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131 相対
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コツコツコツコツ、数人分の靴音が狭い通路に響き渡る。
通路には明かりがない。無いはずなのに、暗くもなく、足元に気を付けなければいけない事もない。通路に入る直前にトランジェスが光る何かを飛ばしているのが見えたが、それのお陰だろうか?
永遠とも言える様な長い道のりに思えた。いや、思えただけでこれもトランジェスが目眩しに何かしたのだろうか?
「もう直ぐです……もう直ぐ、会えるね…」
「トランジェス様?何方に?」
先程、逢いたい人がいると話していた、その人物がこの奥に?人が入らない様に封じてあったであろうここにどうやって?
突然、目の前が開ける………
洞窟?恐ろしいほどの大きな空洞が目の前に広がった…一瞬外に出たのかと思ったが、視線を周囲に巡らすと岩肌は包み込む様にこの巨大な空間を覆っている。
「大きい……何という空間なのかしら……?」
「この様な景色が見れるなんて…」
この景色を見るだけでも、何日もかけてゴアラに来る価値があろうと思われる程、素晴らしい物だ。トランジェスの放った光のせいか、光を受けた岩壁は光を白く反射させこの空間を更に広く美しく見せてくれている。
「それも、ここまでだけどね?」
突然に聞こえた若い男の声?
ババッと、サザーニャの周囲を女騎士が囲む。一糸乱れぬ動きは流石と褒めて然るべきほど息があっていた。
「やはり、来ましたか?」
「……なんか、楽しそうな事になってるじゃないか?古の魔法使い?」
サザーニャも声の方を向く。少年?どこかで見た様な?まだ、十分に少年と思わしき美麗な顔立ちの少年が上方の岩壁の一部に腰掛けていた。
「どなた、です?」
どこと無く、いや、まさかとの思いを振り切る事もできずにじっと少年を見つめるサザーニャ。
「初めまして、かな?カザンシャルの第一皇女様?」
「私をご存知なのですね?では、何処ぞの王族の方とお見受けいたしますが?」
「良く知っていると思っていたんだけど?僕は、アルフィス。兄上は話した事なかったのかな?」
キョトンと首を傾げる様はまだまだ幼さが残る。
しかし、この者は兄上と言った。やはり、シュトラインの弟君?どこと無く、面影が有るだろうか?
「もしや、シュトライン様の…?」
「あぁ、貴方と兄上が許嫁だったのは幼い一時だけでしたものね?では、他家へ出されていた僕とは会った事も無かったでしょうね。知らないのも仕方ないか…」
やはり、弟君…されど少しでも面影を追って見つめてしまえば、固めてきた覚悟が揺さぶられる…
「シュトライン様の弟君が、なぜこの様な所に?」
「それは、こっちの台詞だろう?良く考えて?貴方達は不法侵入者だし、そこの魔法使いはそれを手引きする裏切り者だ。王家の威厳を守る為、王族に連なる者が討伐に赴いても何ら不思議はないよね?」
討伐……スッと背中に冷たい汗が伝っていく。
パチンッアルフィスの指が鳴る。
どこに隠れていたのか、隠し扉でも有るのか、音と同時に複数の兵士がサザーニャ達を囲み込んだ。
「残念だよ?トランジェス…第一皇女はどうか知らないが、お前はかなり面白かったのに。馬鹿なことをしてくれたものだね?」
一気に張り詰めた空気が辺りに漂う。兵士が間合いを詰めようとすれば、女騎士も隙なく切り返す。
「良いのですか?アルフィス卿?貴方は城で大人しくしているように言われているはずですよ?」
剣を向けて来る剣士の剣を易々と避けながらトランジェスが柔らかく問えば、命令を守らずここに来ている兵士の剣先が鈍り、数名がたじろぐ。
「構わないよ?お前達。侵入者を排除出来ればそれで全て終わりだ。」
サザーニャの護衛騎士達も流石に良く応戦している。不安なく任せられるのはそれだけ彼女達が優秀な剣士で有ることの証。
「へぇ、魔法使いのくせに剣も使えるなんて反則だね、トランジェス。」
反則を指摘した割には、アルフィスは嬉しそうな顔だ。
「僕さ、お前と一度思い切りやりたかったんだよ…」
素晴らしいプレゼントをもらった子供のように満面の笑顔を見せて、アルフィスは立っていた岩壁から飛び降りてきた。
ガキン!!
アルフィスの剣とトランジェスの剣が激しくぶつかる。高所から一気に飛び降りて来た所は、サザーニャの真上だ。トランジェスは後ろ手にサザーニャを庇う形でアルフィスの剣を受けた。
「ねぇ、トランジェス?お前も知っているように、魔力の効かないこの僕に対して、お前は足枷を付けながら戦う事になるんだよ?」
足枷……指摘されるまでもなく、この場で戦う事に対してはお荷物同然のサザーニャの事を言っているのだ。
バッ!
サザーニャはトランジェスの側から一気に走り去り距離を取る。自分だけが守られて、皆の足を引っ張るわけには行かないのだ!
「私の事はお気になさらずに!!足を引くようならば自らの命位断って見せます!」
「へぇ、気が強いなぁ。流石だねぇ。」
「命を断つにはまだまだ早いですよ、お嬢さん。本懐を、遂げるのでしょう!!」
ガチンッ!!叫ぶと同時に当たりは白い靄に包まれた。
通路には明かりがない。無いはずなのに、暗くもなく、足元に気を付けなければいけない事もない。通路に入る直前にトランジェスが光る何かを飛ばしているのが見えたが、それのお陰だろうか?
永遠とも言える様な長い道のりに思えた。いや、思えただけでこれもトランジェスが目眩しに何かしたのだろうか?
「もう直ぐです……もう直ぐ、会えるね…」
「トランジェス様?何方に?」
先程、逢いたい人がいると話していた、その人物がこの奥に?人が入らない様に封じてあったであろうここにどうやって?
突然、目の前が開ける………
洞窟?恐ろしいほどの大きな空洞が目の前に広がった…一瞬外に出たのかと思ったが、視線を周囲に巡らすと岩肌は包み込む様にこの巨大な空間を覆っている。
「大きい……何という空間なのかしら……?」
「この様な景色が見れるなんて…」
この景色を見るだけでも、何日もかけてゴアラに来る価値があろうと思われる程、素晴らしい物だ。トランジェスの放った光のせいか、光を受けた岩壁は光を白く反射させこの空間を更に広く美しく見せてくれている。
「それも、ここまでだけどね?」
突然に聞こえた若い男の声?
ババッと、サザーニャの周囲を女騎士が囲む。一糸乱れぬ動きは流石と褒めて然るべきほど息があっていた。
「やはり、来ましたか?」
「……なんか、楽しそうな事になってるじゃないか?古の魔法使い?」
サザーニャも声の方を向く。少年?どこかで見た様な?まだ、十分に少年と思わしき美麗な顔立ちの少年が上方の岩壁の一部に腰掛けていた。
「どなた、です?」
どこと無く、いや、まさかとの思いを振り切る事もできずにじっと少年を見つめるサザーニャ。
「初めまして、かな?カザンシャルの第一皇女様?」
「私をご存知なのですね?では、何処ぞの王族の方とお見受けいたしますが?」
「良く知っていると思っていたんだけど?僕は、アルフィス。兄上は話した事なかったのかな?」
キョトンと首を傾げる様はまだまだ幼さが残る。
しかし、この者は兄上と言った。やはり、シュトラインの弟君?どこと無く、面影が有るだろうか?
「もしや、シュトライン様の…?」
「あぁ、貴方と兄上が許嫁だったのは幼い一時だけでしたものね?では、他家へ出されていた僕とは会った事も無かったでしょうね。知らないのも仕方ないか…」
やはり、弟君…されど少しでも面影を追って見つめてしまえば、固めてきた覚悟が揺さぶられる…
「シュトライン様の弟君が、なぜこの様な所に?」
「それは、こっちの台詞だろう?良く考えて?貴方達は不法侵入者だし、そこの魔法使いはそれを手引きする裏切り者だ。王家の威厳を守る為、王族に連なる者が討伐に赴いても何ら不思議はないよね?」
討伐……スッと背中に冷たい汗が伝っていく。
パチンッアルフィスの指が鳴る。
どこに隠れていたのか、隠し扉でも有るのか、音と同時に複数の兵士がサザーニャ達を囲み込んだ。
「残念だよ?トランジェス…第一皇女はどうか知らないが、お前はかなり面白かったのに。馬鹿なことをしてくれたものだね?」
一気に張り詰めた空気が辺りに漂う。兵士が間合いを詰めようとすれば、女騎士も隙なく切り返す。
「良いのですか?アルフィス卿?貴方は城で大人しくしているように言われているはずですよ?」
剣を向けて来る剣士の剣を易々と避けながらトランジェスが柔らかく問えば、命令を守らずここに来ている兵士の剣先が鈍り、数名がたじろぐ。
「構わないよ?お前達。侵入者を排除出来ればそれで全て終わりだ。」
サザーニャの護衛騎士達も流石に良く応戦している。不安なく任せられるのはそれだけ彼女達が優秀な剣士で有ることの証。
「へぇ、魔法使いのくせに剣も使えるなんて反則だね、トランジェス。」
反則を指摘した割には、アルフィスは嬉しそうな顔だ。
「僕さ、お前と一度思い切りやりたかったんだよ…」
素晴らしいプレゼントをもらった子供のように満面の笑顔を見せて、アルフィスは立っていた岩壁から飛び降りてきた。
ガキン!!
アルフィスの剣とトランジェスの剣が激しくぶつかる。高所から一気に飛び降りて来た所は、サザーニャの真上だ。トランジェスは後ろ手にサザーニャを庇う形でアルフィスの剣を受けた。
「ねぇ、トランジェス?お前も知っているように、魔力の効かないこの僕に対して、お前は足枷を付けながら戦う事になるんだよ?」
足枷……指摘されるまでもなく、この場で戦う事に対してはお荷物同然のサザーニャの事を言っているのだ。
バッ!
サザーニャはトランジェスの側から一気に走り去り距離を取る。自分だけが守られて、皆の足を引っ張るわけには行かないのだ!
「私の事はお気になさらずに!!足を引くようならば自らの命位断って見せます!」
「へぇ、気が強いなぁ。流石だねぇ。」
「命を断つにはまだまだ早いですよ、お嬢さん。本懐を、遂げるのでしょう!!」
ガチンッ!!叫ぶと同時に当たりは白い靄に包まれた。
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