聖石を拾った村人Aに付いてきたのが魔王の溺愛

小葉石

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魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる

3、どうやら本当に聖石の様です 3

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「ほぉ……その方が…?ふむ…なるほどな………」

 何かを確認して納得して腑に落ちた国王陛下の独り言…こちらには全くどういう事なのかわからないのですが、侯爵様やシハル大神官様の方を伺ってもよろしいでしょうか?頭を上げよ、と言われるがまま頭を上げたけれども、目の前にいる方は一番高貴な方で、こちらから話しかけるなどもっての外な方なので…だからじっと待つしかない。

「そう恐縮するでない。これでは、私がいじめている様ではないか?」

 少しだけ困ったようにニヤ、と笑われた国王陛下は、一気に人の良さそうなすこぶる顔の良いオジサンという感じに変わる…

「そんなにジロジロと見つめておられては、蛇に睨まれたカエルの如く、臣下は動くに動けませんでしょう?」

 柔らかくシハル大神官は陛下が単に見過ぎなんです、と国王陛下に釘を刺す。

「そうか…!それはこちらが無遠慮であった。まさか、私の代で女神の落とし物を見つける事ができるとは思わなんだから。」

 女神の落とし物、聖戦の折に失ったとされる聖石の事だ。

「あ、あの!それでしたら、こちらに!」

 俺は慌てない様に気をつけながら、胸ポケットにしまっておいた聖石をそっと引っ張り出す。裸のままではあまりにも無礼ではないかと言われた為、小さな絹の巾着に入れてしまっておいたのだ。

「おお、そうであった!どれ?」

 俺は進み出て、円卓の上、国王陛下のすぐ側に良く見える様にそっと差し出す。

「拝見いたしましょう…」

 この部屋には、俺とイリマウス侯爵様、国王陛下に、シハル大神官様の4人しかいない。聖石を探しているというのは大神官様になるのかな、最終的な確認者はシハル大神官様の様で、国王陛下は見届け人の様な立ち位置だろう。

「陛下、悪戯にお触りになりません様に…」

 既に手を伸ばして触れて見ようとしていたのだろう国王陛下の動きを、シハル大神官様は目敏く止める。

「いかんのか?」

 やや不服気に口を尖らせる様は、駄々っ子の様で少しだけ親近感が持てる。

は人を選びますので…」

「そうであったな…そこなルアンにしか触らせぬと聞いている。」
 
 急に目を上げて俺を見た国王陛下の視線は本当か、と問いただしてくる。

「はい、その通りでございます。私も領内にいる神官の前にて確認いたしました。ルアン以外が触れますと弾かれます。」

 侯爵様が見た事を証言してくれた。

「侯爵閣下、もう一度ルアン様に触れていただいても?」

 シハル大神官の勧めで俺はもう一度聖石に触る。と言っても、実の所俺自身もこの石が気になって、一人になった時なんてチョンチョン触っていたりするのだが、一度も弾かれた事はない。

「はい。ルアン。」

「はい。」

 侯爵様の促しの後に、俺はそっとけれどもしっかりと石に触っているのが見える様に触れてみる。

「おお……!」

 石は相変わらず不思議にキラキラと輝くばかりで、俺の手は弾かない。

「ではルアン様。私も触れても良いでしょうか?」

 シハル大神官が進み出る。

「はい。よろしくお願いいたします。」 

 そっと、触れた大神官の手は、バチッと言う音と共に見事に弾かれた。

「………?」
 
「おお!!誠に報告通りだ!なるほど……良いだろう…!ルアン、其方を女神の息吹に触れし者と認めよう!」

 こんなに簡単に、国王陛下のこの一言で俺は女神の使とまで言われ、身柄を大神殿預かりとされる事になった………

「良くぞ、ここまで運んでくれたものです。国王陛下、どうかルアン様のこの身は私の元で教育させてくださいませ。」

 女神の代理者ともなると、それなりの宗教的知識が必要になる、などの理由から大神官の元で勉強を勧められた。勉強するのは良いのだが俺はこれから神官の様に生涯過ごすのか、と更なる疑問が湧いて来る。

「聖石の発見は神殿の悲願でございました。この様に欠けも無く、傷もなく、見事なまでに輝いた状態で拝見出来るとは…待ち望んできた人々にとって、どれほどの慰めになる事でございましょうか……」

 しみじみと感極まるお言葉を大神官様は仰るけれども…すみません…それ聖石を、投げたり、捨てたり、落としたり、挙句の果てには叩き割ろうとしていた身の俺としては、申し訳ない気持ちでいっぱいです…………

「ふむ!大神官の元ならば一安心だ。ルアンよ、女神の使いとして、民を導く良き御使になるように。」

 俺が、御使……本人の意思、希望、承諾はどこにもないのだけれども、決定したようです………


















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