37 / 131
前編
37 地下処理場 3
しおりを挟む
「なんだあんた食わねえのか…ならいいや、あんたの分浮くしな!」
あんな物で喜んでいる者が信じられない…
フィスティアはただフルフルフルと首を振って食事は取らなかった。恐ろしい事に後から知った事は一日の食事があの朝の一度きりという事だ。そして外にいた者達は敵国の捕虜だと言う。小屋の中にいた者達はガーナード国の犯罪人や奴隷達…あれでまだ待遇が良かったのだ。食べ物を一日中口にする事が出来ない者が出るなかで彼等には小屋と布団、食事が与えられるのだから。それでもガーナード国側の者達も皆揃って痩せ細っている……ここは真面に人を生かそうとしない所だと判断した方が良さそうだった………
食事が終わればもうすっかり夜が明けている。次は問題の仕事だろう。食べ終わった者達はノロノロと立ち上がり部屋の角へ寄せられていた荷車を取りに行く。あれで荷を運ぶ様なのだが、その肝心の荷物はどこか?辺りを見回しているフィスティアの目に、外から来た者がフラリフラリと部屋の中心、先ほどパンが投げ入れられた場所へと歩いて行くのが見えた。彼は這いつくばって床を舐める様に見つめ、何やら落ちているパン屑を拾っているらしかった…浅ましい程の姿に怖気を覚えてしまうが、生きる為に飢えを満たそうとするその者にはそうするしかなかったのだろう…食事を口にはしていないフィスティアの方がまだ体力が有り余り、申し訳ない様な気さえする。
「おい!新入り!お前もこいつと一緒に荷台を動かせ!」
ザッカルがボウっと周りを見つめていたフィスティアに声をかけてくる。こいつ、と言われたのはまだまだ少年の様に見えた。この子も酷く痩せていて子供らしい表情もない。実際の年齢は分からないが10歳ほどの子供に見えた。その子は小さな体を使って、大人が寝そべってもまだあまりありそうな大きな荷車を動かそうと必死になっていた。
「よく聞け!働かない者は外に追い出す、明日の食事はないと思え!」
そう告げたザッカルの手には柄の付いた長い鞭が握り締められていた。
「それともう一度言うが、逃亡は無理だ。ここは王家の森で猛獣が離してある!一定の距離での移動ならば騎士と狩人が猛獣を寄せ付けないが、それ以上進めばお前らなんかは直ぐ餌食になるぞ!!」
恐ろしい事だ。王家の森があるのは知っていたが、まさか猛獣が離してあるとはフィスティアも聞いた事がなかったからだ。外に通じていると言っても、これでは逃げる事も叶わないのだろう。ここにいる者はこんな苦境でも歯を食いしばって生きていくしかない。
「さあ!荷が来るぞ!お前らの仕事だ!今日もたっぷりと運べ!!」
ザッカルの説明後、覇気もやる気も生気もない者達の目の前にそれは落とされて来た…………
あんな物で喜んでいる者が信じられない…
フィスティアはただフルフルフルと首を振って食事は取らなかった。恐ろしい事に後から知った事は一日の食事があの朝の一度きりという事だ。そして外にいた者達は敵国の捕虜だと言う。小屋の中にいた者達はガーナード国の犯罪人や奴隷達…あれでまだ待遇が良かったのだ。食べ物を一日中口にする事が出来ない者が出るなかで彼等には小屋と布団、食事が与えられるのだから。それでもガーナード国側の者達も皆揃って痩せ細っている……ここは真面に人を生かそうとしない所だと判断した方が良さそうだった………
食事が終わればもうすっかり夜が明けている。次は問題の仕事だろう。食べ終わった者達はノロノロと立ち上がり部屋の角へ寄せられていた荷車を取りに行く。あれで荷を運ぶ様なのだが、その肝心の荷物はどこか?辺りを見回しているフィスティアの目に、外から来た者がフラリフラリと部屋の中心、先ほどパンが投げ入れられた場所へと歩いて行くのが見えた。彼は這いつくばって床を舐める様に見つめ、何やら落ちているパン屑を拾っているらしかった…浅ましい程の姿に怖気を覚えてしまうが、生きる為に飢えを満たそうとするその者にはそうするしかなかったのだろう…食事を口にはしていないフィスティアの方がまだ体力が有り余り、申し訳ない様な気さえする。
「おい!新入り!お前もこいつと一緒に荷台を動かせ!」
ザッカルがボウっと周りを見つめていたフィスティアに声をかけてくる。こいつ、と言われたのはまだまだ少年の様に見えた。この子も酷く痩せていて子供らしい表情もない。実際の年齢は分からないが10歳ほどの子供に見えた。その子は小さな体を使って、大人が寝そべってもまだあまりありそうな大きな荷車を動かそうと必死になっていた。
「よく聞け!働かない者は外に追い出す、明日の食事はないと思え!」
そう告げたザッカルの手には柄の付いた長い鞭が握り締められていた。
「それともう一度言うが、逃亡は無理だ。ここは王家の森で猛獣が離してある!一定の距離での移動ならば騎士と狩人が猛獣を寄せ付けないが、それ以上進めばお前らなんかは直ぐ餌食になるぞ!!」
恐ろしい事だ。王家の森があるのは知っていたが、まさか猛獣が離してあるとはフィスティアも聞いた事がなかったからだ。外に通じていると言っても、これでは逃げる事も叶わないのだろう。ここにいる者はこんな苦境でも歯を食いしばって生きていくしかない。
「さあ!荷が来るぞ!お前らの仕事だ!今日もたっぷりと運べ!!」
ザッカルの説明後、覇気もやる気も生気もない者達の目の前にそれは落とされて来た…………
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
逆行転生した悪役令嬢だそうですけれど、反省なんてしてやりませんわ!
九重
恋愛
我儘で自分勝手な生き方をして処刑されたアマーリアは、時を遡り、幼い自分に逆行転生した。
しかし、彼女は、ここで反省できるような性格ではなかった。
アマーリアは、破滅を回避するために、自分を処刑した王子や聖女たちの方を変えてやろうと決意する。
これは、逆行転生した悪役令嬢が、まったく反省せずに、やりたい放題好き勝手に生きる物語。
ツイッターで先行して呟いています。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません
との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗
「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ!
あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。
断罪劇? いや、珍喜劇だね。
魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。
留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。
私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で?
治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな?
聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。
我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし?
面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。
訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結まで予約投稿済み
R15は念の為・・
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
侯爵家の令嬢であるシエルは、愛人との間に生まれたせいで、父や義母、異母姉妹から酷い仕打ちをされる生活を送っていた。
そんなシエルには婚約者がいた。まるで本物の兄のように仲良くしていたが、ある日突然彼は亡くなってしまった。
悲しみに暮れるシエル。そこに姉のアイシャがやってきて、とんでもない発言をした。
「ワタクシ、とある殿方と真実の愛に目覚めましたの。だから、今ワタクシが婚約している殿方との結婚を、あなたに代わりに受けさせてあげますわ」
こうしてシエルは、必死の抗議も虚しく、身勝手な理由で、新しい婚約者の元に向かうこととなった……横暴で散々虐げてきた家族に、復讐を誓いながら。
新しい婚約者は、社交界でとても恐れられている相手。うまくやっていけるのかと不安に思っていたが、なぜかとても溺愛されはじめて……!?
⭐︎全三十九話、すでに完結まで予約投稿済みです。11/12 HOTランキング一位ありがとうございます!⭐︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる