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聖石を拾ってしまった俺
11、神殿の存在 2
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女神の息吹を受けし者、イリマウス侯爵は俺に、と言うか俺という存在に物凄く執着してパパと呼ばせたがっているのは、より深く女神と繋がっている者を自分の妻の側に置きたかったからなんだろうか……こっちとしてはまだ、自分が女神のなんたらなんて自覚の字の字もないんだけど…それでもただの農民だった俺を、義理の息子にまでしちゃうんだから物凄い信仰心だ。もし俺が現れなかったら、侯爵はどうしてたんだろうか?もしかしたら本当に貴族の特権か何かで大神殿を移したりしてたのかな?
「……お義父上…」
ポツリと小さく呟いてみる…本当の親子の様な親愛とかは湧いてこないんだけれども…
「ま、御坊ちゃま…それを旦那様の前で仰ってさしあげては?」
「え!?」
聞かれてた!!一人で部屋を出たと思っていたら、カーシャさんも一緒だった。
「物凄く喜んで下さると思います。あの方は冷たそうに見えて、愛情豊かな方ですから…」
やっぱりそうなんだ……カーシャさん、あまり表情が動かないから何を考えているのか分かりにくいんだけど、こうやって必要なことは言葉にしてくれるから助かる…
「ですから、御坊ちゃまがどんな出自のお方でも大切にして下さいますわ。」
「はは…僕にはちょっと恐れ多いかな?」
なんと言っても産まれ出た所からして違うでしょう?
「そうでございますか?仲の良い親子になれると思いますのに…」
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ眉を下げてカーシャさんは凄く残念そうに溜息をついた。
「でも、御恩には答えないと行けないですから、ちゃんとやるべき事はやります。」
そう、なんと言っても侯爵は、孤児だった俺に書類上ではあるが家族を与えてくれて、衣食住には全く困らないここに住まわせてくれているんだから。後は、お行儀良く失敗しない様に、大神殿の大神官様にこの聖石を届ければ…どこからどう見ても今まで平凡な一農民だったのだから…ここに来てから磨きに磨かれたけれども…女神云々に程遠いっていうのは自他共に十分理解できることだし、もしかしたら大神官様にも受け入れられないと突っぱねられる事もあるだろうし…そうしたら、俺はまた村に帰るかなぁ…?帰して、くれるかな?
亡き奥方様への愛が重い侯爵様は、それから事あるごとにパパコールを発動するのだけれども、なんとなく、それらを躱している間にあっという間に王都に来てしまった……
王都…王城があって、大神殿があって、煌びやかな貴族たちの仰々しい屋敷があって…人々の家々が高い城壁で囲われている。王都自体が巨大な要塞みたいに見える。そんな所に人が…見た事ないくらいに沢山いて…
「ほぁぁぁぁぁ~~………」
まるで魂が抜け出て行くようなため息が止まらないのは仕方がないと思う…イリマウス侯爵家の豪華な馬車で揺られること数日間。道すがら侯爵は王都の様子をたくさん話聞かせてくれたし、王族達やら大神官の絵姿が載っている絵姿を渡されて、ちっとも退屈しない初旅行となったけれども、百聞は一見にしかず……聞いていたよりも、見たほうが100倍の理解は得られると実感した…!
王都に向かいながら見たものは、長閑な農地や剥き出しの土の道が舗装整備された大通りへと続いていき、ただの森林が街路樹と小洒落た住宅街へと変わっていく…道も家も違うならば、ただ道を歩いている人々の服装も、所作も、なんなら言葉も違うのではないかと思われるほどに、農村とは違う……
間の抜けたため息だか、感想だかを俺と侯爵と共に一緒に付いてきてくれたカーシャさんが咳払いで注意してくれているのだけど、それでも改められない程、世界が違った…
「ふふふ…いい反応をするね?」
少し渋い様な顔をしているカーシャさんとは別に侯爵は一人楽しそうにクスクスと笑みを隠さない。俺も笑われているのが分かっているけれど、あまりの驚きにそんな事構っていられない。口をポカンと開けたまま必死に馬車の外を見て回る俺に、侯爵は窓の外を指差して教えてくれる。
「見てごらん、ルアン。あれが本日訪問する大神殿だ。」
王都の入場門を通過して暫く中央に向かって馬車を走らせると真正面に見えてくる。白を基調とした壁が高々と聳え立ち、まるで絵本に出て来る白亜のお城だ……大神殿というより、外壁に意匠を凝らした巨大なお城、そのものだった………
「でか………」
「コホン…!」
「大きいですね?」
思わず、農民の頃のいつもの口調に戻ってしまう。それ位平常心を失ってたんだ。ここは農村地帯にある神殿とは比べ物にならない…それだけ、人々の信心深い事の現れなのだろうと思うと、侯爵の女神に対する執着も頷ける。俺達農民にとったら、女神に祈って毎日安全に過ごせて豊作であれば言うことなし。飢饉にならなければ万々歳!あと、娯楽の一部、という位置付けだしな…ここまでの何かを注いで、祈った事も奉仕した事もないし…ただただ、驚かされるばかりだ…
「……お義父上…」
ポツリと小さく呟いてみる…本当の親子の様な親愛とかは湧いてこないんだけれども…
「ま、御坊ちゃま…それを旦那様の前で仰ってさしあげては?」
「え!?」
聞かれてた!!一人で部屋を出たと思っていたら、カーシャさんも一緒だった。
「物凄く喜んで下さると思います。あの方は冷たそうに見えて、愛情豊かな方ですから…」
やっぱりそうなんだ……カーシャさん、あまり表情が動かないから何を考えているのか分かりにくいんだけど、こうやって必要なことは言葉にしてくれるから助かる…
「ですから、御坊ちゃまがどんな出自のお方でも大切にして下さいますわ。」
「はは…僕にはちょっと恐れ多いかな?」
なんと言っても産まれ出た所からして違うでしょう?
「そうでございますか?仲の良い親子になれると思いますのに…」
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ眉を下げてカーシャさんは凄く残念そうに溜息をついた。
「でも、御恩には答えないと行けないですから、ちゃんとやるべき事はやります。」
そう、なんと言っても侯爵は、孤児だった俺に書類上ではあるが家族を与えてくれて、衣食住には全く困らないここに住まわせてくれているんだから。後は、お行儀良く失敗しない様に、大神殿の大神官様にこの聖石を届ければ…どこからどう見ても今まで平凡な一農民だったのだから…ここに来てから磨きに磨かれたけれども…女神云々に程遠いっていうのは自他共に十分理解できることだし、もしかしたら大神官様にも受け入れられないと突っぱねられる事もあるだろうし…そうしたら、俺はまた村に帰るかなぁ…?帰して、くれるかな?
亡き奥方様への愛が重い侯爵様は、それから事あるごとにパパコールを発動するのだけれども、なんとなく、それらを躱している間にあっという間に王都に来てしまった……
王都…王城があって、大神殿があって、煌びやかな貴族たちの仰々しい屋敷があって…人々の家々が高い城壁で囲われている。王都自体が巨大な要塞みたいに見える。そんな所に人が…見た事ないくらいに沢山いて…
「ほぁぁぁぁぁ~~………」
まるで魂が抜け出て行くようなため息が止まらないのは仕方がないと思う…イリマウス侯爵家の豪華な馬車で揺られること数日間。道すがら侯爵は王都の様子をたくさん話聞かせてくれたし、王族達やら大神官の絵姿が載っている絵姿を渡されて、ちっとも退屈しない初旅行となったけれども、百聞は一見にしかず……聞いていたよりも、見たほうが100倍の理解は得られると実感した…!
王都に向かいながら見たものは、長閑な農地や剥き出しの土の道が舗装整備された大通りへと続いていき、ただの森林が街路樹と小洒落た住宅街へと変わっていく…道も家も違うならば、ただ道を歩いている人々の服装も、所作も、なんなら言葉も違うのではないかと思われるほどに、農村とは違う……
間の抜けたため息だか、感想だかを俺と侯爵と共に一緒に付いてきてくれたカーシャさんが咳払いで注意してくれているのだけど、それでも改められない程、世界が違った…
「ふふふ…いい反応をするね?」
少し渋い様な顔をしているカーシャさんとは別に侯爵は一人楽しそうにクスクスと笑みを隠さない。俺も笑われているのが分かっているけれど、あまりの驚きにそんな事構っていられない。口をポカンと開けたまま必死に馬車の外を見て回る俺に、侯爵は窓の外を指差して教えてくれる。
「見てごらん、ルアン。あれが本日訪問する大神殿だ。」
王都の入場門を通過して暫く中央に向かって馬車を走らせると真正面に見えてくる。白を基調とした壁が高々と聳え立ち、まるで絵本に出て来る白亜のお城だ……大神殿というより、外壁に意匠を凝らした巨大なお城、そのものだった………
「でか………」
「コホン…!」
「大きいですね?」
思わず、農民の頃のいつもの口調に戻ってしまう。それ位平常心を失ってたんだ。ここは農村地帯にある神殿とは比べ物にならない…それだけ、人々の信心深い事の現れなのだろうと思うと、侯爵の女神に対する執着も頷ける。俺達農民にとったら、女神に祈って毎日安全に過ごせて豊作であれば言うことなし。飢饉にならなければ万々歳!あと、娯楽の一部、という位置付けだしな…ここまでの何かを注いで、祈った事も奉仕した事もないし…ただただ、驚かされるばかりだ…
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