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後編
114 再会 4
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「では、ガーナードは今?」
「はい。生存されていたルワン国王陛下がお戻りになり、事後処理にと精を出されていることかと。」
王ルワン…あの場では私の事には全く気が付いていなかった……
けれど、収まるべきところに収まったのだから…これで良かったのだ…
「………私を、助け出して下さったのは何方です?」
「僭越ながら、私です。」
あの時、待たせてしまって済まなかったと、フィスティアを優しく抱き上げてくれたのは、今目の前にいるセルンシト国の第二王子という…
「けれど、ここはハンガ国と聞きました…」
ガーナード国王城でセルンシト国の王子に助けられて、今はハンガ国にいる。難しい謎々の様で答えが見えない。
「その通りです。聖女殿…」
ソファーにエリットと共に座っているサント家の次男デルト・サントが口を挟む。
「聖女の国で聖女殿が虐げられていたのです。いくら国王がお戻りになったとしてもこれでは国民に対する心象は非常に悪いものとなるでしょう?ですから、一度国外で療養して頂く事にしたのです。」
サント家はハンガ国の主要貴族家だ。本来ならば、国王側について皇太子オレオンを護らなければならない立場にある。けれども近況の皇太子オレオンの言動が如何にも理解に苦しくなった折に、サント侯爵は実の息子達から聖女の存在と恩義を聞き、ハンガ国を立て直す力を貸してもらう事を条件にヒルシュ国の同盟軍に参加し、聖女の救出に力を貸す事を約束してくれたのだ。
「お身体をしっかりとお戻しになってから、今後の事をお考えになったら如何でしょう?」
デルトの言葉に隣で聞いていたエリットが眼を丸くする。
「ま、まさか…奥様は聖女様でしたの……?」
「あ、エリットすまない。言い忘れていた?」
悪びれもない様な笑顔でデルトは謝罪する。
「もう、貴方ったら!こんな大事な事を黙ったままなんて酷いですわ!私、何か粗相してしまったかもしれませんのに……」
散々尽くしてくれたエリットに対してフィスティアは感謝こそすれ一切不満などないのだが、なんとも聖女という肩書きは献身的なエリットを萎縮させてしまう威力もあったようで。
「エリット、貴方には感謝しかありませんよ?貴方の優しさにどれだけ癒されたか分かりませんもの。デルト様は幸せ者ですわね?」
デルトとエリットの間に流れる気安さからきっとこの二人は夫婦なのだろうと思ったフィスティアはそう言ってみる。
「あっわ、分かりますか?私達が夫婦だと?」
頬を赤くして恥ずかしがるエリットを見ていると胸がほんわかとして来る。エリットは元々サント家の侍女だったそうなのだが次男のデルトに見染められたそうだ。デルトは侯爵家に産まれた一切の利権を放棄する代わりにエリットとの婚姻を認められた。貴族位まで捨てる気だった為に武功を立てようと戦に出たのだ。
身分も無い一人の侍女のために命までかけたデルトと、どこの誰とも名も知らぬ女の為に献身的に尽くせるエリットはお似合いの夫婦にしか見えなくて、心から幸せを願わずにはいられなかった。
フィスティアはニッコリと肯く。
「私のした事はちっとも無駄ではありませんでした…セルンシト国第二王子ケイトル殿下、それにデルト様、サント夫人ここまで助けて下さった温情に心から感謝申し上げます。」
そして、ゆっくりと優雅に最上級の礼を取った。
「はい。生存されていたルワン国王陛下がお戻りになり、事後処理にと精を出されていることかと。」
王ルワン…あの場では私の事には全く気が付いていなかった……
けれど、収まるべきところに収まったのだから…これで良かったのだ…
「………私を、助け出して下さったのは何方です?」
「僭越ながら、私です。」
あの時、待たせてしまって済まなかったと、フィスティアを優しく抱き上げてくれたのは、今目の前にいるセルンシト国の第二王子という…
「けれど、ここはハンガ国と聞きました…」
ガーナード国王城でセルンシト国の王子に助けられて、今はハンガ国にいる。難しい謎々の様で答えが見えない。
「その通りです。聖女殿…」
ソファーにエリットと共に座っているサント家の次男デルト・サントが口を挟む。
「聖女の国で聖女殿が虐げられていたのです。いくら国王がお戻りになったとしてもこれでは国民に対する心象は非常に悪いものとなるでしょう?ですから、一度国外で療養して頂く事にしたのです。」
サント家はハンガ国の主要貴族家だ。本来ならば、国王側について皇太子オレオンを護らなければならない立場にある。けれども近況の皇太子オレオンの言動が如何にも理解に苦しくなった折に、サント侯爵は実の息子達から聖女の存在と恩義を聞き、ハンガ国を立て直す力を貸してもらう事を条件にヒルシュ国の同盟軍に参加し、聖女の救出に力を貸す事を約束してくれたのだ。
「お身体をしっかりとお戻しになってから、今後の事をお考えになったら如何でしょう?」
デルトの言葉に隣で聞いていたエリットが眼を丸くする。
「ま、まさか…奥様は聖女様でしたの……?」
「あ、エリットすまない。言い忘れていた?」
悪びれもない様な笑顔でデルトは謝罪する。
「もう、貴方ったら!こんな大事な事を黙ったままなんて酷いですわ!私、何か粗相してしまったかもしれませんのに……」
散々尽くしてくれたエリットに対してフィスティアは感謝こそすれ一切不満などないのだが、なんとも聖女という肩書きは献身的なエリットを萎縮させてしまう威力もあったようで。
「エリット、貴方には感謝しかありませんよ?貴方の優しさにどれだけ癒されたか分かりませんもの。デルト様は幸せ者ですわね?」
デルトとエリットの間に流れる気安さからきっとこの二人は夫婦なのだろうと思ったフィスティアはそう言ってみる。
「あっわ、分かりますか?私達が夫婦だと?」
頬を赤くして恥ずかしがるエリットを見ていると胸がほんわかとして来る。エリットは元々サント家の侍女だったそうなのだが次男のデルトに見染められたそうだ。デルトは侯爵家に産まれた一切の利権を放棄する代わりにエリットとの婚姻を認められた。貴族位まで捨てる気だった為に武功を立てようと戦に出たのだ。
身分も無い一人の侍女のために命までかけたデルトと、どこの誰とも名も知らぬ女の為に献身的に尽くせるエリットはお似合いの夫婦にしか見えなくて、心から幸せを願わずにはいられなかった。
フィスティアはニッコリと肯く。
「私のした事はちっとも無駄ではありませんでした…セルンシト国第二王子ケイトル殿下、それにデルト様、サント夫人ここまで助けて下さった温情に心から感謝申し上げます。」
そして、ゆっくりと優雅に最上級の礼を取った。
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