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82 合流
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「へぇ、道理で何時もより魔物が多いわけだ。」
「こいつがね~。今はなんとも無いな?」
「こんなのがゴロゴロあったらたまらないな。」
山岳ルートを抜け切り別の組と合流できたのは夜明け前。大幅な遅れの為、かなりやきもきさせた様で合流後は初顔合わせのソウと共に手荒い歓迎を受ける事になった。
今回6名チームは他国からの薬草買い付け商人とその護衛として麓の町へ入る。何年も前からこのスタイルで町には怪しまれる事もなく、すんなりと溶け込んでしまった。
町外れの森で用意してくれていた衣類に着替える。山岳ルートを越えるだけでも衣類は汚れるのに今回は魔物の返り血で怪しい程に汚れてしまっていたのでこれはありがたかった。
「これ一つで魔物何体できる?」
暗部隊員ストランス、今回は買い付け商人の主人としてここにいる。濃茶の髪は長く、緩くだが綺麗にまとめて後ろで結えている。瞳は濃い紫、ジッと値踏みする様に魔法石を見つめている。暗部の中でも年長者にあたる。
「さて?シエラ様の時は馬1体、ここに来るまでには少なくとも小型を含んで5体。まだ余力がありそうだけどな。」
ヒョイと石を摘んで下から覗き込むバートだが、見方向を変えてもただの魔法石だ。
「馬だったからか?魔物化するにも魔力量が違うんじゃね?」
バートと共に鍛錬場で馬の魔物討伐に携わったビルガーも繁々と魔法石を見つめる。あの時はシエラが投げた物が何だったかもよく分からなかった。
「ただの魔法石に見えるのにな。」
目の前で見る見る馬が魔物化した、ビルガーは衝撃の場面を見せられたせいかこんなちっぽけな石が原因とは目で見てても未だに信じがたいのだ。
「マキールに送るか?そこからシエラ様に繋いで貰えばいい。」
ガイと同じく風魔法を得意とするガーナルは通信時にも大いに役立つ。
「持ってる側から暴発しても面白く無いからな。ガーナル行けるか?」
「今日は風が静かだからな。行ってこよう。」
「ビルガーもだ。」
「了解。」
ただ小さな小物とメモを送るくらいだがここは敵陣ゴアラの地、少しの魔力をも町の人々に嗅ぎ取らせるわけには行かないのだ。魔力隠匿の魔法石は全員所持しているが、大きく魔力を使う時には街から外れて森の中に入る。その時も安全を期して常に誰かと行動を共にしている。
二人共頭からスッポリとマントを被り音もなく部屋から出て行く。
「さて、バート、ガイ、ソウの3名は今日は休め。俺は薬草の買い付けに行ってくる。」
商人の体であるため、実績作りも必要なのだ。
ゴアラの国境間際のこの町はタギラントと言う。国を隔てているキエリヤ山岳から採れる薬草、山菜などを求めて隣国や、離れた国からも買い付けに来る商人は多く、外見上余りにも差が無いためサウスバーゲンの者が入り込んでも見分けがつかない。
逆に今日に至るまで敵視して来ているのは主にゴアラの民(一部友好的な温厚な人々もいる)なので、こちらからは何か仕掛けない限り、身元と魔力持ちである事さえバレなければ友好的な交流は可能だ。
なのでこの数年通い詰めて馴染みの店も幾つか出来た。
ここ、乾燥薬草店もその一つ。
「やあ!ストランスさん、いつもご贔屓に!」
少し腹の出た背の低い店主が出迎えてくれる。小太りな体をしているが、小まめに立ち動いて店を切り盛りしている遣手だ。そしてこの店の薬草類は質が良いので暗部の中でも評判は高いのだ。
「久しぶりだね。ご主人。今月も世話になるよ。」
「あんた南から来てるんだろ?キエリヤ山岳越えは大丈夫だったかね?」
「う~ん。今回ばかりは傭兵を増やしたから何とかね。」
「やっぱり…魔物は多かったかね?」
「ああ、何時もよりは姿があったね。」
「保守派の奴らさ。全く迷惑極まりないってもんだ。」
「おいおい、良いのかい?俺は余所者だからまだしも店主は元からゴアラの住民だろう?貴族の耳に入ったらまずいんじゃないのか?」
「まずいも何も、奴らが俺ら商売人の首を締めてくるのさ。」
いいかい?もそっと近づく店主は声を潜める。
「保守派の奴らが何かする度に俺ら商人は痛手を食うのさ。魔物が増えれば増えただけ、この国に買い付けに来る外国の商人はグッと数が減るんだよ。傭兵団なんて豪商のあんたみたいな人しか用意できないからね?その度にこっちでは薬草の値を上げることも出来ず収入が落ちるのさ。」
どうにも迷惑、との立場を崩さないこの主人の様に全てのゴアラ人が魔力持ちを忌み嫌っている訳ではない。
ゴアラにも他国から移住して来る者も多い。その様な者達には、保守派の人々が魔力持ちを排除しようとしていること自体理解に苦しむ者もいる。
国境に近づけば近づく程店主の様な人物に会うことができるのも不思議だが。
「うむ、そうか。では店主いつもの1.5倍の量を買おう。今月中に用意できるかい?」
「うぇ!良いのかい?こっちは助かるけど…」
「あぁ。この分だとここに来れない商人もいるだろう?多めに買っても国で捌き切るだろうさ。」
「助かるよ!ストランスさん!他の商店にも声をかけても良いかね?あんたの出国までには準備するから!」
「あぁ、頼んだよ店主。この国のは品が良いって評判良くてね。うちも買えるなら押さえておきたいんだよ。その代わりと言っちゃ何だが、聞きたいことがあるんだが。」
穏やかな店内の会話は続いて行く。店の外には黒いマントの護衛が待機していた。
「こいつがね~。今はなんとも無いな?」
「こんなのがゴロゴロあったらたまらないな。」
山岳ルートを抜け切り別の組と合流できたのは夜明け前。大幅な遅れの為、かなりやきもきさせた様で合流後は初顔合わせのソウと共に手荒い歓迎を受ける事になった。
今回6名チームは他国からの薬草買い付け商人とその護衛として麓の町へ入る。何年も前からこのスタイルで町には怪しまれる事もなく、すんなりと溶け込んでしまった。
町外れの森で用意してくれていた衣類に着替える。山岳ルートを越えるだけでも衣類は汚れるのに今回は魔物の返り血で怪しい程に汚れてしまっていたのでこれはありがたかった。
「これ一つで魔物何体できる?」
暗部隊員ストランス、今回は買い付け商人の主人としてここにいる。濃茶の髪は長く、緩くだが綺麗にまとめて後ろで結えている。瞳は濃い紫、ジッと値踏みする様に魔法石を見つめている。暗部の中でも年長者にあたる。
「さて?シエラ様の時は馬1体、ここに来るまでには少なくとも小型を含んで5体。まだ余力がありそうだけどな。」
ヒョイと石を摘んで下から覗き込むバートだが、見方向を変えてもただの魔法石だ。
「馬だったからか?魔物化するにも魔力量が違うんじゃね?」
バートと共に鍛錬場で馬の魔物討伐に携わったビルガーも繁々と魔法石を見つめる。あの時はシエラが投げた物が何だったかもよく分からなかった。
「ただの魔法石に見えるのにな。」
目の前で見る見る馬が魔物化した、ビルガーは衝撃の場面を見せられたせいかこんなちっぽけな石が原因とは目で見てても未だに信じがたいのだ。
「マキールに送るか?そこからシエラ様に繋いで貰えばいい。」
ガイと同じく風魔法を得意とするガーナルは通信時にも大いに役立つ。
「持ってる側から暴発しても面白く無いからな。ガーナル行けるか?」
「今日は風が静かだからな。行ってこよう。」
「ビルガーもだ。」
「了解。」
ただ小さな小物とメモを送るくらいだがここは敵陣ゴアラの地、少しの魔力をも町の人々に嗅ぎ取らせるわけには行かないのだ。魔力隠匿の魔法石は全員所持しているが、大きく魔力を使う時には街から外れて森の中に入る。その時も安全を期して常に誰かと行動を共にしている。
二人共頭からスッポリとマントを被り音もなく部屋から出て行く。
「さて、バート、ガイ、ソウの3名は今日は休め。俺は薬草の買い付けに行ってくる。」
商人の体であるため、実績作りも必要なのだ。
ゴアラの国境間際のこの町はタギラントと言う。国を隔てているキエリヤ山岳から採れる薬草、山菜などを求めて隣国や、離れた国からも買い付けに来る商人は多く、外見上余りにも差が無いためサウスバーゲンの者が入り込んでも見分けがつかない。
逆に今日に至るまで敵視して来ているのは主にゴアラの民(一部友好的な温厚な人々もいる)なので、こちらからは何か仕掛けない限り、身元と魔力持ちである事さえバレなければ友好的な交流は可能だ。
なのでこの数年通い詰めて馴染みの店も幾つか出来た。
ここ、乾燥薬草店もその一つ。
「やあ!ストランスさん、いつもご贔屓に!」
少し腹の出た背の低い店主が出迎えてくれる。小太りな体をしているが、小まめに立ち動いて店を切り盛りしている遣手だ。そしてこの店の薬草類は質が良いので暗部の中でも評判は高いのだ。
「久しぶりだね。ご主人。今月も世話になるよ。」
「あんた南から来てるんだろ?キエリヤ山岳越えは大丈夫だったかね?」
「う~ん。今回ばかりは傭兵を増やしたから何とかね。」
「やっぱり…魔物は多かったかね?」
「ああ、何時もよりは姿があったね。」
「保守派の奴らさ。全く迷惑極まりないってもんだ。」
「おいおい、良いのかい?俺は余所者だからまだしも店主は元からゴアラの住民だろう?貴族の耳に入ったらまずいんじゃないのか?」
「まずいも何も、奴らが俺ら商売人の首を締めてくるのさ。」
いいかい?もそっと近づく店主は声を潜める。
「保守派の奴らが何かする度に俺ら商人は痛手を食うのさ。魔物が増えれば増えただけ、この国に買い付けに来る外国の商人はグッと数が減るんだよ。傭兵団なんて豪商のあんたみたいな人しか用意できないからね?その度にこっちでは薬草の値を上げることも出来ず収入が落ちるのさ。」
どうにも迷惑、との立場を崩さないこの主人の様に全てのゴアラ人が魔力持ちを忌み嫌っている訳ではない。
ゴアラにも他国から移住して来る者も多い。その様な者達には、保守派の人々が魔力持ちを排除しようとしていること自体理解に苦しむ者もいる。
国境に近づけば近づく程店主の様な人物に会うことができるのも不思議だが。
「うむ、そうか。では店主いつもの1.5倍の量を買おう。今月中に用意できるかい?」
「うぇ!良いのかい?こっちは助かるけど…」
「あぁ。この分だとここに来れない商人もいるだろう?多めに買っても国で捌き切るだろうさ。」
「助かるよ!ストランスさん!他の商店にも声をかけても良いかね?あんたの出国までには準備するから!」
「あぁ、頼んだよ店主。この国のは品が良いって評判良くてね。うちも買えるなら押さえておきたいんだよ。その代わりと言っちゃ何だが、聞きたいことがあるんだが。」
穏やかな店内の会話は続いて行く。店の外には黒いマントの護衛が待機していた。
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