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後編
119 ガーナード国王の所望 3
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「陛下、例の聖女が見つかりましてございます。」
残党の処理に国内の強化警備、内政の統一に同盟軍との連携協力の上の決定の諸々………
王城に帰ってからもやる事は山積みで、ゆっくりと城に帰って来た時間を堪能することなど許されない状況の中、一人の侍従が嬉しい知らせを持って来た。
「そうか……あの聖女は健在か?何処で過ごしていたのだ?」
あの混乱の折、聖女の安否確認と救出を最優先に考えての策をいくつも練って来た。しかし思いがけずに無理難題なく、選定人カタスが地下処理場へと遣わされた事で事が早く進んだものだ。選定人カタスからの合図を受けて同盟軍精鋭部隊が地下処理場から、ガーナード国王ルワン以下近衞騎士隊が王族用の避難路から城内に侵入し、一気に王座まで攻め入る手筈であったが、まさか敵のハンガ国皇太子オレオンが地下処理場まで降りてくるとは思わなかった。これは嬉しい誤算であった。頭を押さえた事で最小限の被害で城内の制圧は完了した。その際に、聖女に対して異常な程の執着を見せていたハンガ国皇太子オレオンの様子に危惧した者達から、ハンガ国の手の届かぬ国外へ一時脱出させる案を持ちかけられ同盟軍に弱った聖女を託した。滞在先はガーナード国沿いのどこかと聞いていたが、どこまでハンガ国皇太子オレオンの息が掛かっているかも分からない状況では滞在先は伏せた方が得策だろうと皆の意見が一致。その為セルンシト国王子に託したのだ。
ガーナード国王ルワンにはしなければならない事がある。自らの命を救い、ガーナード国奪還のきっかけを作ってくれたのは他でもないセルンシト国の王子に託した聖女だ。なぜ、あれ程の力のある者があそこにいるのか納得はできていないが、本人に話を聞けばそれもわかる事。とにかくあの聖女ともう一度会って、助けてもらえた礼をするつもりだ。ルワンはガーナードの国王なのだから、罪人の娘ならば恩赦を与えようとも考えている。そうすればあれ程の力の持ち主だ、伴侶に名乗り上げる者も多いだろう。誰か見合う者をあてがっても良いかもしれない………
「はい、聖女殿はハンガ国国境にあります貴族の屋敷に滞在しているとのことでございました。」
「な、ハンガだと?」
ハンガ国皇太子の目の届かぬ所へと託したはずなのに!?
「陛下、灯台下暗しと申します。この者が持って参りました書状にはサント家の印がございますね…では、案ずる事は無いかと…」
「サント家か…」
なる程、サント家の事ならばヒルシュ国王からも聞き及んでおり、信頼をおける家柄でもある。サント家の子息をもかの聖女は助けたのだから無碍にする事はあるまいと、書状を受け取りながら王ルワンは胸を撫で下ろした。
残党の処理に国内の強化警備、内政の統一に同盟軍との連携協力の上の決定の諸々………
王城に帰ってからもやる事は山積みで、ゆっくりと城に帰って来た時間を堪能することなど許されない状況の中、一人の侍従が嬉しい知らせを持って来た。
「そうか……あの聖女は健在か?何処で過ごしていたのだ?」
あの混乱の折、聖女の安否確認と救出を最優先に考えての策をいくつも練って来た。しかし思いがけずに無理難題なく、選定人カタスが地下処理場へと遣わされた事で事が早く進んだものだ。選定人カタスからの合図を受けて同盟軍精鋭部隊が地下処理場から、ガーナード国王ルワン以下近衞騎士隊が王族用の避難路から城内に侵入し、一気に王座まで攻め入る手筈であったが、まさか敵のハンガ国皇太子オレオンが地下処理場まで降りてくるとは思わなかった。これは嬉しい誤算であった。頭を押さえた事で最小限の被害で城内の制圧は完了した。その際に、聖女に対して異常な程の執着を見せていたハンガ国皇太子オレオンの様子に危惧した者達から、ハンガ国の手の届かぬ国外へ一時脱出させる案を持ちかけられ同盟軍に弱った聖女を託した。滞在先はガーナード国沿いのどこかと聞いていたが、どこまでハンガ国皇太子オレオンの息が掛かっているかも分からない状況では滞在先は伏せた方が得策だろうと皆の意見が一致。その為セルンシト国王子に託したのだ。
ガーナード国王ルワンにはしなければならない事がある。自らの命を救い、ガーナード国奪還のきっかけを作ってくれたのは他でもないセルンシト国の王子に託した聖女だ。なぜ、あれ程の力のある者があそこにいるのか納得はできていないが、本人に話を聞けばそれもわかる事。とにかくあの聖女ともう一度会って、助けてもらえた礼をするつもりだ。ルワンはガーナードの国王なのだから、罪人の娘ならば恩赦を与えようとも考えている。そうすればあれ程の力の持ち主だ、伴侶に名乗り上げる者も多いだろう。誰か見合う者をあてがっても良いかもしれない………
「はい、聖女殿はハンガ国国境にあります貴族の屋敷に滞在しているとのことでございました。」
「な、ハンガだと?」
ハンガ国皇太子の目の届かぬ所へと託したはずなのに!?
「陛下、灯台下暗しと申します。この者が持って参りました書状にはサント家の印がございますね…では、案ずる事は無いかと…」
「サント家か…」
なる程、サント家の事ならばヒルシュ国王からも聞き及んでおり、信頼をおける家柄でもある。サント家の子息をもかの聖女は助けたのだから無碍にする事はあるまいと、書状を受け取りながら王ルワンは胸を撫で下ろした。
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