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前編
20 聖女の役割
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国境沿いでの小競り合いならば今までに数え切れない程起こして来ている両国であっても、さすがに王から遣わされた外交官を処刑に処する暴挙に出た国はアノモラ国の他なかった。
臨戦態勢が続くアナモラ国境付近に兵や騎士の助けになるべく癒しの力の有る聖女が送られることになった。彼女達はガーナード城に行儀見習いとして上がっている貴族の娘達であって前線には出ないものの、傷つき重症を負った騎士達を早急に助ける為に駐屯地で待機する。個人によって力の差はあるものの皆傷の回復における聖女の力を発揮する者達ばかりだ。
「何名も派遣されて行きましたね……」
「その様ですね…」
王妃と言う立場が無かったらフィスティア自身も戦地となる場所へ送られていたかもしれなかった。皆んなが無事に帰る様に、何事も起こらぬ様にとただ祈ることしか出来ない自分がもどかしい……
「私も……」
「なりませんよ……!」
フィスティアが言いかけた言葉をニーナほ即座に静止する。王妃が戦場に打って出るなど前代未聞…国王と王族を守る立場にある方がそんな危険を起こす事は許されよう筈もない。
「……分かっています………私にも王城での役割がきっとあるのでしょうから…」
誰しもが今後の両国の出方を固唾を飲んで見守る中、フィスティアも自分のやるべき事を見定めなくてはならない。手始めにハンガへ嫁いだハウアラ側妃に、アナモラ国王へ落ち着いて対話をされる様にハンガ国王から働きかけてほしい旨の手紙を送る。またアナモラ国隣国にあるかつてセルンシト国に嫁いだセルンシト王妃であるダライナ妃にも同様に…なんとか、ハンガ国とセルンシト国がアナモラ国を抑えてくれるのならば、後はクトルド国の動向に注意すれば横から寝首をかかれる事はないだろうから……
「戦況はどの様に…?」
「未だにどちらも動かないとか…」
「まぁ、前線に送られたのは伯爵家のご令嬢とか…!?」
「恐ろしい事ですわね……我が国の騎士や兵士が守りきれるでしょうか?」
「ま、そんな、この国はどうなってしまいますの?」
城で開かれた王妃の茶会に招かれた夫人や令嬢の口から出て来るのは戦況と今後の行く末…女はただ受け身になって流れに流されて翻弄されて行くだけで、自分達の身の上の心配ばかりしてしまうのも無理はない。
「皆さん…心ここに在らずですわね?心配になる事も十分に分かりますが、もしや今、御夫君や兄弟の方が騎士として戦地に赴いている方も、お知り合いがこれから行こうとされる方もいらっしゃるのでは?」
王妃フィスティアの一言で、夫人や令嬢達の囁きが静かになった。
「我が国にも周りに味方が居ないわけではありませんし、手を尽くしてこれ以上の戦禍が広がらぬ様に手を打つべきだと思うのです。そして、身を挺して国境を守ってくれている方達の無事を祈りましょう?」
「……王妃のおっしゃる通りですわ……」
「ええ………私の従兄弟が騎士として出立しましたの……」
「まぁ……ご無事を心からお祈りしますわ…」
「私、他国に友人がたくさん居ますの!」
留学経験のある令嬢は言う。
「このガーナード国が何の為にあるのか、聖女が他国の人々にどんな働きをしてきたのか、手紙に書いてどんどん出してみます!」
貴族令嬢の友人はまた、同位くらいの貴族が多い。そして国の執政へ意見を言えるのもまた貴族。王への意見をガーナード国を追い詰めないものへと変えてもらえる様に各国に働きかけると言う…
傷や病気を治せる者は治療に、体を強くすることが出来る者は子供達の病気予防に、土地を豊かにすることが出来る者は農地改革にとガーナード国に留まらずに聖女が他国でも力を貸してきたのもまた事実なのだから……
臨戦態勢が続くアナモラ国境付近に兵や騎士の助けになるべく癒しの力の有る聖女が送られることになった。彼女達はガーナード城に行儀見習いとして上がっている貴族の娘達であって前線には出ないものの、傷つき重症を負った騎士達を早急に助ける為に駐屯地で待機する。個人によって力の差はあるものの皆傷の回復における聖女の力を発揮する者達ばかりだ。
「何名も派遣されて行きましたね……」
「その様ですね…」
王妃と言う立場が無かったらフィスティア自身も戦地となる場所へ送られていたかもしれなかった。皆んなが無事に帰る様に、何事も起こらぬ様にとただ祈ることしか出来ない自分がもどかしい……
「私も……」
「なりませんよ……!」
フィスティアが言いかけた言葉をニーナほ即座に静止する。王妃が戦場に打って出るなど前代未聞…国王と王族を守る立場にある方がそんな危険を起こす事は許されよう筈もない。
「……分かっています………私にも王城での役割がきっとあるのでしょうから…」
誰しもが今後の両国の出方を固唾を飲んで見守る中、フィスティアも自分のやるべき事を見定めなくてはならない。手始めにハンガへ嫁いだハウアラ側妃に、アナモラ国王へ落ち着いて対話をされる様にハンガ国王から働きかけてほしい旨の手紙を送る。またアナモラ国隣国にあるかつてセルンシト国に嫁いだセルンシト王妃であるダライナ妃にも同様に…なんとか、ハンガ国とセルンシト国がアナモラ国を抑えてくれるのならば、後はクトルド国の動向に注意すれば横から寝首をかかれる事はないだろうから……
「戦況はどの様に…?」
「未だにどちらも動かないとか…」
「まぁ、前線に送られたのは伯爵家のご令嬢とか…!?」
「恐ろしい事ですわね……我が国の騎士や兵士が守りきれるでしょうか?」
「ま、そんな、この国はどうなってしまいますの?」
城で開かれた王妃の茶会に招かれた夫人や令嬢の口から出て来るのは戦況と今後の行く末…女はただ受け身になって流れに流されて翻弄されて行くだけで、自分達の身の上の心配ばかりしてしまうのも無理はない。
「皆さん…心ここに在らずですわね?心配になる事も十分に分かりますが、もしや今、御夫君や兄弟の方が騎士として戦地に赴いている方も、お知り合いがこれから行こうとされる方もいらっしゃるのでは?」
王妃フィスティアの一言で、夫人や令嬢達の囁きが静かになった。
「我が国にも周りに味方が居ないわけではありませんし、手を尽くしてこれ以上の戦禍が広がらぬ様に手を打つべきだと思うのです。そして、身を挺して国境を守ってくれている方達の無事を祈りましょう?」
「……王妃のおっしゃる通りですわ……」
「ええ………私の従兄弟が騎士として出立しましたの……」
「まぁ……ご無事を心からお祈りしますわ…」
「私、他国に友人がたくさん居ますの!」
留学経験のある令嬢は言う。
「このガーナード国が何の為にあるのか、聖女が他国の人々にどんな働きをしてきたのか、手紙に書いてどんどん出してみます!」
貴族令嬢の友人はまた、同位くらいの貴族が多い。そして国の執政へ意見を言えるのもまた貴族。王への意見をガーナード国を追い詰めないものへと変えてもらえる様に各国に働きかけると言う…
傷や病気を治せる者は治療に、体を強くすることが出来る者は子供達の病気予防に、土地を豊かにすることが出来る者は農地改革にとガーナード国に留まらずに聖女が他国でも力を貸してきたのもまた事実なのだから……
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