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後編
129 聖女の行く末 4
しおりを挟む「ケ、ケイトル第二王子殿下……娘は、フィスティアはガーナードの、この国の王妃であって………」
「つい本日、国王陛下直々に離縁の宣言を頂きました。」
「り、離縁と!?」
「…………旦那様………こちらに……」
申し訳なさそうに、執事が一通の書状を持ってきた。そこにはガーナード国王家の紋章が……ドルン侯爵は執事から引ったくる様に書状を受け取ると、急いで中を確認した。
「ほ、本当だ……国王陛下の王命……だが、他言はするなとはどうしたわけか…?」
王の著名入りの離縁状だ。これでフィスティアはただの侯爵令嬢に戻るだけなのだが、王妃であった事は国中周知している事実で、まだ婚期にあったとしてもフィスティアにはもう縁談は来ないだろうと思うのが普通だった。他言不要と言われなくても人知れずにひっそりと暮らすしか無いのは目に見えている。わざわざ口止めの様な事を書いてくる王の真意は?
「大人しく、従われますか?」
ドルン侯爵家も今回の王ルワンの処断において国中に知れ渡る被害を受けている。愛娘は死んでしまうかの様な環境下に置かれもした。王がこう書き記したから、と素直にはなれないのではないか、とセルンシト国第二王子ケイトルは尋ねたのだ。
「お父様……」
父の苦しみ様を考えると、いくら王命であろうともすんなりと飲み込める様なものではないのかも知れない。
「お前が、聖女であるからだろうか…?」
ガーナード国は聖女の国だ。その聖女を離縁すると言う暴挙を王ルワンは突きつけてきた。王室が聖女を自ら切る様な愚策はどうあっても隠し通したいのだろう。
「大方……王妃は病床のままにされて、公の場には出さずに王家を守ろうと言うのだろう……?」
王家の余りの仕打ちにドルン侯爵は脱力さえ感じてしまう。
「フィスティアは王家に対し、そこまでの罪を働いたのかね?」
この度の騒動は王妃フィスティアが聖女の力を謀ったものと聞き及んでいる。が、この様に救出されて家にまで返してもらい、侯爵家の蟄居も解かれた、と言うことはその罪は赦されたのではないのか?
「侯爵閣下、事態は単純なものではなくなっております。フィスティア嬢は見事聖女のお力を発揮されました。それが大きな問題になっております。」
「聖女の力が問題に?」
王妃であったフィスティアが、死体置き場で使った死者復活の聖女の力は人を選ばず多国籍の者達に発揮された。今や周辺諸国にその力は響き渡り、この度の救出劇も聖女に助けられた者達が中心になって出来た同盟軍によるものである。もし、大勢の者達が証言している死体置き場にいた死にかけの聖女が、ガーナード国の王妃と分かったら………
「なるほど……王家の、国の存続も危ぶまれる…」
「そうです。国の安寧のためには、王妃には一生病床か、行方不明のままが都合が良いのです。」
セルンシト国第二王子ケイトルは続ける。
「ルワン国王陛下が内密に離縁をしたのは、人知れずに国を出る自由を与えられたと言う事ですよ。」
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