17 / 131
前編
17 煙立つ
しおりを挟む
ガーナード国西にあるクトルド国、南東にあるアノモラ国にはここ何年も王家に聖女の輿入れは無い。両国は聖女に対する敬意を払ってはくれるものの、ガーナード国に対してはやや見下した対応を取って来ており、何かに付けて言いがかりの様な要望を出してくる。
一年前からガーナード国が提案している国王暗殺に関する協議にも協力参加はせず、逆に謂れのない大罪を押し付けてきたと反撃の体制に出ている。そして多大に名誉を傷つけたとして、今後この様なことがない様にガーナード国内に各国の自治区を造れとの聞き入れることのできない要望を出してきた位だ。
「王、どうされますか?この二国の要望は国が滅びる程の打撃を受けても了承するには屈辱的ではありますがね?」
連日連夜に渡る会議に些か嫌気が差してきているのだろう、宰相ディンクの発言はやや投げやりなものにも聞こえてくる。答えるとするならばこの案件は全てが却下、だ。もう既にガーナード国としての答えは出てもいるのに、なぜ、ここまで長引かせる必要があるのか…そちらの方が疑問であって、ここに出席している大臣他役職者を問い詰めてしまいたい……
「落ち着け、ディンク…まさか、この様な茶番に踊らされている者がいるとは思えないのだが……これは、何度目の採決か?」
「陛下、もう今日で五度目の採決になりますよ?ええ、城内に居る全ての貴族から決を取る訳ですからそれはそれは無駄な時間を使用してまでこのくだらない案に縋らなくてはならないのですか?」
「しかし、ディンク殿!この二国の要望を跳ね返したら…武力で実力行使に出てくるでしょう!それ位にこの度の件は両国を怒らせてしまっているのです!」
「何を言うのだ!一国の王暗殺だぞ!!その容疑者を他国が匿うなど、持っての他ではないか!友好を築くどころかこの両国は毒の牙を隠し持つ毒蛇ではないか!」
「そうだ!両国の言うようになぜ、我らの地を明け渡さねばならぬのだ!」
「しかし!このままでは戦に!!それだけは何としても避けなければ!!」
クトルド国、アノモラ国の要望を頑として跳ね返そうと言う者、戦に突入だけは何としても避けたい者の意見がほぼ真っ二つに割れてしまっている。勿論、両国には外務官を何度も派遣し、ガーナード国の言い分は十二分に伝えさせてもらって来た。その上での自治区提供とは…先王の方針で普段は戦を回避しようとする保守派の人々が多い中、今回の案件はそんな人々にも飲めるものではなかった様だ。
「まだだ……二国の要望は当然受けぬが、まだこちらから打って出るには時期尚早…ディンク、どう思う?」
「我が王…御意にございます。」
国王ルワンは他国にも屈さぬ心持ちである。が、今はまだ動く時期では無い…
一年前からガーナード国が提案している国王暗殺に関する協議にも協力参加はせず、逆に謂れのない大罪を押し付けてきたと反撃の体制に出ている。そして多大に名誉を傷つけたとして、今後この様なことがない様にガーナード国内に各国の自治区を造れとの聞き入れることのできない要望を出してきた位だ。
「王、どうされますか?この二国の要望は国が滅びる程の打撃を受けても了承するには屈辱的ではありますがね?」
連日連夜に渡る会議に些か嫌気が差してきているのだろう、宰相ディンクの発言はやや投げやりなものにも聞こえてくる。答えるとするならばこの案件は全てが却下、だ。もう既にガーナード国としての答えは出てもいるのに、なぜ、ここまで長引かせる必要があるのか…そちらの方が疑問であって、ここに出席している大臣他役職者を問い詰めてしまいたい……
「落ち着け、ディンク…まさか、この様な茶番に踊らされている者がいるとは思えないのだが……これは、何度目の採決か?」
「陛下、もう今日で五度目の採決になりますよ?ええ、城内に居る全ての貴族から決を取る訳ですからそれはそれは無駄な時間を使用してまでこのくだらない案に縋らなくてはならないのですか?」
「しかし、ディンク殿!この二国の要望を跳ね返したら…武力で実力行使に出てくるでしょう!それ位にこの度の件は両国を怒らせてしまっているのです!」
「何を言うのだ!一国の王暗殺だぞ!!その容疑者を他国が匿うなど、持っての他ではないか!友好を築くどころかこの両国は毒の牙を隠し持つ毒蛇ではないか!」
「そうだ!両国の言うようになぜ、我らの地を明け渡さねばならぬのだ!」
「しかし!このままでは戦に!!それだけは何としても避けなければ!!」
クトルド国、アノモラ国の要望を頑として跳ね返そうと言う者、戦に突入だけは何としても避けたい者の意見がほぼ真っ二つに割れてしまっている。勿論、両国には外務官を何度も派遣し、ガーナード国の言い分は十二分に伝えさせてもらって来た。その上での自治区提供とは…先王の方針で普段は戦を回避しようとする保守派の人々が多い中、今回の案件はそんな人々にも飲めるものではなかった様だ。
「まだだ……二国の要望は当然受けぬが、まだこちらから打って出るには時期尚早…ディンク、どう思う?」
「我が王…御意にございます。」
国王ルワンは他国にも屈さぬ心持ちである。が、今はまだ動く時期では無い…
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
義姉でも妻になれますか? 第一王子の婚約者として育てられたのに、候補から外されました
甘い秋空
恋愛
第一王子の婚約者として育てられ、同級生の第二王子のお義姉様だったのに、候補から外されました! え? 私、今度は第二王子の義妹ちゃんになったのですか! ひと風呂浴びてスッキリしたら…… (全4巻で完結します。サービスショットがあるため、R15にさせていただきました。)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
第一王女アンナは恋人に捨てられて
岡暁舟
恋愛
第一王女アンナは自分を救ってくれたロビンソンに恋をしたが、ロビンソンの幼馴染であるメリーにロビンソンを奪われてしまった。アンナのその後を描いてみます。「愛しているのは王女でなくて幼馴染」のサイドストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
侍女から第2夫人、そして……
しゃーりん
恋愛
公爵家の2歳のお嬢様の侍女をしているルイーズは、酔って夢だと思い込んでお嬢様の父親であるガレントと関係を持ってしまう。
翌朝、現実だったと知った2人は親たちの話し合いの結果、ガレントの第2夫人になることに決まった。
ガレントの正妻セルフィが病弱でもう子供を望めないからだった。
一日で侍女から第2夫人になってしまったルイーズ。
正妻セルフィからは、娘を義母として可愛がり、夫を好きになってほしいと頼まれる。
セルフィの残り時間は少なく、ルイーズがやがて正妻になるというお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
《完結》国を追放された【聖女】は、隣国で天才【錬金術師】として暮らしていくようです
黄舞
恋愛
精霊に愛された少女は聖女として崇められる。私の住む国で古くからある習わしだ。
驚いたことに私も聖女だと、村の皆の期待を背に王都マーベラに迎えられた。
それなのに……。
「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」
私よりも何年も前から聖女として称えられているローザ様の一言で、私は国を追放されることになってしまった。
「もし良かったら同行してくれないか?」
隣国に向かう途中で命を救ったやり手の商人アベルに色々と助けてもらうことに。
その隣国では精霊の力を利用する技術を使う者は【錬金術師】と呼ばれていて……。
第五元素エーテルの精霊に愛された私は、生まれた国を追放されたけれど、隣国で天才錬金術師として暮らしていくようです!!
この物語は、国を追放された聖女と、助けたやり手商人との恋愛話です。
追放ものなので、最初の方で3話毎にざまぁ描写があります。
薬の効果を示すためにたまに人が怪我をしますがグロ描写はありません。
作者が化学好きなので、少し趣味が出ますがファンタジー風味を壊すことは無いように気を使っています。
他サイトでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる