペ君が、見ている!違う!これは何でもないんだ!!何やら勘繰られても誤解を招いても面白くはないし、何よりも大神官の真実の姿が魔王なんて事がバレるわけにはいかないだろう?
「ルアン、良いのですよ?カーペの事は置き物か何かだとでも思っておいてください。」
抱きついてくる腕の力を緩めようともしないで、大神官はヒソヒソ声で話す俺に合わせて、わざとらしく耳元で話してくる。
何にせよ、置物は人の世話なんてできないししないでしょう!?きっと大神官が魔族だからこんな人を人とも思わない発言をするんだ!
「構いませんよ。御使様!主人と貴方様に仕える事が僕の仕事ですから!」
さも当然と、この様な状況に疑問を持たず、あっさりと認めてしまっているカーペ君の懐の大きさに脱帽だ……
「ほら、言いましたでしょう?カーペはしっかりとしているのです…それよりも…あぁ、どうかルアン…この衣装を着てみてください。あ!直ぐに働けというのではないのです。時々これを着て私の側に居てさえくれれば良いのですから。」
それが大神官補佐の役割?ただそこに立っていれば良いと?貴族家の義理の息子になってから死に物狂いで勉強した結果、ただ立っているだけの仕事なんてないという事はわかっているのに…
「そ、そんなの仕事の内に入りませんよ!仕事をしなくてはいけないなら、そうだ!外でして来ます!あぁ!畑がありましたね?私、これでも農民だったのですから!」
早くこの状況を打破したくて心に思いつくままに口に出す。
「おや、庭を見たのですか?」
「はい!ね?カーペ君!昨日一緒に行きましたよね?」
「はい。庭に出てみましたところ、御使様は物凄いスピードで畑を耕されてしまわれましたので新しい仕事がないんです…」
大変申し訳ありません、とカーペ君にペコリと頷かれてしまった。
「貴方は働き者なんですねぇ!」
「ええ、それはもう!だから、仕事を!?」
待って?仕事ってこの大神殿で何すれば?この衣装を着て、お飾り人形の様に過ごせと?
「貴方の仕事は私の側にいる事です。このままここにずっとですよ?それが女神との契約ですから………」
うっとりとするほどに良い声で、サラリと言って下さるのですね……もう、今、抵抗できる力がこれ以上ありません…昨日の今日で、まだ俺の体は痛いのです……何でこんな事に……信じられない様な魔王の話からしたら女神様に恨み言をぶつけてしまいそうだけれども、豊穣の女神として農民達の拠り所だったんだから…そういう訳にもいかないだろうし……
ガックリと大神官の腕に抱かれた俺から力が抜けたのを確認して、大神官は俺を抱え直してニコニコしている。
「カーペ、ルアンの着替えを手伝って上げなさい。」
「はい!大神官様!」
カーペ君の明るい声が二つ返事で答えるのを聞いて、今朝の俺は抵抗を諦めました………そして大人しくカーペ君の手伝いを受ける事になり、用意された衣装に袖を通した。サイズもピッタリ…で思ったよりも動きやすくて肩は凝らなそうだ。でも、やっぱり姿見に写っている自分にはピッタリだけれども、それを後ろで見つめながら満足そうにニコニコしている二人の様に、自分に似合っているとは思わないんだが……
「ふふふ…まるで、ルシェーラが私の目の前にいる様ですよ?」
満足気に大神官はそんな事を言う。
「ええ、本当に!下々の者に見せるのが惜しゅうございますね。」
「そうですね…では、このまま部屋にいてもらいましょうか?」
「監禁、ですか?大神官様…それはちょっと…」
御使様がお可哀想ですよ、と可愛い顔をしたカーぺ君が少しだけ困った顔をして苦笑する。
監禁……?ゾワリ…と背筋に悪寒が走るけれども、そう、目の前にいるこいつは魔王だった…………
後ろから大神官はそっと耳元に口を近づけてそんな事をコソリと言ってくる。後ろにはカーペ君が従順な犬の様に張り付いているのに…!
「ばっ!あんた、馬鹿なのか!封印とかそんな事、人前でペラペラ喋ったら…カーペ君が怖がるじゃないか!?大神官っていう自覚をもっとしっかり持って!!」
もう大神官だって魔王だって構わないと、必死に声を落として俺は大神官に抗議する。カーペ君は本当に良く働くいい子であった。良い所の家に養子にでも貰ってもらい、可愛がられて幸せに暮らして欲しいと思う程には、物凄く世話になっている。それなのに、封印やら何やらとここで話すには少々敏感にもなろうと言う単語を出して…カーペ君が巻き込まれて酷い事にでもなったら…そんな事を考えてたら涙がジワッと出そうになる…今の俺の状況だって受け入れ難いのに、完全に心が病んでしまうかも知れない……
「………ふふ!貴方は本当に可愛いですね!!」
一瞬、ポカンと動きが止まった大神官だったけれども、次の瞬間には満面の笑顔で相好を崩し、後ろから俺にギュッと抱きついてきた。
「うわぁ!だから!!違うんだよ、カーペ君!大神官様、普通はこんな事しませんよね?ね?しませんよね?」
カーペ君が、見ている!違う!これは何でもないんだ!!何やら勘繰られても誤解を招いても面白くはないし、何よりも大神官の真実の姿が魔王なんて事がバレるわけにはいかないだろう?
「ルアン、良いのですよ?カーペの事は置き物か何かだとでも思っておいてください。」
抱きついてくる腕の力を緩めようともしないで、大神官はヒソヒソ声で話す俺に合わせて、わざとらしく耳元で話してくる。
何にせよ、置物は人の世話なんてできないししないでしょう!?きっと大神官が魔族だからこんな人を人とも思わない発言をするんだ!
「構いませんよ。御使様!主人と貴方様に仕える事が僕の仕事ですから!」
さも当然と、この様な状況に疑問を持たず、あっさりと認めてしまっているカーペ君の懐の大きさに脱帽だ……
「ほら、言いましたでしょう?カーペはしっかりとしているのです…それよりも…あぁ、どうかルアン…この衣装を着てみてください。あ!直ぐに働けというのではないのです。時々これを着て私の側に居てさえくれれば良いのですから。」
それが大神官補佐の役割?ただそこに立っていれば良いと?貴族家の義理の息子になってから死に物狂いで勉強した結果、ただ立っているだけの仕事なんてないという事はわかっているのに…
「そ、そんなの仕事の内に入りませんよ!仕事をしなくてはいけないなら、そうだ!外でして来ます!あぁ!畑がありましたね?私、これでも農民だったのですから!」
早くこの状況を打破したくて心に思いつくままに口に出す。
「おや、庭を見たのですか?」
「はい!ね?カーペ君!昨日一緒に行きましたよね?」
「はい。庭に出てみましたところ、御使様は物凄いスピードで畑を耕されてしまわれましたので新しい仕事がないんです…」
大変申し訳ありません、とカーペ君にペコリと頷かれてしまった。
「貴方は働き者なんですねぇ!」
「ええ、それはもう!だから、仕事を!?」
待って?仕事ってこの大神殿で何すれば?この衣装を着て、お飾り人形の様に過ごせと?
「貴方の仕事は私の側にいる事です。このままここにずっとですよ?それが女神との契約ですから………」
うっとりとするほどに良い声で、サラリと言って下さるのですね……もう、今、抵抗できる力がこれ以上ありません…昨日の今日で、まだ俺の体は痛いのです……何でこんな事に……信じられない様な魔王の話からしたら女神様に恨み言をぶつけてしまいそうだけれども、豊穣の女神として農民達の拠り所だったんだから…そういう訳にもいかないだろうし……
ガックリと大神官の腕に抱かれた俺から力が抜けたのを確認して、大神官は俺を抱え直してニコニコしている。
「カーペ、ルアンの着替えを手伝って上げなさい。」
「はい!大神官様!」
カーペ君の明るい声が二つ返事で答えるのを聞いて、今朝の俺は抵抗を諦めました………そして大人しくカーペ君の手伝いを受ける事になり、用意された衣装に袖を通した。サイズもピッタリ…で思ったよりも動きやすくて肩は凝らなそうだ。でも、やっぱり姿見に写っている自分にはピッタリだけれども、それを後ろで見つめながら満足そうにニコニコしている二人の様に、自分に似合っているとは思わないんだが……
「ふふふ…まるで、ルシェーラが私の目の前にいる様ですよ?」
満足気に大神官はそんな事を言う。
「ええ、本当に!下々の者に見せるのが惜しゅうございますね。」
「そうですね…では、このまま部屋にいてもらいましょうか?」
「監禁、ですか?大神官様…それはちょっと…」
御使様がお可哀想ですよ、と可愛い顔をしたカーぺ君が少しだけ困った顔をして苦笑する。
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