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前編
18 暫しの休息
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「お疲れの…ご様子ですね…?」
ガーナード国王城中庭、フティの花畑の横にあるカウチの上で連日激務の王は眠る。その表情には疲れが色濃く、フィスティア王妃を始めとして周囲の家臣達も王の健康を心から心配していたのだ。その王が、今そこで何故か仮眠をとっている。
「会議の方は落ち着いたのですか?」
連日部屋へは帰ってこない国王ルワンを心配しつつも、自分の空き時間を使ってフィスティアが中庭に足を進めてみれば国王ルワンは休息中……
「いえ……一応、落ち着くところまでには持って行ったと言えば言えるのですが…」
側にいた者のなんとも歯切れの悪い答え方だが…政に関しては白黒付けられない事も常ならば…安心して休息できる時間が取れる事こそが良い状況なのだろう。自分の手に持っていた日傘をそっと国王ルワンにかざし、静かにその横に腰掛けた。
「王妃殿下……お持ちします…」
国王ルワンの騎士ラートが進み出て、フィスティアから日傘を受け取った。側で静かにだが、話していても国王ルワンは目覚める様子さえ見せない……それだけ疲れているのだろう……
「…休憩をすると言われまして、直ぐにこちらに来たのです…」
「いつも、こちらにくるのですか?」
フィスティアが好きだと言った花畑の直ぐ横に…?フィスティアの目が愛おしそうに細められて国王ルワンを見つめる……風に撫でられ微かに揺れているサラリとした黒髪を優しく指で掬い取る。
国王ルワンに触れたのはいつぶりだろうか?夫婦なのだから、遠慮もなく触れてもいいはず…心配だと押しかけてでもベッドへと押し込めて休ませてしまえばいいだけのこと……けれど何故だか出来なかった…必死に戦おうとしている姿を見たら、出来なかった………
「…時折にございます。」
「そうなのですか……あっ……」
小さく肯くフィスティアが呟いた時に、国王ルワンの身体が傾いだ…ズルズルと倒れて行く上体をフィスティアは受け止めながら、国王ルワンの頭を自分の膝の上へと乗せる。
「王妃殿下…!」
側に付き添う騎士や侍女が慌てて側に来るが、フィスティアは人差し指を口に当てて、しーとする。
「…お休みになっていらっしゃるなら少しだけ…もう少しだけこうしていても良いでしょう?」
王城中庭に優しい風が吹き抜けていく中、国王夫妻は暫しの憩いの時を持つ…
「………ん……」
国王ルワンの瞼が揺れる…目を開けば、真上には王妃フィスティア………
「そこに、居たのか……フィスティア……」
「お目覚めですか?」
そっと国王ルワンからは大きな手がフィスティアへと伸ばされる…
「久しく、其方の顔を見ていなかった気がするな…」
「ええ…寂しゅうございましたわ……」
「すまない……もう少し…もう少し、したら…」
再び国王ルワンは目を瞑る。
「良いのです。ルワン様はルワン様のままで…私は貴方様の後に続いて行きますから。触れられなくても、寂しくてもルワン様の背中だけは見つめさせてくださいませね。」
国王ルワンが目を再び開けた時、花が綻ぶ様なフィスティアの笑顔…もう、何日も見ていなかった……
「あぁ…そうだ。其方はその様に笑うのだったな………」
忘れてはいけなかった…忘れたくは無かった…大切な、私だけの花………
ガーナード国王城中庭、フティの花畑の横にあるカウチの上で連日激務の王は眠る。その表情には疲れが色濃く、フィスティア王妃を始めとして周囲の家臣達も王の健康を心から心配していたのだ。その王が、今そこで何故か仮眠をとっている。
「会議の方は落ち着いたのですか?」
連日部屋へは帰ってこない国王ルワンを心配しつつも、自分の空き時間を使ってフィスティアが中庭に足を進めてみれば国王ルワンは休息中……
「いえ……一応、落ち着くところまでには持って行ったと言えば言えるのですが…」
側にいた者のなんとも歯切れの悪い答え方だが…政に関しては白黒付けられない事も常ならば…安心して休息できる時間が取れる事こそが良い状況なのだろう。自分の手に持っていた日傘をそっと国王ルワンにかざし、静かにその横に腰掛けた。
「王妃殿下……お持ちします…」
国王ルワンの騎士ラートが進み出て、フィスティアから日傘を受け取った。側で静かにだが、話していても国王ルワンは目覚める様子さえ見せない……それだけ疲れているのだろう……
「…休憩をすると言われまして、直ぐにこちらに来たのです…」
「いつも、こちらにくるのですか?」
フィスティアが好きだと言った花畑の直ぐ横に…?フィスティアの目が愛おしそうに細められて国王ルワンを見つめる……風に撫でられ微かに揺れているサラリとした黒髪を優しく指で掬い取る。
国王ルワンに触れたのはいつぶりだろうか?夫婦なのだから、遠慮もなく触れてもいいはず…心配だと押しかけてでもベッドへと押し込めて休ませてしまえばいいだけのこと……けれど何故だか出来なかった…必死に戦おうとしている姿を見たら、出来なかった………
「…時折にございます。」
「そうなのですか……あっ……」
小さく肯くフィスティアが呟いた時に、国王ルワンの身体が傾いだ…ズルズルと倒れて行く上体をフィスティアは受け止めながら、国王ルワンの頭を自分の膝の上へと乗せる。
「王妃殿下…!」
側に付き添う騎士や侍女が慌てて側に来るが、フィスティアは人差し指を口に当てて、しーとする。
「…お休みになっていらっしゃるなら少しだけ…もう少しだけこうしていても良いでしょう?」
王城中庭に優しい風が吹き抜けていく中、国王夫妻は暫しの憩いの時を持つ…
「………ん……」
国王ルワンの瞼が揺れる…目を開けば、真上には王妃フィスティア………
「そこに、居たのか……フィスティア……」
「お目覚めですか?」
そっと国王ルワンからは大きな手がフィスティアへと伸ばされる…
「久しく、其方の顔を見ていなかった気がするな…」
「ええ…寂しゅうございましたわ……」
「すまない……もう少し…もう少し、したら…」
再び国王ルワンは目を瞑る。
「良いのです。ルワン様はルワン様のままで…私は貴方様の後に続いて行きますから。触れられなくても、寂しくてもルワン様の背中だけは見つめさせてくださいませね。」
国王ルワンが目を再び開けた時、花が綻ぶ様なフィスティアの笑顔…もう、何日も見ていなかった……
「あぁ…そうだ。其方はその様に笑うのだったな………」
忘れてはいけなかった…忘れたくは無かった…大切な、私だけの花………
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