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46 サウラの変化2
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儀式終了翌日、ルーシウスの意識はまだ目覚めない。
大量の吐血をした後、サウラの全力の回復魔法はルーシウスの身体的外傷を全て瞬時に癒した。
医師団の診察によると、多量に出血はしたものの、身体的に命には別状は無いらしい。魔力を激しく消耗した事と、出血の多さが、ルーシウスの昏睡の原因の様だ。
儀式の完了、ルーシウスの存命は甚く喜ばれ、領内は既にお祝いムードである。
国境付近の結界においても、変化を確認出来た。結界の亀裂の消失が確認されたのだ。不安定だった結界も今やほつれるべき所が無いほど、安定したのだ。
ブラードからも結界内を守る各隊に、結界補強成功の伝令が飛ぶ。数ヶ月ぶりに懐かしの我が家に帰れる兵士達は大いに喜んだ事だろう。各隊、結界の状況を確認後、タンチラード領館へ帰還する。
王城にもダッフルより通信魔法石を通して、現場が伝えられた。ルーシウスの回復が案じられてはいるが、サウラが付きっきりで回復を施している旨も併せて伝えられ、安堵もされた。
しかし、心配されているのはルーシウスだけでは無い。昨日は結界石の間で、サウラは最大魔力を出し切って回復をかけたと聞いている。
ルーシウスが、部屋に戻されてより、医師と共に側を離れず、魔力が少し回復しては、ルーシウスに回復魔法を使っているのだ。
「姫様、少しはお休みになりませんと。」
そんなサウラを心配し、本日夜間担当のキリシーが何度目かの声を掛ける。
サウラに対し、気がかりな点は他にもある。サウラの表情が無くなっているのだ。文字通り、ルーシウスの魔法が成功した事にも、ルーシウスは意識を取り戻していないが、命には別状ない事にも心を動かさず、表情一つ動かさない。
儀式の中で、何があったかあらましはカリナから聞いている。
陛下が大量の吐血をした所を見たはずで、サウラの年齢や、経験からしてみてはショックが大きかった事だろうとは予測がつくが、怖がっている様子や、容体に対する心配ではなさそうなのだ。
ほぼ会話もなく、ただじっと何かに耐えている様な表情で、ルーシウスの側にいる。
夜間は数名の付き人が交代でルーシウスの側に居るし、キリシーもそのうちの1人だった。容体も落ち着いている現状ではサウラの様子を慮り、お世話がある時以外は皆部屋からは退出する様にしている。
ポァ、今日何度目かの回復魔法をルーシウスに施す。
体温は暖かいし、顔色も良い。医師も問題ないと話していた。
けれど、ルーシウスはまだ目覚めない。サウラの体も限界に近かった。今も休まず限界に近い魔力を使い続けている。
使う度に嫌悪感に苛まされる。体内に魔力が残っているのですら今は嫌なのだ。
生きる事を諦めるな、と言ってしまった言葉に後悔する。魔力ある限り、この人が生きている間は拷問を受け続けなければならない所にいるのだから。でも、見捨てる事などもちろん出来ない。サウラは進む事も、戻る事も出来ない吊り橋の上に、たった1人で動けずしがみ付いているみたいだった。
カーテンの隙間から入って来た月明かりに照らされたルーシウスの顔は、穏やかな表情だ。あの苦しみが嘘の様に寝息も穏やかにすやすやと眠っている。
そっと目にかかる前髪を掻き分ける。少しの刺激では目覚めない位、深い眠りについているルーシウス。触れた額が暖かい。少し汗ばんでいるのは昨日の苦しみの跡だろうか?
行ってくる、そう言って昨日自分に触れたルーシウスの手も暖かかった。
あの惨状の中に居たら、もう一度暖かいルーシウスに触れられる事など奇跡に近いと思う。
「生きていてくれて良かった。」
ルーシウスに触れながら、ポツリと呟く。
魔法には心底絶望感しか感じなかったあの場で、魔法を使う事を諦めなくて良かった。
生かす事を諦めなくて良かった。
生きていてくれて、本当に良かった。
ルーシウスを覗き込むサウラの目から、知らず涙が溢れて来た。止めようにも、拭こうにも間に合わずルーシウスの頬を濡らす。
「サウラ、褒美が欲しい。」
サウラの耳には掠れて、小さいがハッキリとルーシウスの声が聞こえた。
サウラの滲んだ瞳には、ルーシウスのエメラルドグリーンの瞳はもう見えない。
「お前の、言う通り、生きる事を、諦めなかったぞ。
褒美位、貰っても、いいはずだ。」
どこか痛むのか?それとも寝ぼけているのだろうか?
一息毎にゆっくりと言葉を紡ぐ。
その通りだと思う。功労者には褒美はつきものだろう。
サウラはゆっくりと肯き、ルーシウスの手に身を任せた。
大量の吐血をした後、サウラの全力の回復魔法はルーシウスの身体的外傷を全て瞬時に癒した。
医師団の診察によると、多量に出血はしたものの、身体的に命には別状は無いらしい。魔力を激しく消耗した事と、出血の多さが、ルーシウスの昏睡の原因の様だ。
儀式の完了、ルーシウスの存命は甚く喜ばれ、領内は既にお祝いムードである。
国境付近の結界においても、変化を確認出来た。結界の亀裂の消失が確認されたのだ。不安定だった結界も今やほつれるべき所が無いほど、安定したのだ。
ブラードからも結界内を守る各隊に、結界補強成功の伝令が飛ぶ。数ヶ月ぶりに懐かしの我が家に帰れる兵士達は大いに喜んだ事だろう。各隊、結界の状況を確認後、タンチラード領館へ帰還する。
王城にもダッフルより通信魔法石を通して、現場が伝えられた。ルーシウスの回復が案じられてはいるが、サウラが付きっきりで回復を施している旨も併せて伝えられ、安堵もされた。
しかし、心配されているのはルーシウスだけでは無い。昨日は結界石の間で、サウラは最大魔力を出し切って回復をかけたと聞いている。
ルーシウスが、部屋に戻されてより、医師と共に側を離れず、魔力が少し回復しては、ルーシウスに回復魔法を使っているのだ。
「姫様、少しはお休みになりませんと。」
そんなサウラを心配し、本日夜間担当のキリシーが何度目かの声を掛ける。
サウラに対し、気がかりな点は他にもある。サウラの表情が無くなっているのだ。文字通り、ルーシウスの魔法が成功した事にも、ルーシウスは意識を取り戻していないが、命には別状ない事にも心を動かさず、表情一つ動かさない。
儀式の中で、何があったかあらましはカリナから聞いている。
陛下が大量の吐血をした所を見たはずで、サウラの年齢や、経験からしてみてはショックが大きかった事だろうとは予測がつくが、怖がっている様子や、容体に対する心配ではなさそうなのだ。
ほぼ会話もなく、ただじっと何かに耐えている様な表情で、ルーシウスの側にいる。
夜間は数名の付き人が交代でルーシウスの側に居るし、キリシーもそのうちの1人だった。容体も落ち着いている現状ではサウラの様子を慮り、お世話がある時以外は皆部屋からは退出する様にしている。
ポァ、今日何度目かの回復魔法をルーシウスに施す。
体温は暖かいし、顔色も良い。医師も問題ないと話していた。
けれど、ルーシウスはまだ目覚めない。サウラの体も限界に近かった。今も休まず限界に近い魔力を使い続けている。
使う度に嫌悪感に苛まされる。体内に魔力が残っているのですら今は嫌なのだ。
生きる事を諦めるな、と言ってしまった言葉に後悔する。魔力ある限り、この人が生きている間は拷問を受け続けなければならない所にいるのだから。でも、見捨てる事などもちろん出来ない。サウラは進む事も、戻る事も出来ない吊り橋の上に、たった1人で動けずしがみ付いているみたいだった。
カーテンの隙間から入って来た月明かりに照らされたルーシウスの顔は、穏やかな表情だ。あの苦しみが嘘の様に寝息も穏やかにすやすやと眠っている。
そっと目にかかる前髪を掻き分ける。少しの刺激では目覚めない位、深い眠りについているルーシウス。触れた額が暖かい。少し汗ばんでいるのは昨日の苦しみの跡だろうか?
行ってくる、そう言って昨日自分に触れたルーシウスの手も暖かかった。
あの惨状の中に居たら、もう一度暖かいルーシウスに触れられる事など奇跡に近いと思う。
「生きていてくれて良かった。」
ルーシウスに触れながら、ポツリと呟く。
魔法には心底絶望感しか感じなかったあの場で、魔法を使う事を諦めなくて良かった。
生かす事を諦めなくて良かった。
生きていてくれて、本当に良かった。
ルーシウスを覗き込むサウラの目から、知らず涙が溢れて来た。止めようにも、拭こうにも間に合わずルーシウスの頬を濡らす。
「サウラ、褒美が欲しい。」
サウラの耳には掠れて、小さいがハッキリとルーシウスの声が聞こえた。
サウラの滲んだ瞳には、ルーシウスのエメラルドグリーンの瞳はもう見えない。
「お前の、言う通り、生きる事を、諦めなかったぞ。
褒美位、貰っても、いいはずだ。」
どこか痛むのか?それとも寝ぼけているのだろうか?
一息毎にゆっくりと言葉を紡ぐ。
その通りだと思う。功労者には褒美はつきものだろう。
サウラはゆっくりと肯き、ルーシウスの手に身を任せた。
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