聖石を拾った村人Aに付いてきたのが魔王の溺愛

小葉石

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魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる

14、女神との約束 3

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「ふむ…私としても、いつものルアンが見たいのです。傲ることなく無邪気で元気な貴方がね?その他のの事はいろいろ知っていますし?今日の様な姿のルアンは私だけが知っていればいいものですからね。」

 フルフルと首を振って触らないでアピールをしている俺を苦笑しながらシハル大神官は優しく見つめてくる。

 この人、本当に魔族かって思うほどに優しい目線で…

「触りますよ?」

 そう宣言して身構えた俺。シハル大神官はそんな俺の額をチョン、と触っていいですよ、と声をかけて来た。

「もう?」

「ええ、不快な所は?」

 何をされたか分からない、一瞬の出来事で終わった。

「不快な所…ですね?…ない、みたい?」

 掛け物が触っても疼く様な感覚が上がって来ていたけれど、それがない。

「だい、丈夫みたいです。」

「そう、それは良かったです。さ、食事にしましょう?」

 今度こそシハル大神官は俺を抱きしめる様にして抱え上げた。自分で歩きます!と言いたい所だけれど、不快なあの感覚が無くなっただけで、身体のあちこちはまだギシギシ軋んで痛くて動けない……

「何を、したんです?」

 シハル大神官の膝の上に座る様な形で椅子に座る。

 これは、一緒に食事をする気?

「ルシェーラの干渉を少し弱めたんですよ。は加減なんて考えてなかったみたいですからね?」

 ゾワッ……加減しない神の力って?どんなもん……?

「人間に、そんな事を……?」

 していいものなのか……

「ま、ここは彼女の領域ですし?彼女にその権限はあるでしょうね?けれどルアン。貴方のことに関しての権限はルシェーラにはありませんよ?」

「ど、どうして?」

 俺は、神から見放されてる…?今までは善良とは言わないけれども、普通の農民と思っていたのに…あ、ここに来て貴族になったけれど…
 シハル大神官は話しながらも、パンを千切り、肉を切り分け、サラダをフォークに刺して俺の口にと持ってくる。本当はこんな事、恥ずかしいから嫌なのだ。だってもうすぐ成人する男がだよ?人の膝の上に乗って、食事をするってどう?それよりも、なによりも、この人、人でも無いし…魔族だ…
 けれど、差し出された食事に罪はないし、身体は痛くて思う様に動かせないしで、俺はひたすら口を開ける。

「其方は私がルシェーラから貰った、契約の証だ。」

「契約……」

「そう。が、ここに封じられてやる代わりに、ルシェーラを望んだのです。」

 ニッコリ微笑む大神官の瞳が一瞬仄暗い漆黒に染まる…そしてすぐに薄茶の優しい色を見せる。

「人間界を滅ぼさない代わりに、が欲しい、とルシェーラに縋り付いたんですよ。」

 ニコニコと微笑みを湛えながら、物凄い告白をしてくる。

「め、女神様が欲しい………」

「ええ、衝撃的でしたね。私にとっては初めての一目惚れでした!」

 今までで一番爽やかないい笑顔でシハル大神官はそう宣った。

「一目、惚れ?魔族が、神に…?」

 それこそ不敬と一刀両断にされかねないのでは?シハル大神官の話を聞けば聞くほど、頭が混乱してくる様な気がする。

「ああ…言ってなかったですね?ルアン?」

 また、シハル大神官の瞳が暗くなる。その一瞬の内に、目の前が黒で染まった…正しくはシハル大神官の魔族の黒と神官服の白で目の前は白黒だ………

 もう何度か見ている瞳と髪の漆黒と、頭から生える二本の角、背中には初めて見る闇より深い闇を集めた様な漆黒の二枚の大きな羽…そして、ジャリリと足元から聞こえる音を辿れば黒々と照り輝く鱗に包まれた尾が、自由気ままに床を這っている。顔の造形と短い後ろ髪、これだけが大神官を思わせる面影だ……

「これが我の本来の姿だ。ここでは狭くて羽を出す事は少ないがね?」

 この、姿って……そして、女神に、その一行に封じられた、者って……

「気が付いたか?我は魔族の中の王だ。」

 魔王…!!!

 ビックリしすぎて息を止めてしまった俺の頬を、黒く美しい長い爪の生えた魔王の手がそっと撫でる。不思議なほどに、その感覚が人間に擬態している時と変わらなくて、ホッと安心感すら生まれてくる。

「名を、イグショールと言う。」

 うっとりと俺を見つめながら、楽しそうに名乗りを上げる魔王イグショール…に何を言えば良いのか、見当もつかない。

「ルアン。其方は女神の一部だ。まぁ、気まぐれで様なものかもしれないが、我には其方で十分よ。」



 そう、不思議と我は満足している。あの傲慢で、プライドの塊の様な信じられないほど美しい天の女神と瓜二つの者をこの手に抱けるのだから…
 は何をしていても可愛らしく、素直で、美しい外見に良くあった美しい心を持っている。天からルシェーラを引き摺り下ろす事は叶わなくても、これは幻の様な者かも知れなくても、触れて、共にいられるこの一時に大いに満足している………












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