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101 お客様
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もう夏の日差しが目に眩しいと思える中で、白く輝く大きな天幕が庭園に貼られた。
ここサウスバーゲン城南の庭園には、夏の花が綻び始めそろそろ見頃を迎えようとしている。
パザン国公爵令嬢を迎えての昼食会だが、表向きは国王と番の昼食にアレーネ嬢が同席する形をとる。
公爵令嬢の同席と聞いた今日のサウラはいつもより少し装いを整えていた。絹のような黒髪は緩く纏めあげており、涼やかに肩を覆うような水色のレースが使われたドレスは首からウエストまでが光沢を無くした群青の絹に銀の薔薇の刺繍入り、腰からは少し膨らみをつけた水色の絹が滑らかに足元を覆っている。アクセサリーは両耳のエメラルドの宝石のみだ。
サウラは余り派手な色を好まない。落ち着いた色合いを選ぶのだ。
本人は山育ちで流行も貴族の矜恃も分からないのでいつもはクローゼットの中の動きやすい物を選んでいるそうな。なので本日は特別なのだ。
ルーシウスにとって、綺麗に着飾ったサウラは勿論目の保養で喜びだが、サウラが出会った当時の村の服を着ていても、例え襤褸切れの様な粗末な服を着ていてもサウラがサウラであれば良い。サウラの魂を持った彼女で有れば十分だった。まあ、襤褸切れを着せるなんて事は絶対にしないだろうが。
サウラにはアレーネ嬢のことをパザンからの客人であり、あの事件のことは知らないようだと伝えてある。行儀見習い目的でサウスバーゲンに暫く逗留する事になると。
サウラをエスコートしながら、眩しい物を見つめた時のように目元が細くなって微笑んでしまう。サウラが貴族の機微に疎くて助かったと心から思うのだった。
「本日はお招きいただきましてありがとうございました。こんな素敵な席へ招いて貰えるとは思いませんでしたので恐縮しております。」
ルーシウスとサウラが席に着いて暫くするとアレーネは護衛と側仕えの侍女と共に天幕へ案内されて来た。
優雅な礼を披露し挨拶をすると着座を進められる。綺麗な所作の中に少しだけ視線が泳いでいたのはどうされたのだろう?
「サウスバーゲンには慣れたか?アレーネ嬢。急であったが同席頂き感謝する。此方は私の番のサウラだ。年齢も近いだろうから懇意にしてくれると嬉しいが。」
ペコリ、とゆっくりサウラも頭を下げる。
「こちらこそ宜しくお願いいたします。私の方こそ色々と教えを乞う為に参ったのです。サウラ様気を負わずどうぞアレーネとお呼びください。陛下、サウスバーゲン城の方々はとても良くして下さいます。滞在の許可を頂けて心から感謝していますわ。」
登城する者の安全の責は王家にあり。まして友好国の高位貴族なのだからサウスバーゲン側は頭ごなしに拒否する事は勿論出来ないのだ。
「アレーネ様お気遣い感謝いたします。それでは私の事もサウラとお呼びください。」
高位貴族と対面するのはこれで数度目だが、緊張はするし、慣れないものだ。
アレーネの姿は洗練された貴族そのもので容姿から立ち振る舞いまでサウラには輝いて見える。サザーニャ程の端正さは無いが、濃茶の瞳はその髪と同じくキラキラと輝いて見えるし、生成り地の布に鴇色の布を合わせたドレスは上品なデザインでメリハリのあるアレーネにとてもよく似合っている。色の薄い金髪の髪は編み込まれ後ろで一本に束ねられていた。
滲み出る煌びやかさというかサザーニャとは違う美しさがある。
ホウと溜息が出そうになる。女性の姿は個々の特徴に差はあれどこのように美しく輝く事が出来るとは。自身を飾ろうとは全く頭に無いサウラにとってはアレーネの姿は眼福であった。
「それにしても国王陛下、お噂通りに番様を娶られましたのね?その、失礼ながら先程は仲睦まじ気にしておられた所が目に入ってしまって…あの、ご無礼でしたら申し訳ありません。けれども見てしまったのを黙っているのもどうかと思いまして…」
輝いて見えた濃茶の瞳がソワソワと揺れ動き落ち着かないご様子。
それよりも何よりも、まだ娶られていないばかりか、返事すらしていません…以前この様な会話で騒ぎになってしまったので、大きく否定はしたいけど、ここはグッと発言を我慢してみよう。
「おや?何を見たのであろうか?」
ルーシウスは上機嫌でニコニコ笑顔だ。
サウラはアレーネと同様に所在なげに瞳を彷徨わせる
。何を見たのかよりもルーシウス様、まだ娶っていませんよ?
「あの、お座りになっている時に親しそうに手を握っていらっしゃいましたし、楽しそうにお話をしている時の目線がとてもお優しくて、思わず羨ましくて見入ってしまいましたの。」
このくらいであれば別にやましい所は無いだろう。未だ婚約者候補という立場を保っているルーシウスだが、あれから随分とサウラとの距離も縮まったと思っているのだ。
だが、如何せんアレーネは深層のご令嬢とも言える身分ある令嬢で、サウラもまだまだ恋愛に対しては子供の様だ。軽いスキンシップであっても恥ずかしさが勝ってしまう。
両名ともほんのりと頬を染めてサウラなどは居た堪れずに俯いてしまった。
ここサウスバーゲン城南の庭園には、夏の花が綻び始めそろそろ見頃を迎えようとしている。
パザン国公爵令嬢を迎えての昼食会だが、表向きは国王と番の昼食にアレーネ嬢が同席する形をとる。
公爵令嬢の同席と聞いた今日のサウラはいつもより少し装いを整えていた。絹のような黒髪は緩く纏めあげており、涼やかに肩を覆うような水色のレースが使われたドレスは首からウエストまでが光沢を無くした群青の絹に銀の薔薇の刺繍入り、腰からは少し膨らみをつけた水色の絹が滑らかに足元を覆っている。アクセサリーは両耳のエメラルドの宝石のみだ。
サウラは余り派手な色を好まない。落ち着いた色合いを選ぶのだ。
本人は山育ちで流行も貴族の矜恃も分からないのでいつもはクローゼットの中の動きやすい物を選んでいるそうな。なので本日は特別なのだ。
ルーシウスにとって、綺麗に着飾ったサウラは勿論目の保養で喜びだが、サウラが出会った当時の村の服を着ていても、例え襤褸切れの様な粗末な服を着ていてもサウラがサウラであれば良い。サウラの魂を持った彼女で有れば十分だった。まあ、襤褸切れを着せるなんて事は絶対にしないだろうが。
サウラにはアレーネ嬢のことをパザンからの客人であり、あの事件のことは知らないようだと伝えてある。行儀見習い目的でサウスバーゲンに暫く逗留する事になると。
サウラをエスコートしながら、眩しい物を見つめた時のように目元が細くなって微笑んでしまう。サウラが貴族の機微に疎くて助かったと心から思うのだった。
「本日はお招きいただきましてありがとうございました。こんな素敵な席へ招いて貰えるとは思いませんでしたので恐縮しております。」
ルーシウスとサウラが席に着いて暫くするとアレーネは護衛と側仕えの侍女と共に天幕へ案内されて来た。
優雅な礼を披露し挨拶をすると着座を進められる。綺麗な所作の中に少しだけ視線が泳いでいたのはどうされたのだろう?
「サウスバーゲンには慣れたか?アレーネ嬢。急であったが同席頂き感謝する。此方は私の番のサウラだ。年齢も近いだろうから懇意にしてくれると嬉しいが。」
ペコリ、とゆっくりサウラも頭を下げる。
「こちらこそ宜しくお願いいたします。私の方こそ色々と教えを乞う為に参ったのです。サウラ様気を負わずどうぞアレーネとお呼びください。陛下、サウスバーゲン城の方々はとても良くして下さいます。滞在の許可を頂けて心から感謝していますわ。」
登城する者の安全の責は王家にあり。まして友好国の高位貴族なのだからサウスバーゲン側は頭ごなしに拒否する事は勿論出来ないのだ。
「アレーネ様お気遣い感謝いたします。それでは私の事もサウラとお呼びください。」
高位貴族と対面するのはこれで数度目だが、緊張はするし、慣れないものだ。
アレーネの姿は洗練された貴族そのもので容姿から立ち振る舞いまでサウラには輝いて見える。サザーニャ程の端正さは無いが、濃茶の瞳はその髪と同じくキラキラと輝いて見えるし、生成り地の布に鴇色の布を合わせたドレスは上品なデザインでメリハリのあるアレーネにとてもよく似合っている。色の薄い金髪の髪は編み込まれ後ろで一本に束ねられていた。
滲み出る煌びやかさというかサザーニャとは違う美しさがある。
ホウと溜息が出そうになる。女性の姿は個々の特徴に差はあれどこのように美しく輝く事が出来るとは。自身を飾ろうとは全く頭に無いサウラにとってはアレーネの姿は眼福であった。
「それにしても国王陛下、お噂通りに番様を娶られましたのね?その、失礼ながら先程は仲睦まじ気にしておられた所が目に入ってしまって…あの、ご無礼でしたら申し訳ありません。けれども見てしまったのを黙っているのもどうかと思いまして…」
輝いて見えた濃茶の瞳がソワソワと揺れ動き落ち着かないご様子。
それよりも何よりも、まだ娶られていないばかりか、返事すらしていません…以前この様な会話で騒ぎになってしまったので、大きく否定はしたいけど、ここはグッと発言を我慢してみよう。
「おや?何を見たのであろうか?」
ルーシウスは上機嫌でニコニコ笑顔だ。
サウラはアレーネと同様に所在なげに瞳を彷徨わせる
。何を見たのかよりもルーシウス様、まだ娶っていませんよ?
「あの、お座りになっている時に親しそうに手を握っていらっしゃいましたし、楽しそうにお話をしている時の目線がとてもお優しくて、思わず羨ましくて見入ってしまいましたの。」
このくらいであれば別にやましい所は無いだろう。未だ婚約者候補という立場を保っているルーシウスだが、あれから随分とサウラとの距離も縮まったと思っているのだ。
だが、如何せんアレーネは深層のご令嬢とも言える身分ある令嬢で、サウラもまだまだ恋愛に対しては子供の様だ。軽いスキンシップであっても恥ずかしさが勝ってしまう。
両名ともほんのりと頬を染めてサウラなどは居た堪れずに俯いてしまった。
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