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後編

130 聖女の行く末 5

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「国を…ガーナードを出るのですか?」

 ドルン侯爵夫人は不安気だ。

 産まれてからガーナード国でしか生きた事がない生粋の貴族令嬢が、国を出て何をして生活すると言うのか……?

「私に、お任せ下さいませんでしょうか?」

 恭しくドルン侯爵夫妻の前で頭を下げるセルンシト国第二王子ケイトル。フィスティアを救出し、その後の療養や帰郷する今に至るまで、フィスティアに付き添って護ってきてくれた。 

「セルンシト国に…嫁ぐことになるのかね?」

 嫁ぐ……こんな時だと言うのに、フィスティアは頬が熱くなってきてしまう。

「…フィスティア嬢の望むままに…セルンシトでも勿論受け入れてくれますでしょうし、各国を渡り歩いても楽しそうですね?」

「世界中を見れますの?」

 国から出たことの無いフィスティアにとっては物凄い魅力的な話だ。

「ええ、お望みならばその様に…幸い私には各国に知り合いがおりますので、職にも困りません。」

「殿下が、働かれるのですか?」

 ドルン夫人には驚きの内容だった。セルンシト国の第二王子であるケイトルは然も当然という様に大きく肯いた。

「勿論ですよ?こう見えてガーナード城内でも働いておりました。私には兄上がおりますからね。私は自分の手で家族を養う覚悟でおります。それに…」

 家族………義務や、命令ではなくて、両親がいるこの家の様に愛情を持って家族としてセルンシト国第二王子ケイトルがフィスティアを迎えようとしているのが良く分かった。

「これから周辺国家には、同盟軍による駐屯地が置かれていく予定です。勿論、聖女殿を護るための同盟軍の同志達のです。ですから、どこへ行こうともご令嬢の御身の安全は護られるでしょう…フィスティア嬢、私と共に来て下さいますか?」

 何度か目かの申し出には、もうフィスティアの中では答えは出ている……

「父母が許して下さるのなら……」

「ケイトル王子殿下……セルンシト国にお帰りになった際には、お母上、ダライナ妃に宜しくお伝えくださいます様に…」

「お父様…?」

「フィスティア、お前はもう自由なんだよ?父、母の意見ではなくお前の心の向くままに行きなさい。まぁ、たまには帰って来てくれると嬉しいがね?」

「えぇ、勿論ですわ…えぇ……」

「私達が滞在する場所を同盟軍の者達に随時知らせておきましょう。そうすれば手紙を出すよりも早くに居場所が分かりますから。フィスティア嬢それで宜しいですか?あ、それと、私の事はもうケイトルと呼んで下さいますよね?」

 ニッコリ微笑むセルンシト国第二王子ケイトルは本当に嬉しそうにニコニコとしている。釣られてフィスティアも頬を赤らめつつニッコリと笑顔になってしまうほど…

「はい…!ケイトル様、宜しくお願い致します。」
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