[完]出来損ない王妃が死体置き場に捨てられるなんて、あまりにも雑で乱暴です

小葉石

文字の大きさ
上 下
34 / 131
前編

34 王妃の行く末

しおりを挟む
 王ルワンの命を受け、王妃フィスティアは自室へと下がる。事実上の監禁状態となるが周囲の者達は王ルワンの気持ちが落ち着きこの状態が解除される事を密かに願っていた。他国を絡めた動乱が続く中、まさかの王妃が廃妃される様なことになっては他国に付け入られる隙を作る事にもなる。それだけはなんとしても避けたいところではあった。

「……出ろ…!」

 朝も明けぬ暗い内にフィスティアの処遇は決まる。王ルワンの決意は変わらず、王妃在籍のままフィスティアは地下処理場へと投げ入れられる事になり、数名の騎士達が突然に王妃の寝室に訪れる。表向きの王妃フィスティアは病床につく事になる。が、聖女の力健在のため次なる王妃の選定はせず…これが王ルワンの考えであった。

 命を受けた騎士ならばその命を遂行しなくてはならない。王妃フィスティアの寝室の前には、苦悶の表情を隠そうともしないまま居並ぶ騎士もいた。

 フィスティアは着ていた上等なドレスを剥ぎ取られ、質素な室内着のみになる。そのまま騎士達に囲まれてまだ誰も目覚めていない城内を静かに地下に向かって歩いて行った。

 王妃フィスティアに関わった者達はどうしたのか…王ルワンの怒りは王妃の生死を問わぬ処遇に処すだけでは鎮まらず、聖女の制定を行なった聖女の墓守の一族の長であるイグランは断首。フィスティアの実家であるドルン侯爵家はその地位の剥奪はしないものの事実上領地での永久蟄居を命じられた。ドルン侯爵はフィスティアの処罰が密やかに下された折にも城への登城は許されず、今後フィスティアの生死についても知ることさえも叶わない…

「謝罪すら…させてもらえないのですね……」

 王妃の寝室に篭っていた時、心休まる事もなく王ルワンの事を考えていたフィスティア。自分は不甲斐無さに打ちのめされて、友を失い悲しみ苦しむ夫の慰めも謝罪する為に面会する事さえも叶わなかった………

「ルワン様…」
 
 地下へと降りる階段で一度だけフィスティアは城内を振り返った。きっともう、生きてここを見る事はないのだろう……そんな少しの感傷も任務を遂行しようとする騎士は許してはくれないらしい…

「早く歩け!!」

 フィスティアが立ち止まると腕を掴み、半ば引きずる様にして地下へとフィスティアを引き立てて行った…

 地下処理場へは二箇所入り口がある。一つは遺体を投げ入れる穴、一つは役人や係りの者が出入りする扉。石造りの壁や頑丈な木造りの扉はどの部屋とも代わり映えがない。が、木造りの扉が開けられた時にここがただの室内では無いことがよく分かった。室内は殺風景で家具らしいものは何もなく、ただ広いその部屋には押し車が何車か無造作に並んでいるのが見えた。室内であろうはずなのに入った先には壁はなくそのまま外に通じて出ていくことができる様になっている。目の端には小さな小屋の様な物が見えて、部屋の天井にあたる部分にはポッカリと穴が開いていた。 

「ここだ、入れ!」

 半ば投げ入れられる様にして腕を掴まれたフィスティアは部屋の床へと倒れ込む…


 ここ………?


 廃棄所と言われる地下処理場では何というか、部屋とも外とも違う異質な雰囲気で匂いまでも違った……
 
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

義姉でも妻になれますか? 第一王子の婚約者として育てられたのに、候補から外されました

甘い秋空
恋愛
第一王子の婚約者として育てられ、同級生の第二王子のお義姉様だったのに、候補から外されました! え? 私、今度は第二王子の義妹ちゃんになったのですか! ひと風呂浴びてスッキリしたら…… (全4巻で完結します。サービスショットがあるため、R15にさせていただきました。)

第一王女アンナは恋人に捨てられて

岡暁舟
恋愛
第一王女アンナは自分を救ってくれたロビンソンに恋をしたが、ロビンソンの幼馴染であるメリーにロビンソンを奪われてしまった。アンナのその後を描いてみます。「愛しているのは王女でなくて幼馴染」のサイドストーリーです。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

《完結》国を追放された【聖女】は、隣国で天才【錬金術師】として暮らしていくようです

黄舞
恋愛
 精霊に愛された少女は聖女として崇められる。私の住む国で古くからある習わしだ。  驚いたことに私も聖女だと、村の皆の期待を背に王都マーベラに迎えられた。  それなのに……。 「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」  私よりも何年も前から聖女として称えられているローザ様の一言で、私は国を追放されることになってしまった。 「もし良かったら同行してくれないか?」  隣国に向かう途中で命を救ったやり手の商人アベルに色々と助けてもらうことに。  その隣国では精霊の力を利用する技術を使う者は【錬金術師】と呼ばれていて……。  第五元素エーテルの精霊に愛された私は、生まれた国を追放されたけれど、隣国で天才錬金術師として暮らしていくようです!!  この物語は、国を追放された聖女と、助けたやり手商人との恋愛話です。  追放ものなので、最初の方で3話毎にざまぁ描写があります。  薬の効果を示すためにたまに人が怪我をしますがグロ描写はありません。  作者が化学好きなので、少し趣味が出ますがファンタジー風味を壊すことは無いように気を使っています。 他サイトでも投稿しています。

今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて

nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…

処理中です...