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後編

104 見出された聖女 3

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「懐かしい…ですね………」

 視力が回復してからは、騎士達は慌てて木陰に王妃フィスティアの身体を移し、井戸に走って水を汲み、王妃フィスティアに飲ませてから血と汚れに染まっている顔を丁寧に拭いた。

「……なんと、いう事を…………」

 顔色を失った選定人カタスは言葉が出てこない……

「ここへ…聖女が、いる事が、ばれましたか……?」

 息も絶え絶えの王妃フィスティアを前にして、選定人カタスは涙ながらに謝罪をする。

「誠に、誠に申し訳ありませんでした!あの時、貴方様のお力をしっかりと見極めていれば、この様なことには………祖父に代わりまして、謝罪申し上げます!」

「なにを……?」

「…これも、貴方様のお力の種類が分かっていたら起こらぬ事だったのです…なんと、なんと謝れば………」

「顔を…おあげなさいな…ここに、いたから出来たこともあるのです……失った者はもう、戻らないけれど……お祖父様は残念でしたね……」

「祖父の最後は、貴方様をお助けする事ができない後悔のみでした!類い稀な聖女のお力がある貴方様を……こんな所に落とすなど、許されざる事ではありません!」

「もう、良いのです…カタス…今度こそ、私は死罪ですか?」

「なにを、馬鹿な事を!!」

 これには王妃フィスティアを抱えていた騎士が声を荒げた。

 王妃フィスティアは誠に勝手ながらも死罪となった者達を生き返らせ、国外に逃げおおせる様に手引きしていたのだ。それは反逆罪を問われても無理のない事だった。

「違います!王妃殿下!我らは貴方様を探していたのです!行方の分からなくなった貴方様の後に、類い稀な聖女が現れたとあっては貴方様くらいしか思いつく方がおりませんでした!」

「私を…助けに…?一体、どなたが…?」

「ヒルシュ国を中心に、貴方様が助けた者達が動いております!ガーナード国の国民も!貴方様を裏切りはしません!」

「けれど………私は、もう………」

 王妃フィスティアの脳裏には国王に捨てられた悲しみ、苦しみが昨日の事の様に思い出された。蘇ったあの方は、自分を生かした聖女がフィスティアとは気が付いていなかった…きっと、また……

「気を強くお持ち下さいませ!直ぐなのです!この時を待っていたのですから!こちらを、どうかこちら身につけていて下さいませ…」

 選定人カタスはそう言いながら聖女の遺品である木製の装身具を王妃フィスティアの腕にはめた。

「こんな、大切な物を………」

「王妃殿下、今暫くお側を離れます…が、一時は待たせませぬ…!」

 そう選定人カタスが言い終えると、一人の騎士は森の奥へ、もう一人はこちらでお待ちください、と言ったカタスと共に急足で城の中へと戻って行った……
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