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聖石を拾ってしまった俺
5、やはり、アレのようです 1
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「馬鹿者!!何故、相談せんのじゃ!!」
御歳80になろうかと言う村長ははっきり言って物凄く怖い……子供の頃から悪戯をしては最終的に村長に怒られるのがパターンで、子供達ならば全員、キュッと縮こまるだろう……
「そ、相談って言っても……ただの石だと思ったし……」
て、俺が言う…
「ただの石が光るか!!」
そして、怒られる。
「行商の劇の石は光ってたし……」
ヤストも言う。
「アホか!!あれは、細工がしてあるからじゃろう!」
さらに、怒られる。
村長もしっかりと今年の出し物を堪能していたようで、俺達の言い訳なんて全部一蹴してくれた。
「だって、村長!そんな大事な石がこんなど田舎にあるなんて、そんな事誰も思わないだろう?」
「そうだ!何しても手元に帰ってくるし……ただ、もう、気持ち悪くって……」
そうなんだよ、手放したいと思っている俺達の意思を嘲笑うかのようにして、何をしても次の日にはちゃんと家に帰ってきてる。光る石を乗せるような大層な机でも無い、荒削りの木の机の上にチョコンと乗って……これを気持ち悪いと言わずになんと言うのだろうか?
「バッカモン!!!」
拳骨を喰らわせる勢いで村長が怒鳴る。非現実的な恐怖の前に現実の恐怖を突きつけてくれる村長に感謝だ。ルアン達は少しだけ落ち着きを取り戻せたのだから。
あぁ…懐かしいな…何かする度に何回こうやって怒られてたっけ?最初は隣村の柿を8歳の時に盗み食いした時だっけ……?
いつ終わるかわからないお説教に、遠くの記憶を呼び起こしてしまって、思わずクスリと笑い出しそうになるのをルアンは必死に押しとどめた。
「お前達だって嫌と言うほどに聞いておるじゃろう…?」
ひとしきり怒鳴り散らした村長はやれやれとその場に腰を下ろす。
村長が言いたい事は女神が残した伝説の石のことだ。そんな事はみんな頭の中ではわかっているだろう。けれども、その大層な伝説が目の前にあるなんて信じがたくて、信じたく無いと思う方が当たり前なんじゃ無いのだろうか?ともかく、当事者に関しては女神の息吹を吹き込まれた云々が重すぎる……
「なのに!それを無碍に扱う事は、女神の意志を踏み躙ることになるじゃろう?」
お怒りモードから切々と語り出すお説教モードへと村長の態度が変化する。
「良く考えてみるといい。それが本物であったなら、女神の遺物に不敬を働いた罪で、ここら一帯滅ぼし尽くされても仕方ないかもしれないのじゃぞ?」
女神様がどんなに恐ろしい方か分からないけれど、魔王からこの世界を救おうとしたと言うほどにこの世界を愛してくれているのじゃないのかな?石、粗末にしたらバチでも当たるのだろうか………
今更ながらにルアンとヤストの背中を寒気が走る。青くなった二人を見て説教が聞いたな、と村長は満足気である。
「良いか二人とも?これから町にある神殿に行く。」
村長は決定事項の様にそう宣言した。ここでウダウダとこの件に関して意見を述べているよりは、神殿の神官に確認してもらうのが手っ取り早いからだ。
村長の決定後、村を上げての行動は早かった。石を発見した第一発見者として、ルアンとヤストは神殿に送り込まれることとなる。神を祀る神殿に行くのだから二人とも身綺麗にされて、たった一枚のいっちょうらに着替えさせられて、村長一行と共に町の神殿まで出向いたのだ。
時折来る町の賑わいも人混みも変わり映えする事なく活気には満ちているのだが、地方の神殿はかなり質素であった。村の住民と同じ様に木で造られた大きな集会所の様な建物が神殿だ。大都市にでも行かなければ荘厳な神殿をお目にかかる事はまず無いだろう。そんな小さな神殿にも神官はいる。
村長率いる一団を戸惑いつつも迎えてくれた神官だが、ルアンが手に持つ光り輝く石を見ると、ある神官は恐れ慄き、ある神官は鼻で笑って村長達一行を追い返そうとさえした。神官であってもこの反応である。やはり、この聖石の信憑性は危ぶまれるのでは無いのだろうか……
偽物か何かであって欲しい訳なので………
けれども年老いた村長は頑として引かず、大神官への目通りを願った。
大神官とは王都の大神殿にいる最高位の神官のことだ。王都は国王や貴族達が集まり国を動かす中心でもある。そんな所に田舎出の農民達が押しかけた所で王都の門番に追い返されるのがオチだった。だから王都へ行くには何やら後ろ盾が必要であった。都市に住む者達ならば住民札、商人ならば商会加入書、貴族達でさえそれぞれの家の家紋を使用して身分を示すのが常識だ。この様な所にはただの農民ならば王都の中にさえ入れない。それなのに村長は王都の大神殿へとルアンの持つ石を持って行かせる様にと一歩も引かなかった。
「ん~~……そうですね。ここまでしっかりとした特徴がこの石にも出ておりますから……」
気が弱そうな神官の一人はほとほと困り果てている。片や頑固な強面爺いと、事なかれ主義の同僚の間で板挟み状態である……
田舎者の浅知恵で報奨金欲しさに、この様な酔狂な作り物をして持ってきたと思われても仕方がなかったかもしれない。けれどもこの石はルアン以外が触れると全ての者の手を弾くのだから、ただの作り物とも到底思えない。結果、ここでは判断できないと言う事なのだ。
「どうでしょう?領主様にお伺いを立てるのは?もし、見込みありとされたのならば領主様が大神殿へ紹介状を書いてくださるでしょうから。」
この神官の勧めで、産まれて初めての領主館への訪問となる。
御歳80になろうかと言う村長ははっきり言って物凄く怖い……子供の頃から悪戯をしては最終的に村長に怒られるのがパターンで、子供達ならば全員、キュッと縮こまるだろう……
「そ、相談って言っても……ただの石だと思ったし……」
て、俺が言う…
「ただの石が光るか!!」
そして、怒られる。
「行商の劇の石は光ってたし……」
ヤストも言う。
「アホか!!あれは、細工がしてあるからじゃろう!」
さらに、怒られる。
村長もしっかりと今年の出し物を堪能していたようで、俺達の言い訳なんて全部一蹴してくれた。
「だって、村長!そんな大事な石がこんなど田舎にあるなんて、そんな事誰も思わないだろう?」
「そうだ!何しても手元に帰ってくるし……ただ、もう、気持ち悪くって……」
そうなんだよ、手放したいと思っている俺達の意思を嘲笑うかのようにして、何をしても次の日にはちゃんと家に帰ってきてる。光る石を乗せるような大層な机でも無い、荒削りの木の机の上にチョコンと乗って……これを気持ち悪いと言わずになんと言うのだろうか?
「バッカモン!!!」
拳骨を喰らわせる勢いで村長が怒鳴る。非現実的な恐怖の前に現実の恐怖を突きつけてくれる村長に感謝だ。ルアン達は少しだけ落ち着きを取り戻せたのだから。
あぁ…懐かしいな…何かする度に何回こうやって怒られてたっけ?最初は隣村の柿を8歳の時に盗み食いした時だっけ……?
いつ終わるかわからないお説教に、遠くの記憶を呼び起こしてしまって、思わずクスリと笑い出しそうになるのをルアンは必死に押しとどめた。
「お前達だって嫌と言うほどに聞いておるじゃろう…?」
ひとしきり怒鳴り散らした村長はやれやれとその場に腰を下ろす。
村長が言いたい事は女神が残した伝説の石のことだ。そんな事はみんな頭の中ではわかっているだろう。けれども、その大層な伝説が目の前にあるなんて信じがたくて、信じたく無いと思う方が当たり前なんじゃ無いのだろうか?ともかく、当事者に関しては女神の息吹を吹き込まれた云々が重すぎる……
「なのに!それを無碍に扱う事は、女神の意志を踏み躙ることになるじゃろう?」
お怒りモードから切々と語り出すお説教モードへと村長の態度が変化する。
「良く考えてみるといい。それが本物であったなら、女神の遺物に不敬を働いた罪で、ここら一帯滅ぼし尽くされても仕方ないかもしれないのじゃぞ?」
女神様がどんなに恐ろしい方か分からないけれど、魔王からこの世界を救おうとしたと言うほどにこの世界を愛してくれているのじゃないのかな?石、粗末にしたらバチでも当たるのだろうか………
今更ながらにルアンとヤストの背中を寒気が走る。青くなった二人を見て説教が聞いたな、と村長は満足気である。
「良いか二人とも?これから町にある神殿に行く。」
村長は決定事項の様にそう宣言した。ここでウダウダとこの件に関して意見を述べているよりは、神殿の神官に確認してもらうのが手っ取り早いからだ。
村長の決定後、村を上げての行動は早かった。石を発見した第一発見者として、ルアンとヤストは神殿に送り込まれることとなる。神を祀る神殿に行くのだから二人とも身綺麗にされて、たった一枚のいっちょうらに着替えさせられて、村長一行と共に町の神殿まで出向いたのだ。
時折来る町の賑わいも人混みも変わり映えする事なく活気には満ちているのだが、地方の神殿はかなり質素であった。村の住民と同じ様に木で造られた大きな集会所の様な建物が神殿だ。大都市にでも行かなければ荘厳な神殿をお目にかかる事はまず無いだろう。そんな小さな神殿にも神官はいる。
村長率いる一団を戸惑いつつも迎えてくれた神官だが、ルアンが手に持つ光り輝く石を見ると、ある神官は恐れ慄き、ある神官は鼻で笑って村長達一行を追い返そうとさえした。神官であってもこの反応である。やはり、この聖石の信憑性は危ぶまれるのでは無いのだろうか……
偽物か何かであって欲しい訳なので………
けれども年老いた村長は頑として引かず、大神官への目通りを願った。
大神官とは王都の大神殿にいる最高位の神官のことだ。王都は国王や貴族達が集まり国を動かす中心でもある。そんな所に田舎出の農民達が押しかけた所で王都の門番に追い返されるのがオチだった。だから王都へ行くには何やら後ろ盾が必要であった。都市に住む者達ならば住民札、商人ならば商会加入書、貴族達でさえそれぞれの家の家紋を使用して身分を示すのが常識だ。この様な所にはただの農民ならば王都の中にさえ入れない。それなのに村長は王都の大神殿へとルアンの持つ石を持って行かせる様にと一歩も引かなかった。
「ん~~……そうですね。ここまでしっかりとした特徴がこの石にも出ておりますから……」
気が弱そうな神官の一人はほとほと困り果てている。片や頑固な強面爺いと、事なかれ主義の同僚の間で板挟み状態である……
田舎者の浅知恵で報奨金欲しさに、この様な酔狂な作り物をして持ってきたと思われても仕方がなかったかもしれない。けれどもこの石はルアン以外が触れると全ての者の手を弾くのだから、ただの作り物とも到底思えない。結果、ここでは判断できないと言う事なのだ。
「どうでしょう?領主様にお伺いを立てるのは?もし、見込みありとされたのならば領主様が大神殿へ紹介状を書いてくださるでしょうから。」
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