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後編
88 執拗な憧れ
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「そうか!到着されたか!」
朝から珍しくも落ち着かずに、ソワソワしていた皇太子オレオン。騎士達から到着の旨の連絡を受けると、久しぶりに家族との晩餐の席だったと言うのにも関わらず、中座していく。
「どうしたのだ?オレオン?」
「父上!ご所望の者が届きました様です!」
ピクリ、と眉が動いたのは思いがけず皇太子妃サーラン。
「皇太子殿下。何が届きましたの?」
丁寧にカラトリーをテーブルに戻し、ニッコリと微笑んだ。
この晩餐の席にはハンガ国王夫妻、皇太子夫妻に皇太子の第一側妃、第二側妃と勢揃いしている。ハンガ国王は表向きは王妃である妻一筋だが、貴族でない身分の愛人を何人か別邸に囲っている。この様な家族団欒の席には身分の低い彼女達は立ち入ることはできない。
「おや?サーランに話していなかったかい?」
ニコニコと笑顔の絶えない皇太子オレオンは今日も優しい笑顔で妻を見つめる。
「何のことでございましょう?大きな家具など何か頼んでいたかしら?」
「いやいや、違うよ!サーラン!今日は聖女方が到着する日だろう?予定を伝えた様に思うのだが?」
「あらあら、オレオン…貴方ったら…まるで第二側妃を迎えた時の様なはしゃぎっぷりね?少しは落ちつきなさいな。」
「母上!これが落ちついておられますか?聖女ですよ?我が国には表立ってはハウアラしかおりませんでした聖女が、我が国の地を踏んでいるなんて……!」
今にも飛び上がらんばかりの喜び様だ。ハウアラ第二側妃の輿入れの時もこんな状態だったのだろうか?侍女達はそれはそれは待ち焦がれていたと話していたが……
「して、何名到着されたのだ?」
「は…今晩は三名かと。」
「三名か?いやに少ないな?」
「はぁ、どなたも貴族の令嬢達ばかりですので旅支度やら、親戚への挨拶やらで時間を取られまして…これでも十二分に急いで頂いたのですが…」
そんなに急がせてまで、祖国を離れさせたと言うの?
ハウアラ第二側妃のハンガ国への輿入れ決定もそれは急なことだったが、今寄越されている令嬢達は誰かと婚姻を結ぶ為でもなく、納得も無いままに無理矢理に連れて来られたのだろうという気しかしないのは何故だろう…?
「さてさて、どんなご令嬢達かな?」
にこやかに笑ってはいるが感情の読めない皇太子妃と、明らかに表情が固まってしまっているハウアラ第二側妃の視線を物ともせずに、皇太子オレオンはウキウキとした態度を崩さない。
「オレオン?貴方まさかまた側妃を迎えようと言われるの?」
王妃が聞きにくい質問を皇太子オレオンに投げかけた。
側妃は王や皇太子が望むのならば、身分や出身を鑑みて決定されるものだが、まず聖女という身分であれば問題は無いだろう。
「私は、反対でございます…」
今まで一言も発しなかった第一側妃ケリアが言った。
朝から珍しくも落ち着かずに、ソワソワしていた皇太子オレオン。騎士達から到着の旨の連絡を受けると、久しぶりに家族との晩餐の席だったと言うのにも関わらず、中座していく。
「どうしたのだ?オレオン?」
「父上!ご所望の者が届きました様です!」
ピクリ、と眉が動いたのは思いがけず皇太子妃サーラン。
「皇太子殿下。何が届きましたの?」
丁寧にカラトリーをテーブルに戻し、ニッコリと微笑んだ。
この晩餐の席にはハンガ国王夫妻、皇太子夫妻に皇太子の第一側妃、第二側妃と勢揃いしている。ハンガ国王は表向きは王妃である妻一筋だが、貴族でない身分の愛人を何人か別邸に囲っている。この様な家族団欒の席には身分の低い彼女達は立ち入ることはできない。
「おや?サーランに話していなかったかい?」
ニコニコと笑顔の絶えない皇太子オレオンは今日も優しい笑顔で妻を見つめる。
「何のことでございましょう?大きな家具など何か頼んでいたかしら?」
「いやいや、違うよ!サーラン!今日は聖女方が到着する日だろう?予定を伝えた様に思うのだが?」
「あらあら、オレオン…貴方ったら…まるで第二側妃を迎えた時の様なはしゃぎっぷりね?少しは落ちつきなさいな。」
「母上!これが落ちついておられますか?聖女ですよ?我が国には表立ってはハウアラしかおりませんでした聖女が、我が国の地を踏んでいるなんて……!」
今にも飛び上がらんばかりの喜び様だ。ハウアラ第二側妃の輿入れの時もこんな状態だったのだろうか?侍女達はそれはそれは待ち焦がれていたと話していたが……
「して、何名到着されたのだ?」
「は…今晩は三名かと。」
「三名か?いやに少ないな?」
「はぁ、どなたも貴族の令嬢達ばかりですので旅支度やら、親戚への挨拶やらで時間を取られまして…これでも十二分に急いで頂いたのですが…」
そんなに急がせてまで、祖国を離れさせたと言うの?
ハウアラ第二側妃のハンガ国への輿入れ決定もそれは急なことだったが、今寄越されている令嬢達は誰かと婚姻を結ぶ為でもなく、納得も無いままに無理矢理に連れて来られたのだろうという気しかしないのは何故だろう…?
「さてさて、どんなご令嬢達かな?」
にこやかに笑ってはいるが感情の読めない皇太子妃と、明らかに表情が固まってしまっているハウアラ第二側妃の視線を物ともせずに、皇太子オレオンはウキウキとした態度を崩さない。
「オレオン?貴方まさかまた側妃を迎えようと言われるの?」
王妃が聞きにくい質問を皇太子オレオンに投げかけた。
側妃は王や皇太子が望むのならば、身分や出身を鑑みて決定されるものだが、まず聖女という身分であれば問題は無いだろう。
「私は、反対でございます…」
今まで一言も発しなかった第一側妃ケリアが言った。
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