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後編
125 セルンシト国第二王子の求婚 2
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王妃フィスティアの前で片膝をついたセルンシト国第二王子ケイトルは、王妃フィスティアに向かってその心を請う。
「私の命を救ったのは貴方様です。ならば、私の命は貴女様のもの…この命が再び尽きるその時まで、私は貴方様の側を離れず見捨てないと誓いましょう…!」
ガーナード国を離れなければならない王妃フィスティアには行くべき所など無かった…自分がガーナード国王妃とわからない様な国に行かなければならないだろうが、そんな宛はない…
そんな時に、真摯なエメラルドの瞳が真っ直ぐに王妃フィスティアを捉えて離さない…セルンシト国第二王子ケイトルとの出会いは死体置き場という最悪なものだったのに、それでも彼は王妃フィスティアが良いという。
「ガーナード国王陛下。ガーナード王家の存続と滅亡、貴方はどちらを取られますか?」
静かな凛とした声が謁見の間に響いていく…
「……王妃…フィスティアを…離縁する………フィスティア、其方の望む所へ……」
重い、重苦しい王ルワンの声が僅かに震えつつ王としての決定を告げた……
「さぁ!お聞きになりましたでしょう?レディ?貴方は自由ですよ?国を出るも良し、実家に帰るも良し、それとも、私の手を取って下さいますか?」
ニッコリと屈託のないセルンシト国第二王子ケイトルの笑顔が今度はフィスティアに決断を迫る。余りにもセルンシト国第二王子ケイトルの笑顔が明るく無邪気なのと、自由という今まで縁の無かった言葉で、一気に心が軽くなったフィスティアはつい吸い寄せられる様に近づいて行く。フィスティア自身にも信じられない思いで、その手を取った……
「…自由………?これからは…?」
聖女として、言われて嫁ぐのでは無くて自由に選べる?
手を預けて貰えたセルンシト国第二王子ケイトルは満面の笑顔で小さく肯く。
「貴方は、ただ今ガーナード国王陛下より離縁を申し渡されましたし、今後の行く末もご自分で選べます。そうでございましょう?ガーナード国王陛下…?」
「そう…言った…」
疲れ切った王ルワンの声にはかつての覇気はもうない。王ルワンはこれから国民の信頼を回復する為に、尋常ならざる努力を繰り返して行かなければならなくなる。今回と同じ事を繰り返せば、今度は国民側から反乱が起こるだろう事が目に見える様で、王妃フィスティアを見捨ててしまった弊害を今正に身に染みて感じていた。
「これからは、自由………では、私の発言をお許しくださいませ、陛下…」
セルンシト国第二王子ケイトルに受け取られた手にギュッと力を入れて、フィスティアは夫であったガーナード国王を仰ぎ見る。
「………」
夫であった王ルワン…優しくも賢く勇敢で、一生涯の伴侶としてお互いに納得し、愛し愛されて夫婦になったと思っていた。そんな将来しか思い浮かば無かったのに、呆気なくも崩れ去って行った……
「陛下…私の聖女の力でラート様を蘇らせる事が出来なかった事を、まず心から謝罪申し上げます。」
ずっとフィスティアの心の底に残っていた事…王ルワンがあの様な暴挙に出た原因は騎士ラートの死だった……今まで、一度でも謝罪する機会すら与えられなかったから…
「そして、貴方様からの謝罪も私は受け入れとう御座います。不思議な程に今は悲しみも憎しみもございません。貴方様から与えられた自由の意味が大きすぎて、驚きと喜びに震えてさえおります。この国に産まれ今までの全てが無意味ではなかったと分かったのですもの。
ただ、一つ……お約束してくださいませ、陛下。ガーナードに残る聖女達には、私と同じ道を歩かせないで下さいませ……聖女とて全能ではない一人のか弱い人間ですもの。陛下の成さりようは余りにも、乱暴でしたわ……」
「ガーナード国王陛下、同盟軍側からもその件に関しては要望が上がる事と思います。我らは聖女を守る為に結成された同盟軍なのですから……!」
「私の命を救ったのは貴方様です。ならば、私の命は貴女様のもの…この命が再び尽きるその時まで、私は貴方様の側を離れず見捨てないと誓いましょう…!」
ガーナード国を離れなければならない王妃フィスティアには行くべき所など無かった…自分がガーナード国王妃とわからない様な国に行かなければならないだろうが、そんな宛はない…
そんな時に、真摯なエメラルドの瞳が真っ直ぐに王妃フィスティアを捉えて離さない…セルンシト国第二王子ケイトルとの出会いは死体置き場という最悪なものだったのに、それでも彼は王妃フィスティアが良いという。
「ガーナード国王陛下。ガーナード王家の存続と滅亡、貴方はどちらを取られますか?」
静かな凛とした声が謁見の間に響いていく…
「……王妃…フィスティアを…離縁する………フィスティア、其方の望む所へ……」
重い、重苦しい王ルワンの声が僅かに震えつつ王としての決定を告げた……
「さぁ!お聞きになりましたでしょう?レディ?貴方は自由ですよ?国を出るも良し、実家に帰るも良し、それとも、私の手を取って下さいますか?」
ニッコリと屈託のないセルンシト国第二王子ケイトルの笑顔が今度はフィスティアに決断を迫る。余りにもセルンシト国第二王子ケイトルの笑顔が明るく無邪気なのと、自由という今まで縁の無かった言葉で、一気に心が軽くなったフィスティアはつい吸い寄せられる様に近づいて行く。フィスティア自身にも信じられない思いで、その手を取った……
「…自由………?これからは…?」
聖女として、言われて嫁ぐのでは無くて自由に選べる?
手を預けて貰えたセルンシト国第二王子ケイトルは満面の笑顔で小さく肯く。
「貴方は、ただ今ガーナード国王陛下より離縁を申し渡されましたし、今後の行く末もご自分で選べます。そうでございましょう?ガーナード国王陛下…?」
「そう…言った…」
疲れ切った王ルワンの声にはかつての覇気はもうない。王ルワンはこれから国民の信頼を回復する為に、尋常ならざる努力を繰り返して行かなければならなくなる。今回と同じ事を繰り返せば、今度は国民側から反乱が起こるだろう事が目に見える様で、王妃フィスティアを見捨ててしまった弊害を今正に身に染みて感じていた。
「これからは、自由………では、私の発言をお許しくださいませ、陛下…」
セルンシト国第二王子ケイトルに受け取られた手にギュッと力を入れて、フィスティアは夫であったガーナード国王を仰ぎ見る。
「………」
夫であった王ルワン…優しくも賢く勇敢で、一生涯の伴侶としてお互いに納得し、愛し愛されて夫婦になったと思っていた。そんな将来しか思い浮かば無かったのに、呆気なくも崩れ去って行った……
「陛下…私の聖女の力でラート様を蘇らせる事が出来なかった事を、まず心から謝罪申し上げます。」
ずっとフィスティアの心の底に残っていた事…王ルワンがあの様な暴挙に出た原因は騎士ラートの死だった……今まで、一度でも謝罪する機会すら与えられなかったから…
「そして、貴方様からの謝罪も私は受け入れとう御座います。不思議な程に今は悲しみも憎しみもございません。貴方様から与えられた自由の意味が大きすぎて、驚きと喜びに震えてさえおります。この国に産まれ今までの全てが無意味ではなかったと分かったのですもの。
ただ、一つ……お約束してくださいませ、陛下。ガーナードに残る聖女達には、私と同じ道を歩かせないで下さいませ……聖女とて全能ではない一人のか弱い人間ですもの。陛下の成さりようは余りにも、乱暴でしたわ……」
「ガーナード国王陛下、同盟軍側からもその件に関しては要望が上がる事と思います。我らは聖女を守る為に結成された同盟軍なのですから……!」
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