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魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる
9、貴方は誰? 2
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下働きの少年はカーペと言うのだそう。フワフワの栗色の髪に、緑の瞳の可愛らしい顔立ちだ。下働きの者達は幼い頃から神殿に預けられて神官になるために修行を積むのだそうだ。神官様ってただ祈っていればいいのかと思っていた…それなりに大変そうだ。
俺よりも若いのにクルクルと働いて無駄が無い。お世話係としては大変優秀な子である。
「ありがとう!」
すっかりと汗でベタベタだった身体を洗い流してもらって、なぜだか沈んでいた気持ちが浮上する。浴室から戻れば部屋には食事まで用意してあって、至れり尽くせりだ。
「食堂には行かなくていいの?」
イリマウス侯爵の貴族邸には大きな食堂があって、マナーを身につけた後はそこで食事をしていたのだが…
「神官達が使用する食堂はございますが、御使様に使って頂くには相応しくないと大神官様が判断なさいました。」
「そう?」
もと、俺、農民なんだけど?ここにいる人たちよりもずっと身分も生活水準も下だと思うよ…?
「それに、御使様は何と言うか、大層魅力的な方だと言われていましたから…僕もお側で見て、納得いたしました。」
「何、それ?」
「ん~~、不思議なことに、一瞬ですと分からないんです…けれど、お側にいると、何というか、キラキラしいと言うか、神々しい?流石は御使様!と言う様な美しさが分かってきてしまうので…」
俺がキラキラしい?蜂蜜色の髪はごく普通だと思う。琥珀の瞳……これには昔からヤストに瞳の中に星が散ってるって言われていたけど、キラキラってこれか?
「神殿内は参拝者も大勢来ますから、なるべく人々と関わらない様にとのご配慮です。」
「外にも出ちゃダメ?」
「いいえ!神殿内にある内庭は神官達の居住域にありますから、お散歩できますよ!今でしたら、花が付いているものもありますでしょうし、畑も少しありますね。」
庭……畑があるのか…
「お食事が終わったら案内しましょうね?」
ニッコリとカーペは微笑んで食事の席まで俺の手を引いていく。用意された食事はどれも温かく、貴族邸で食べていた物よりは質素だが、村で食べていた物より内容が充実していて、食材も新鮮でどれも美味しかった。
どこも白く、流石は大神殿…大神官様の部屋を出ると、神官達の居住区間も神殿内と同じように白一色で綺麗に掃除が行き届いているのがよく分かった。大神官様のお部屋と同じ様なドアがいくつも並んでいる廊下があって、それぞれ全て神官の居室だとカーペ君は教えてくれる。その部屋の前に行き来できる廊下があり、中庭にはその通路のどこからでも出れる様になっていた。
「本当だ…畑がある……」
懐かしい風景。子供の頃から毎日見ていた土の景色に匂い…ホッと、心の底から呼吸ができる様な気持ちになるくらい、落ち着く香りだ。
「少し、土いじりしてもいい?」
俺に与えられた衣装はこれまた白だから、土なんて触った途端に汚れるかもしれないけれど、どうしても……
「はい。お好きになさってください。大神官様からはお一人で外に出る事と、危険な事をする以外は何も止められてはおりませんから。あ!御使様はお貴族様でいらっしゃいますよね?では、神官服はお気に召しませんでしょう?後で仕立て屋でも呼びましょう!」
何で今まで気が付かなかったんだ、と言う勢いでカーペが一気に捲し立てて、そのまま走って言付けに行きそうなので急いで止めた。
「わあ、待って、カーペ君!俺、これで十分だから!」
今来ている神官服も農民の時に比べたら上等な部類に入るから!!仕立て屋とか、要らない、要らない!!
なんでもそつなくサッとこなしてしまうカーペにかかれば、午後には大神官様のお部屋が、仕立て屋から何やらで物凄い事になってしまいそうだ。
贅沢がしたい訳じゃない!
「そうですか?大神官様からは我儘は何でも聞いてやる様にと伺っているのですが…」
カーペ君?何物凄く残念そうにしているんだい?だってここ神殿でしょう?信者さん達からの寄付で色々と賄っているのでは?大神官様もそう仰っていたでしょう?
「ふふふ…大丈夫ですよ?大神官様はかなり資産をお持ちですから!」
ニッコリと太陽の様に微笑んで、きっとこちらの心の負荷を軽くしようとしてくれているのだろうけれど、逆に胃が痛くなってきた様な気がする…
神殿には清貧ってなかったっけ?大神官様って資産、持てるの?
田舎の神殿は簡素な物だった。丸太を組み合わせてできた、丸太小屋みたいなものもあって、神殿とはほど遠いくらいだ。中央の神殿ともなると、なんか……見てはいけない、闇を感じる………。
俺よりも若いのにクルクルと働いて無駄が無い。お世話係としては大変優秀な子である。
「ありがとう!」
すっかりと汗でベタベタだった身体を洗い流してもらって、なぜだか沈んでいた気持ちが浮上する。浴室から戻れば部屋には食事まで用意してあって、至れり尽くせりだ。
「食堂には行かなくていいの?」
イリマウス侯爵の貴族邸には大きな食堂があって、マナーを身につけた後はそこで食事をしていたのだが…
「神官達が使用する食堂はございますが、御使様に使って頂くには相応しくないと大神官様が判断なさいました。」
「そう?」
もと、俺、農民なんだけど?ここにいる人たちよりもずっと身分も生活水準も下だと思うよ…?
「それに、御使様は何と言うか、大層魅力的な方だと言われていましたから…僕もお側で見て、納得いたしました。」
「何、それ?」
「ん~~、不思議なことに、一瞬ですと分からないんです…けれど、お側にいると、何というか、キラキラしいと言うか、神々しい?流石は御使様!と言う様な美しさが分かってきてしまうので…」
俺がキラキラしい?蜂蜜色の髪はごく普通だと思う。琥珀の瞳……これには昔からヤストに瞳の中に星が散ってるって言われていたけど、キラキラってこれか?
「神殿内は参拝者も大勢来ますから、なるべく人々と関わらない様にとのご配慮です。」
「外にも出ちゃダメ?」
「いいえ!神殿内にある内庭は神官達の居住域にありますから、お散歩できますよ!今でしたら、花が付いているものもありますでしょうし、畑も少しありますね。」
庭……畑があるのか…
「お食事が終わったら案内しましょうね?」
ニッコリとカーペは微笑んで食事の席まで俺の手を引いていく。用意された食事はどれも温かく、貴族邸で食べていた物よりは質素だが、村で食べていた物より内容が充実していて、食材も新鮮でどれも美味しかった。
どこも白く、流石は大神殿…大神官様の部屋を出ると、神官達の居住区間も神殿内と同じように白一色で綺麗に掃除が行き届いているのがよく分かった。大神官様のお部屋と同じ様なドアがいくつも並んでいる廊下があって、それぞれ全て神官の居室だとカーペ君は教えてくれる。その部屋の前に行き来できる廊下があり、中庭にはその通路のどこからでも出れる様になっていた。
「本当だ…畑がある……」
懐かしい風景。子供の頃から毎日見ていた土の景色に匂い…ホッと、心の底から呼吸ができる様な気持ちになるくらい、落ち着く香りだ。
「少し、土いじりしてもいい?」
俺に与えられた衣装はこれまた白だから、土なんて触った途端に汚れるかもしれないけれど、どうしても……
「はい。お好きになさってください。大神官様からはお一人で外に出る事と、危険な事をする以外は何も止められてはおりませんから。あ!御使様はお貴族様でいらっしゃいますよね?では、神官服はお気に召しませんでしょう?後で仕立て屋でも呼びましょう!」
何で今まで気が付かなかったんだ、と言う勢いでカーペが一気に捲し立てて、そのまま走って言付けに行きそうなので急いで止めた。
「わあ、待って、カーペ君!俺、これで十分だから!」
今来ている神官服も農民の時に比べたら上等な部類に入るから!!仕立て屋とか、要らない、要らない!!
なんでもそつなくサッとこなしてしまうカーペにかかれば、午後には大神官様のお部屋が、仕立て屋から何やらで物凄い事になってしまいそうだ。
贅沢がしたい訳じゃない!
「そうですか?大神官様からは我儘は何でも聞いてやる様にと伺っているのですが…」
カーペ君?何物凄く残念そうにしているんだい?だってここ神殿でしょう?信者さん達からの寄付で色々と賄っているのでは?大神官様もそう仰っていたでしょう?
「ふふふ…大丈夫ですよ?大神官様はかなり資産をお持ちですから!」
ニッコリと太陽の様に微笑んで、きっとこちらの心の負荷を軽くしようとしてくれているのだろうけれど、逆に胃が痛くなってきた様な気がする…
神殿には清貧ってなかったっけ?大神官様って資産、持てるの?
田舎の神殿は簡素な物だった。丸太を組み合わせてできた、丸太小屋みたいなものもあって、神殿とはほど遠いくらいだ。中央の神殿ともなると、なんか……見てはいけない、闇を感じる………。
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