94 / 131
後編
94 市中の噂
しおりを挟む
ハンガの皇太子がガーナード城へ入城した。
白馬に乗って堂々と入城するハンガ国皇太子の姿は流石は王族、気品と自信に溢れていて優しい面影が更に神々しく見えた者も居ただろう。
「ねぇ、聞いた?」
「あれだろう?」
「本当なのかね?」
熱狂的とは言い難い、冷めた目つきのガーナード国国民の視線に気が付いたのか付かないのか、ハンガ国皇太子一行は粛々とガーナード城へと吸い込まれて行く。他国の皇太子一行の噂に負けず、現在ガーナード城下ではまことしやかにある噂が飛びかっていた。
「だって!城から帰って来た者がそう言ってたんだって!」
「なら、おかしいじゃ無いか!王様達は聖女様を無下に扱っていたって事かい?」
「だって、死人の様だったって?」
「まさか……そんな…あの国王陛下が?」
「だからかも知れない!だから、反乱なんか起こったのでは?」
「……聖女様の、怒りだ………」
「なんて事…ガーナードはどうなってしまうの?」
「そ、その聖女様は今どこに?」
「それが…話してはならないと言われているらしくて…」
「でも、城のどこかにはいるんだろうさ!こんな所まで話が漏れているんだ!今更だろう?」
「そうだよねぇ…何とかして助けられないもんかね?」
「私の親戚も、騎士様に楯突いて連れて行かれたんだよ。もうダメかと思ってたら、ある日ひょっこり戻って来てさ…今は田舎に引っ込んでいるけど、このままにはしとかないって…!」
「ハンガの王子はどうなんだろうね?」
「聖女様を助けてくれないかね?」
「……助けてくれるとしても、誰がそんな事を言いに行くんだよ?」
「………ガーナードを乗っ取った敵にさ!」
城に連れて行かれた者が帰って来た。又は、城で働いていた者達で連絡が取れなくなっていた者が帰ってきた。そして、それら皆一様にガーナード城にいる聖女様に助けていただいたと話ているという事だ。その聖女が城のどこにいるのか誰も口を開こうとはせずに…どこの誰なのかも分からない…聖女なのだから貴族には違いがないが、到底貴族になんて見えなかったと口を揃えて言っていた。
「なぁ、こんなのは知っているか?」
不思議な事はもう一つ…聖女に助けられて帰って来た者達が次々に姿を消していっている。勿論全員という訳では無い。けれど不自然に姿を消している者は多いという…
白馬に乗って堂々と入城するハンガ国皇太子の姿は流石は王族、気品と自信に溢れていて優しい面影が更に神々しく見えた者も居ただろう。
「ねぇ、聞いた?」
「あれだろう?」
「本当なのかね?」
熱狂的とは言い難い、冷めた目つきのガーナード国国民の視線に気が付いたのか付かないのか、ハンガ国皇太子一行は粛々とガーナード城へと吸い込まれて行く。他国の皇太子一行の噂に負けず、現在ガーナード城下ではまことしやかにある噂が飛びかっていた。
「だって!城から帰って来た者がそう言ってたんだって!」
「なら、おかしいじゃ無いか!王様達は聖女様を無下に扱っていたって事かい?」
「だって、死人の様だったって?」
「まさか……そんな…あの国王陛下が?」
「だからかも知れない!だから、反乱なんか起こったのでは?」
「……聖女様の、怒りだ………」
「なんて事…ガーナードはどうなってしまうの?」
「そ、その聖女様は今どこに?」
「それが…話してはならないと言われているらしくて…」
「でも、城のどこかにはいるんだろうさ!こんな所まで話が漏れているんだ!今更だろう?」
「そうだよねぇ…何とかして助けられないもんかね?」
「私の親戚も、騎士様に楯突いて連れて行かれたんだよ。もうダメかと思ってたら、ある日ひょっこり戻って来てさ…今は田舎に引っ込んでいるけど、このままにはしとかないって…!」
「ハンガの王子はどうなんだろうね?」
「聖女様を助けてくれないかね?」
「……助けてくれるとしても、誰がそんな事を言いに行くんだよ?」
「………ガーナードを乗っ取った敵にさ!」
城に連れて行かれた者が帰って来た。又は、城で働いていた者達で連絡が取れなくなっていた者が帰ってきた。そして、それら皆一様にガーナード城にいる聖女様に助けていただいたと話ているという事だ。その聖女が城のどこにいるのか誰も口を開こうとはせずに…どこの誰なのかも分からない…聖女なのだから貴族には違いがないが、到底貴族になんて見えなかったと口を揃えて言っていた。
「なぁ、こんなのは知っているか?」
不思議な事はもう一つ…聖女に助けられて帰って来た者達が次々に姿を消していっている。勿論全員という訳では無い。けれど不自然に姿を消している者は多いという…
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
逆行転生した悪役令嬢だそうですけれど、反省なんてしてやりませんわ!
九重
恋愛
我儘で自分勝手な生き方をして処刑されたアマーリアは、時を遡り、幼い自分に逆行転生した。
しかし、彼女は、ここで反省できるような性格ではなかった。
アマーリアは、破滅を回避するために、自分を処刑した王子や聖女たちの方を変えてやろうと決意する。
これは、逆行転生した悪役令嬢が、まったく反省せずに、やりたい放題好き勝手に生きる物語。
ツイッターで先行して呟いています。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません
との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗
「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ!
あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。
断罪劇? いや、珍喜劇だね。
魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。
留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。
私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で?
治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな?
聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。
我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし?
面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。
訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結まで予約投稿済み
R15は念の為・・
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
侯爵家の令嬢であるシエルは、愛人との間に生まれたせいで、父や義母、異母姉妹から酷い仕打ちをされる生活を送っていた。
そんなシエルには婚約者がいた。まるで本物の兄のように仲良くしていたが、ある日突然彼は亡くなってしまった。
悲しみに暮れるシエル。そこに姉のアイシャがやってきて、とんでもない発言をした。
「ワタクシ、とある殿方と真実の愛に目覚めましたの。だから、今ワタクシが婚約している殿方との結婚を、あなたに代わりに受けさせてあげますわ」
こうしてシエルは、必死の抗議も虚しく、身勝手な理由で、新しい婚約者の元に向かうこととなった……横暴で散々虐げてきた家族に、復讐を誓いながら。
新しい婚約者は、社交界でとても恐れられている相手。うまくやっていけるのかと不安に思っていたが、なぜかとても溺愛されはじめて……!?
⭐︎全三十九話、すでに完結まで予約投稿済みです。11/12 HOTランキング一位ありがとうございます!⭐︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる