22 / 63
魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる
11、貴方は誰? 4
しおりを挟む
「では、ルアン…?いけない子だな…?そんな我儘を言うなんて…」
ゾク……………
昨日と同じ様な甘く低い声……そんな声で言われても、女神様のお名前を汚して良いはずがないでしょう!?それに、これは我儘じゃなくって人間なら神への畏怖は持たなくちゃいけないと思うし……!
そもそも、俺の我儘は全て聞いてくれるんじゃなかった?
あまりにも甘過ぎる声が怖くて、カーペ君に言い付けてあるあれこれを引っ張り出して反論する気も起きない……
ギシリ……こんもりと掛け物に籠った俺の両側に、きっと大神官様は両手を突いた。俺の大腿両側には、膝だろう……
ドサリ……丸まった足元のその先に、何か重い物が置かれた様でベッドに振動が伝わってくる。それが、ゾリゾリとベッドの上を右往左往している様な、音がする………
「なぜ、夕餉を食べなかった?もしかして、メニューが気に入らなかったのか?ならば、カーペを罰しようか?」
は?カーペ君、関係ないですよね?
何を言い出すかと思えば、全く関係無いどころか親身になってあれこれ尽くしてくれているカーペ君に在らぬ罰がいくの?そもそも罰せられる様な事してないよ!
本当にそんなこと言われたら余りにもカーペ君が不憫と思い、ガバッと布団を跳ね除け………
「貴方……誰…?」
思いの外、間抜けな質問をしたものだ…けれど、これが素直に出て来た俺の感想だ。
目の前には、漆黒の瞳…それも吸い込まれそうな濃さの…美しく整った大神官シハル様と同じ造形の顔にも瞳と同じ漆黒の絹の様な髪がかかる…形が良い耳の上からはうねる二本の角が、天に向かって聳え立ち、俺を逃すまいと笑みを浮かべて覆いかぶさってくる!
「釣れないな?釣れなさすぎやしないか?ルアン?」
俺が気にしているからか、シハル様は女神の名前を出さないでくれた。
「だって…!昨日………」
そう、昨日会ったばかりだ。それも、こんな異形な姿を通常の精神状態の時に見てない!
やはり………魔族……
俺は恐怖のままに下へずり下がって逃げようとする。けれど……足に…は…確かに人の足では無い何かがあたる……
「ルアン……いや、ルシェーラが言ったのだぞ?其方をくれると?お前はどうやら憶えていないようだがな?」
ずり下がる俺を、ヒョイっと抱え上げて、こっちが硬直している間に、何故だか、魔族の膝の上に乗せられる形で座らされている…魔族の足の横からは、蛇?蛇なのか…?蛇にしては少し太い様な、鱗が付いている尾のようなものが見えていて……
昨日の俺……良く正気でいられたな?
自分で自分を客観視して驚いてしまう。きっと今はそんな自虐的な思考に陥っている場合では無いんだろうけれども…あまりにも考えたくなくて、思考が彷徨う…
「ふん…傲慢なあいつのやりそうな事だ。この姿形は瓜二つ……しかし、中に記憶は残さないとは……」
憎まれ口を叩きながらも、シハル様は酷く楽しそうだ。大神官様のお顔なのに、色や言葉遣いまで全く違うと同一人物には見えないけれど…
「あぁ…その惚けたような顔…あの時のあなたからは想像もつかなくて…良いな…」
魔族の綺麗な顔に朱がさして、グッと色気が増した様な気がする。うっとりと俺の顔を見つめていたかと思うと、クイッと顎を掴み上げられ、そのまま唇が重なる…
「ふぅ…む!!」
ボゥッとシハル様の顔に見惚れていた自分が悪いのか、いきなり人にこんな事をしてくる魔族が悪いのか……そもそも魔族の流儀も常識も知らないんだから、全面的に俺は悪くは無い!
「ちょ、ちょっ、ちょっと!!待ってくださいって!昨日から一体なんなんですか!?」
昨日は散々人の身体を訳も分からぬうちに弄ってくれて…今日もなんて聞いてないし、いくら魔族が怖くても、流されるままに好きな様にはされたくない!
「ルアンが覚えていないのは無理もないが、お前はルシェーラなのだ。」
瞬間的に思わず勢いに任せて、俺は魔族の顔を思いっきり押し退けた。言うに事欠いて、この魔族は俺を女神ルシェーラ様だと言い切った…あれだぞ?女神と言えば天上に住む神の一人で、豊穣やら、愛やら、美やら、光やらこの世の素晴らしいものを一気に詰め込んだ様な、正に神そのもののような存在だぞ?俺と言ったらただの農民で、権力も能力も美もない、ただの人間のそれも男だぞ!?どこをどう辿ったら女神に行き着くんだ……!
と言うような事を、頭に思い浮かぶままに全部目の前の魔族に言い切ってしまった……言った後に、思いっきり後悔したんだよ…魔族相手に何やってんのって?俺ばかりじゃなく、カーペ君やらほかの神官達に、この大神殿に来訪して来ている人達に危害が加わるかも知れなかったのに…泣きそうになりながら、精一杯の虚勢を張って、ギッと睨みつけていたら、この魔族……肩を震わせて、笑ってやがる!!!
ゾク……………
昨日と同じ様な甘く低い声……そんな声で言われても、女神様のお名前を汚して良いはずがないでしょう!?それに、これは我儘じゃなくって人間なら神への畏怖は持たなくちゃいけないと思うし……!
そもそも、俺の我儘は全て聞いてくれるんじゃなかった?
あまりにも甘過ぎる声が怖くて、カーペ君に言い付けてあるあれこれを引っ張り出して反論する気も起きない……
ギシリ……こんもりと掛け物に籠った俺の両側に、きっと大神官様は両手を突いた。俺の大腿両側には、膝だろう……
ドサリ……丸まった足元のその先に、何か重い物が置かれた様でベッドに振動が伝わってくる。それが、ゾリゾリとベッドの上を右往左往している様な、音がする………
「なぜ、夕餉を食べなかった?もしかして、メニューが気に入らなかったのか?ならば、カーペを罰しようか?」
は?カーペ君、関係ないですよね?
何を言い出すかと思えば、全く関係無いどころか親身になってあれこれ尽くしてくれているカーペ君に在らぬ罰がいくの?そもそも罰せられる様な事してないよ!
本当にそんなこと言われたら余りにもカーペ君が不憫と思い、ガバッと布団を跳ね除け………
「貴方……誰…?」
思いの外、間抜けな質問をしたものだ…けれど、これが素直に出て来た俺の感想だ。
目の前には、漆黒の瞳…それも吸い込まれそうな濃さの…美しく整った大神官シハル様と同じ造形の顔にも瞳と同じ漆黒の絹の様な髪がかかる…形が良い耳の上からはうねる二本の角が、天に向かって聳え立ち、俺を逃すまいと笑みを浮かべて覆いかぶさってくる!
「釣れないな?釣れなさすぎやしないか?ルアン?」
俺が気にしているからか、シハル様は女神の名前を出さないでくれた。
「だって…!昨日………」
そう、昨日会ったばかりだ。それも、こんな異形な姿を通常の精神状態の時に見てない!
やはり………魔族……
俺は恐怖のままに下へずり下がって逃げようとする。けれど……足に…は…確かに人の足では無い何かがあたる……
「ルアン……いや、ルシェーラが言ったのだぞ?其方をくれると?お前はどうやら憶えていないようだがな?」
ずり下がる俺を、ヒョイっと抱え上げて、こっちが硬直している間に、何故だか、魔族の膝の上に乗せられる形で座らされている…魔族の足の横からは、蛇?蛇なのか…?蛇にしては少し太い様な、鱗が付いている尾のようなものが見えていて……
昨日の俺……良く正気でいられたな?
自分で自分を客観視して驚いてしまう。きっと今はそんな自虐的な思考に陥っている場合では無いんだろうけれども…あまりにも考えたくなくて、思考が彷徨う…
「ふん…傲慢なあいつのやりそうな事だ。この姿形は瓜二つ……しかし、中に記憶は残さないとは……」
憎まれ口を叩きながらも、シハル様は酷く楽しそうだ。大神官様のお顔なのに、色や言葉遣いまで全く違うと同一人物には見えないけれど…
「あぁ…その惚けたような顔…あの時のあなたからは想像もつかなくて…良いな…」
魔族の綺麗な顔に朱がさして、グッと色気が増した様な気がする。うっとりと俺の顔を見つめていたかと思うと、クイッと顎を掴み上げられ、そのまま唇が重なる…
「ふぅ…む!!」
ボゥッとシハル様の顔に見惚れていた自分が悪いのか、いきなり人にこんな事をしてくる魔族が悪いのか……そもそも魔族の流儀も常識も知らないんだから、全面的に俺は悪くは無い!
「ちょ、ちょっ、ちょっと!!待ってくださいって!昨日から一体なんなんですか!?」
昨日は散々人の身体を訳も分からぬうちに弄ってくれて…今日もなんて聞いてないし、いくら魔族が怖くても、流されるままに好きな様にはされたくない!
「ルアンが覚えていないのは無理もないが、お前はルシェーラなのだ。」
瞬間的に思わず勢いに任せて、俺は魔族の顔を思いっきり押し退けた。言うに事欠いて、この魔族は俺を女神ルシェーラ様だと言い切った…あれだぞ?女神と言えば天上に住む神の一人で、豊穣やら、愛やら、美やら、光やらこの世の素晴らしいものを一気に詰め込んだ様な、正に神そのもののような存在だぞ?俺と言ったらただの農民で、権力も能力も美もない、ただの人間のそれも男だぞ!?どこをどう辿ったら女神に行き着くんだ……!
と言うような事を、頭に思い浮かぶままに全部目の前の魔族に言い切ってしまった……言った後に、思いっきり後悔したんだよ…魔族相手に何やってんのって?俺ばかりじゃなく、カーペ君やらほかの神官達に、この大神殿に来訪して来ている人達に危害が加わるかも知れなかったのに…泣きそうになりながら、精一杯の虚勢を張って、ギッと睨みつけていたら、この魔族……肩を震わせて、笑ってやがる!!!
14
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
どこにでもある話と思ったら、まさか?
きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
────────────
※感想、いいね、お気に入り大歓迎です!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
前世である母国の召喚に巻き込まれた俺
るい
BL
国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
過食症の僕なんかが異世界に行ったって……
おがとま
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?!
ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。
凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる