68 / 131
後編
68 ガーナード国の状況 2
しおりを挟む
「え!?ジョルダン殿が、今ハンガに?」
「どう言うつもりで?」
皆混乱一色の中、一人カンリールだけがサッパリした顔でルワンに向き直る。
「ハウアラ妃はどうか分からないけど、ジョルダン殿は諦めきれなかったと言う事だよ。」
「単身、ハンガに向かった所で何ができる?」
「何がって?ジョルダン殿だって闇雲に突っ走っているわけじゃないよ?ルワン殿…今回の事が起こってから行動に移したんだ。僕は情報を分けただけ、少し手伝ったけど。」
「しかし、もしハンガで捕まりでもしたら…」
ハウアラ妃の奪還と言葉にしただけでも国を相手取っての大事だ。そんな事をヒルシュ国王もサリング侯爵家当主も許しはしないのでは?
「じじ様はこの件について知らないよ?」
然も当然とカンリールは言う。
「サリング家も覚悟はしている。ジョルダン殿の決意もね。もし、有事があって拘束された場合、サリング家はジョルダン殿を気狂いの為廃嫡したと発表するつもりさ…」
「……切り捨てると………?」
「それしかないだろう?ジョルダン殿は諦め切れない。かと言って一人の我儘のために戦争を仕掛けるわけにも行かない……ジョルダン殿もそれでいいと納得済みの所で、今回なんだ。」
今までだったら絶対に無理無謀な行動にも、ガーナード国奪還のために有志諸国が動くとあればハウアラ妃と接触し、かつ奪還のチャンスを伺う事も出来るかもしれない。ジョルダンはそれに賭けたのだ。
「意志の…強い方だな……」
「陛下…こちらも意思を堅めなければいけませぬ…此度の反乱には、騎士団長が…関わっております……!」
なんとも言いにくそうに下を向きつつも、一人の騎士ははっきりとそう告げた。
「私も、その事実を知り、刑に処された者の一人です。」
何人もの告発により、ガーナード国側の騎士団長と直近の騎士の裏切りがはっきりと浮き彫りになった。だから、あんなにもスムーズに事が進んだ……
騎士団長……騎士団長が……ルワンの脳裏にラートの顔が浮かんで来る。ルワンもラートも勿論他の騎士達も騎士団長とは知らぬ仲ではない…共に剣の腕を磨くために稽古をつけてもらった事もある……
「恥、知らずめが………!!」
何人もの騎士が唇を噛み、手を握り締めて悔しさに耐える。
「覚悟か……覚悟ならば、とうに出来ているはずだ…父王の死を見た時から…その覚悟は変わらない…皆、国を取り返すぞ………!」
そう、父王の惨たらしい死を見てから、心に決めた事がある。何としても何をしても父王を手にかけたものを許さないと…此度の反乱と同じ者の手引きならば尚のこと、ルワンのその決意は固まるのだった。
「どう言うつもりで?」
皆混乱一色の中、一人カンリールだけがサッパリした顔でルワンに向き直る。
「ハウアラ妃はどうか分からないけど、ジョルダン殿は諦めきれなかったと言う事だよ。」
「単身、ハンガに向かった所で何ができる?」
「何がって?ジョルダン殿だって闇雲に突っ走っているわけじゃないよ?ルワン殿…今回の事が起こってから行動に移したんだ。僕は情報を分けただけ、少し手伝ったけど。」
「しかし、もしハンガで捕まりでもしたら…」
ハウアラ妃の奪還と言葉にしただけでも国を相手取っての大事だ。そんな事をヒルシュ国王もサリング侯爵家当主も許しはしないのでは?
「じじ様はこの件について知らないよ?」
然も当然とカンリールは言う。
「サリング家も覚悟はしている。ジョルダン殿の決意もね。もし、有事があって拘束された場合、サリング家はジョルダン殿を気狂いの為廃嫡したと発表するつもりさ…」
「……切り捨てると………?」
「それしかないだろう?ジョルダン殿は諦め切れない。かと言って一人の我儘のために戦争を仕掛けるわけにも行かない……ジョルダン殿もそれでいいと納得済みの所で、今回なんだ。」
今までだったら絶対に無理無謀な行動にも、ガーナード国奪還のために有志諸国が動くとあればハウアラ妃と接触し、かつ奪還のチャンスを伺う事も出来るかもしれない。ジョルダンはそれに賭けたのだ。
「意志の…強い方だな……」
「陛下…こちらも意思を堅めなければいけませぬ…此度の反乱には、騎士団長が…関わっております……!」
なんとも言いにくそうに下を向きつつも、一人の騎士ははっきりとそう告げた。
「私も、その事実を知り、刑に処された者の一人です。」
何人もの告発により、ガーナード国側の騎士団長と直近の騎士の裏切りがはっきりと浮き彫りになった。だから、あんなにもスムーズに事が進んだ……
騎士団長……騎士団長が……ルワンの脳裏にラートの顔が浮かんで来る。ルワンもラートも勿論他の騎士達も騎士団長とは知らぬ仲ではない…共に剣の腕を磨くために稽古をつけてもらった事もある……
「恥、知らずめが………!!」
何人もの騎士が唇を噛み、手を握り締めて悔しさに耐える。
「覚悟か……覚悟ならば、とうに出来ているはずだ…父王の死を見た時から…その覚悟は変わらない…皆、国を取り返すぞ………!」
そう、父王の惨たらしい死を見てから、心に決めた事がある。何としても何をしても父王を手にかけたものを許さないと…此度の反乱と同じ者の手引きならば尚のこと、ルワンのその決意は固まるのだった。
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
義姉でも妻になれますか? 第一王子の婚約者として育てられたのに、候補から外されました
甘い秋空
恋愛
第一王子の婚約者として育てられ、同級生の第二王子のお義姉様だったのに、候補から外されました! え? 私、今度は第二王子の義妹ちゃんになったのですか! ひと風呂浴びてスッキリしたら…… (全4巻で完結します。サービスショットがあるため、R15にさせていただきました。)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
第一王女アンナは恋人に捨てられて
岡暁舟
恋愛
第一王女アンナは自分を救ってくれたロビンソンに恋をしたが、ロビンソンの幼馴染であるメリーにロビンソンを奪われてしまった。アンナのその後を描いてみます。「愛しているのは王女でなくて幼馴染」のサイドストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】行き遅れ聖女の結婚騒動
天田れおぽん
恋愛
聖女ですが行き遅れと周りが圧をかけてくるので結婚しました。
村は聖女を失って大騒ぎですけど私は悪くありませんよね?
※他サイトでも掲載中
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
初書籍
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
紙書籍も電子書籍も発売されております。
書籍は、月戸先生による可愛く美しいイラストと共にお楽しみいただけます。
紙書籍版はピンクの効いた可愛らしくも情熱的な表紙が目印です。
電子書籍版はブルーの効いた爽やかで可愛らしい表紙が目印となっております。
紙書籍のほうも帯を外せば爽やかバージョンになりますので、これからの暑くジメジメした季節への対策として一冊いかがでしょうか? (笑)
大幅加筆・改稿を経て書籍いたしましたので、アルファポリスサイト連載時とは、また違った魅力のある作品となっております。
文字数が足りないと困ると思って頑張った結果、ちょっとボリュームが……となっているような気がしますが。(笑)
書籍を手売りする感覚でアルファポリスサイトでの投稿も頑張っていこうと思っています。
書籍
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
と著者
天田れおぽん
を、どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
《完結》国を追放された【聖女】は、隣国で天才【錬金術師】として暮らしていくようです
黄舞
恋愛
精霊に愛された少女は聖女として崇められる。私の住む国で古くからある習わしだ。
驚いたことに私も聖女だと、村の皆の期待を背に王都マーベラに迎えられた。
それなのに……。
「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」
私よりも何年も前から聖女として称えられているローザ様の一言で、私は国を追放されることになってしまった。
「もし良かったら同行してくれないか?」
隣国に向かう途中で命を救ったやり手の商人アベルに色々と助けてもらうことに。
その隣国では精霊の力を利用する技術を使う者は【錬金術師】と呼ばれていて……。
第五元素エーテルの精霊に愛された私は、生まれた国を追放されたけれど、隣国で天才錬金術師として暮らしていくようです!!
この物語は、国を追放された聖女と、助けたやり手商人との恋愛話です。
追放ものなので、最初の方で3話毎にざまぁ描写があります。
薬の効果を示すためにたまに人が怪我をしますがグロ描写はありません。
作者が化学好きなので、少し趣味が出ますがファンタジー風味を壊すことは無いように気を使っています。
他サイトでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる