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後編

127 聖女の行く末 2

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 あまりの恥ずかしさに居た堪れず窓の外に目を向け続けるフィスティアの目に、もの凄いスピードで馬車に向かって走ってくる一頭の馬が見えた。

「…こちらに、向かってくる?」

「どうされました?」

 余りに熱心にフィスティアが窓の外を見て呟いたものだから、セルンシト国第二王子ケイトルもフィスティアの方の窓から外を見る。

「ああ…!お迎えかな?」

「迎え…?何処からです?」

「ふふ…何処からだと思いますか?」

 カンカン…

 楽しそうに笑いながらセルンシト国第二王子ケイトルは御者に停車するように合図を送る。

「殿下…?」

 ドルン領にはまだまだあるが、迎えに来たと言う馬に乗っている者にどうやら心当たりがあるらしい。

「多分、お会いしたいと思っていた人物だと思いますよ?」

 誰だろうとフィスティアが心で思い巡らせている間にも馬は馬車に迫ってくる。

「あっ!!」

 馬が近づくにつれて、馬上の上の者の顔もはっきりとしてきた。

「カイラス!!カイラスですわ!殿下!!」

 カイラス・ドルン…フィスティアの弟で婚姻前に会ったっきり、会う事叶わなかった実の弟…

 この馬車にフィスティアが乗っている事を知っていたのだろう。迷いなく近づいて、勢いよく馬から降りてくる。

「姉上!!姉上は居られますか!?」

「カイラス!」

 セルンシト国第二王子ケイトルはすぐ様馬車を開けてくれる。

「カイラス……!」

 久しぶりに見る顔に胸が詰まる……カイラスもフィスティアの顔を見たら何も言えなくなってしまった様に、ただ眉を寄せただけだった。

「………姉上……」

 それだけ言うとしっかりとフィスティアを抱きしめる。

「…カイラス…ごめんなさいね、貴方の婚姻をダメにしてしまったわ……」

 ずっと謝りたい事だった。仲の良い二人の婚姻を両家ばかりかどれだけ本人達も待ち望んでいただろうか……

「…何を!そんな事、少しも問題ではありませんよ!フランカは待っていてくれています!できた女ですから、一緒に姉上の身の上を案じておりました!」

「まぁ……そうだったの…?フランカ嬢にも謝らなきゃ……」

「まずは、家に帰ってからでしょう?父上も、母上も今か今かと待っております。今朝からずっと玄関ホールに陣取っていて、使用人達が迷惑そうにしておりましたよ?」

「そう…?皆んなお元気ですか…?変わりなく?」

「大丈夫です!さあ、姉上を解放してくださった恩人殿にも挨拶させて下さいませ!」

「そうでした…カイラス、こちらは…」

 姉弟の再会の挨拶が終わって、やっとフィスティアは同乗者を振り返った。

「私は、セルンシト国第二王子ケイトル・セルンシトと申します。この度は、姉君の解放心よりお喜び申し上げます。」

「え!セルンシト国の王子殿下!?」

 まさか、姉を連れて来てくれた本人が他国の王族とは思わなかったらしい。カイラスは綺麗な礼を取っているセルンシト国第二王子ケイトルに慌てて礼を返した。

「姉を救出して下さった先頭に立って下さっていたとか…手紙にありました。なんと礼を申して良いのか、言葉がありません。」

「聖女の為に尽力を尽くしていたのは私だけではありませんよ。けれど、間に合って本当によかったと心から安堵しております。」

「殿下…感謝致します…!」

 もう一度、カイラスは深く頭を下げて、痩せてしまった姉の体をしっかりと抱きしめた。
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