127 / 131
後編
127 聖女の行く末 2
しおりを挟む
あまりの恥ずかしさに居た堪れず窓の外に目を向け続けるフィスティアの目に、もの凄いスピードで馬車に向かって走ってくる一頭の馬が見えた。
「…こちらに、向かってくる?」
「どうされました?」
余りに熱心にフィスティアが窓の外を見て呟いたものだから、セルンシト国第二王子ケイトルもフィスティアの方の窓から外を見る。
「ああ…!お迎えかな?」
「迎え…?何処からです?」
「ふふ…何処からだと思いますか?」
カンカン…
楽しそうに笑いながらセルンシト国第二王子ケイトルは御者に停車するように合図を送る。
「殿下…?」
ドルン領にはまだまだあるが、迎えに来たと言う馬に乗っている者にどうやら心当たりがあるらしい。
「多分、お会いしたいと思っていた人物だと思いますよ?」
誰だろうとフィスティアが心で思い巡らせている間にも馬は馬車に迫ってくる。
「あっ!!」
馬が近づくにつれて、馬上の上の者の顔もはっきりとしてきた。
「カイラス!!カイラスですわ!殿下!!」
カイラス・ドルン…フィスティアの弟で婚姻前に会ったっきり、会う事叶わなかった実の弟…
この馬車にフィスティアが乗っている事を知っていたのだろう。迷いなく近づいて、勢いよく馬から降りてくる。
「姉上!!姉上は居られますか!?」
「カイラス!」
セルンシト国第二王子ケイトルはすぐ様馬車を開けてくれる。
「カイラス……!」
久しぶりに見る顔に胸が詰まる……カイラスもフィスティアの顔を見たら何も言えなくなってしまった様に、ただ眉を寄せただけだった。
「………姉上……」
それだけ言うとしっかりとフィスティアを抱きしめる。
「…カイラス…ごめんなさいね、貴方の婚姻をダメにしてしまったわ……」
ずっと謝りたい事だった。仲の良い二人の婚姻を両家ばかりかどれだけ本人達も待ち望んでいただろうか……
「…何を!そんな事、少しも問題ではありませんよ!フランカは待っていてくれています!できた女ですから、一緒に姉上の身の上を案じておりました!」
「まぁ……そうだったの…?フランカ嬢にも謝らなきゃ……」
「まずは、家に帰ってからでしょう?父上も、母上も今か今かと待っております。今朝からずっと玄関ホールに陣取っていて、使用人達が迷惑そうにしておりましたよ?」
「そう…?皆んなお元気ですか…?変わりなく?」
「大丈夫です!さあ、姉上を解放してくださった恩人殿にも挨拶させて下さいませ!」
「そうでした…カイラス、こちらは…」
姉弟の再会の挨拶が終わって、やっとフィスティアは同乗者を振り返った。
「私は、セルンシト国第二王子ケイトル・セルンシトと申します。この度は、姉君の解放心よりお喜び申し上げます。」
「え!セルンシト国の王子殿下!?」
まさか、姉を連れて来てくれた本人が他国の王族とは思わなかったらしい。カイラスは綺麗な礼を取っているセルンシト国第二王子ケイトルに慌てて礼を返した。
「姉を救出して下さった先頭に立って下さっていたとか…手紙にありました。なんと礼を申して良いのか、言葉がありません。」
「聖女の為に尽力を尽くしていたのは私だけではありませんよ。けれど、間に合って本当によかったと心から安堵しております。」
「殿下…感謝致します…!」
もう一度、カイラスは深く頭を下げて、痩せてしまった姉の体をしっかりと抱きしめた。
「…こちらに、向かってくる?」
「どうされました?」
余りに熱心にフィスティアが窓の外を見て呟いたものだから、セルンシト国第二王子ケイトルもフィスティアの方の窓から外を見る。
「ああ…!お迎えかな?」
「迎え…?何処からです?」
「ふふ…何処からだと思いますか?」
カンカン…
楽しそうに笑いながらセルンシト国第二王子ケイトルは御者に停車するように合図を送る。
「殿下…?」
ドルン領にはまだまだあるが、迎えに来たと言う馬に乗っている者にどうやら心当たりがあるらしい。
「多分、お会いしたいと思っていた人物だと思いますよ?」
誰だろうとフィスティアが心で思い巡らせている間にも馬は馬車に迫ってくる。
「あっ!!」
馬が近づくにつれて、馬上の上の者の顔もはっきりとしてきた。
「カイラス!!カイラスですわ!殿下!!」
カイラス・ドルン…フィスティアの弟で婚姻前に会ったっきり、会う事叶わなかった実の弟…
この馬車にフィスティアが乗っている事を知っていたのだろう。迷いなく近づいて、勢いよく馬から降りてくる。
「姉上!!姉上は居られますか!?」
「カイラス!」
セルンシト国第二王子ケイトルはすぐ様馬車を開けてくれる。
「カイラス……!」
久しぶりに見る顔に胸が詰まる……カイラスもフィスティアの顔を見たら何も言えなくなってしまった様に、ただ眉を寄せただけだった。
「………姉上……」
それだけ言うとしっかりとフィスティアを抱きしめる。
「…カイラス…ごめんなさいね、貴方の婚姻をダメにしてしまったわ……」
ずっと謝りたい事だった。仲の良い二人の婚姻を両家ばかりかどれだけ本人達も待ち望んでいただろうか……
「…何を!そんな事、少しも問題ではありませんよ!フランカは待っていてくれています!できた女ですから、一緒に姉上の身の上を案じておりました!」
「まぁ……そうだったの…?フランカ嬢にも謝らなきゃ……」
「まずは、家に帰ってからでしょう?父上も、母上も今か今かと待っております。今朝からずっと玄関ホールに陣取っていて、使用人達が迷惑そうにしておりましたよ?」
「そう…?皆んなお元気ですか…?変わりなく?」
「大丈夫です!さあ、姉上を解放してくださった恩人殿にも挨拶させて下さいませ!」
「そうでした…カイラス、こちらは…」
姉弟の再会の挨拶が終わって、やっとフィスティアは同乗者を振り返った。
「私は、セルンシト国第二王子ケイトル・セルンシトと申します。この度は、姉君の解放心よりお喜び申し上げます。」
「え!セルンシト国の王子殿下!?」
まさか、姉を連れて来てくれた本人が他国の王族とは思わなかったらしい。カイラスは綺麗な礼を取っているセルンシト国第二王子ケイトルに慌てて礼を返した。
「姉を救出して下さった先頭に立って下さっていたとか…手紙にありました。なんと礼を申して良いのか、言葉がありません。」
「聖女の為に尽力を尽くしていたのは私だけではありませんよ。けれど、間に合って本当によかったと心から安堵しております。」
「殿下…感謝致します…!」
もう一度、カイラスは深く頭を下げて、痩せてしまった姉の体をしっかりと抱きしめた。
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
逆行転生した悪役令嬢だそうですけれど、反省なんてしてやりませんわ!
九重
恋愛
我儘で自分勝手な生き方をして処刑されたアマーリアは、時を遡り、幼い自分に逆行転生した。
しかし、彼女は、ここで反省できるような性格ではなかった。
アマーリアは、破滅を回避するために、自分を処刑した王子や聖女たちの方を変えてやろうと決意する。
これは、逆行転生した悪役令嬢が、まったく反省せずに、やりたい放題好き勝手に生きる物語。
ツイッターで先行して呟いています。
聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。
妾の子と蔑まれていた公爵令嬢は、聖女の才能を持つ存在でした。今更態度を改められても、許すことはできません。
木山楽斗
恋愛
私の名前は、ナルネア・クーテイン。エルビネア王国に暮らす公爵令嬢である。
といっても、私を公爵令嬢といっていいのかどうかはわからない。なぜなら、私は現当主と浮気相手との間にできた子供であるからだ。
公爵家の人々は、私のことを妾の子と言って罵倒してくる。その辛い言葉にも、いつしかなれるようになっていた。
屋敷の屋根裏部屋に閉じ込められながら、私は窮屈な生活を続けていた。このまま、公爵家の人々に蔑まれながら生きていくしかないと諦めていたのだ。
ある日、家に第三王子であるフリムド様が訪ねて来た。
そこで起こった出来事をきっかけに、私は自身に聖女の才能があることを知るのだった。
その才能を見込まれて、フリムド様は私を気にかけるようになっていた。私が、聖女になることを期待してくれるようになったのである。
そんな私に対して、公爵家の人々は態度を少し変えていた。
どうやら、私が聖女の才能があるから、媚を売ってきているようだ。
しかし、今更そんなことをされてもいい気分にはならない。今までの罵倒を許すことなどできないのである。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
【完結】逆行した聖女
ウミ
恋愛
1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m
聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる