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43 結界石
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別邸に居る間は、キリシー、カリナどちらかが必ず側に付いてくれている。
部屋の外に出れば更に暗部の護衛と引き連れる人数が増えて行くサウラであったが、なぜ、王の部屋に入ると皆消えるのか?王城に居た時より変わらない朝の風景がここでも続いていく。
本日のルーシウスの朝はゆっくりとしたものだった。
サウラと共に朝食をとり、中庭や、庭園を散策した。侍女も、護衛も側には寄らず、2人だけの時間を過ごす。
ルーシウスは特別な事は何も言わず、普段と何も変わらずサウラと接する。サウラも特に何も言わず聞かない。たわいもない会話を交わすのみであった。
定刻になり、儀式の準備へと入る。
ルーシウスもサウラも部屋に戻り、それぞれ身支度を整える。
サウラに用意された物は、胸元に王家の紋が銀糸で刺繍された、ハイネックの白いロングドレスだ。右肩側にのみ柔らかな白いシフォンのマントが裾まで伸びている。
髪もスッキリと纏め上げてもらうと、気温が王都よりも高い西部では涼しいのだ。
準備が整えば、カリナ、キリシー、護衛と共に執務室へと連れ立って行く。
執務室には、既に準備を整えたルーシウスと、ダッフル、騎士、医師達、ブラードが揃っていた。
ルーシウスはサウラと揃いの白の上下に、王家の紋が背中に同じく銀糸で入った衣装だ。サウラに対し、左側にのみ白いマントが覆っている。装飾品のみに青を用いている様だ。
そして、騎士達、ブラードは正装。
執務室に通されたサウラは、礼を持ってルーシウスに挨拶をする。ルーシウスが柔らかな笑顔でそれを受けると、ブラードは儀式の開催を厳かに宣言した。
執務室の奥には結界石の間に繋がる扉がある。しかし扉にはドアノブが付いていない。常時は魔法で封されているこの扉は、王の魔力を流し込むと瞬時に奥に続く通路を出現させるのだ。
結界守りは開封の魔法石を使用し扉を開錠するが、この方法は代々の結界守りにしか伝えられない法だと言う。
扉から現れたのは、大きな石を同等に切り並べた石の通路だ。更に奥へと続いており、ルーシウスは右手でサウラをエスコートする。
一足すすむ毎に乾いた足音が響く。今踏み締めている通路は、既に数百年も前に作られた最早遺跡と言っていい物だ。
高めの天井に、所々採光用の天窓があり、中はとても明るい。壁は今の別邸が建てられた時に同じく作り直したそうで、屋敷に居るのと変わらない雰囲気だ。
正面には大きな木戸が見えている。とても重厚な作りだが、所々色は落ちくすみが目立つ。2枚の木戸一面に彫られた王家の紋の金箔も所々傷みが見える。
木戸を2人掛かりで押し開くと、更に高く打ち出されたままの石の壁、天井は高く、真上に大きな窓が開いていた。
その直下に、人の両手で抱え込める位の大きさの乳白色の丸い石が、大人の腰くらいの高さの台座に置かれていた。
結界石だ。極普通の丸いツルッとした様な石に見える。よく見ると表面には極々僅かではあるが、魔力の霧の様な幕で覆われている様にも見える。
初めてきた場所であるのに、どうしてだか、全く初めてとは思えない。懐かしい気配さえあるのは結界石からの魔力の気配だろうか?強烈な強さは感じないが、常に魔力を出し続けているのが分かる。
ルーシウスはサウラを伴い結界石左手の方へ、其方にカリナも共に控える。
奥にはブラード、結界石右手にはダッフルが控えた。
術の開始に決まりはない、ただ確認のためと事後の対策のために、見届け人を置く決まりにはなっているのだ。
「陛下、お気持ちが整いましたら、いつ始められても結構です。」
ブラードが告げる。
軽く肯いて答えると、ルーシウスはサウラの方へ向き直る。未だに右手はサウラと手を繋いでいる。
サウラからは、見上げた深いエメラルドグリーンの瞳の中に、何が有るのか見ては取れない。ただ穏やかな色である事だけだ。
「初めて見るが、サウラのドレス姿も悪くはないな。」
なんとも、拍子抜けである。自分の姿を褒められて悪い気はしないが、今、言う事だろうか?
「ありがとうございます。」
しかし、素直に答えるサウラである。
「しばし、其方には不自由をかけるかもしれないが、許してほしい。」
今までの謝罪ではなく、これからの事、だ。ルーシウスは何について、何が起こった後に、不自由だと言っているのか。
サウラの眉が少し顰められていく。
あやす様にルーシウスは結い残されたサウラの髪を弄ぶ。掬ってはさらりと流し、掬っては流すを繰り返している。
「諦めないで、下さいね。」
真剣にルーシウスを見つめ、握った手に力を込める。
サウラが出来る精一杯を込めた一言。
ルーシウスは少しだけ目を見開いて、本当に嬉しそうな笑顔になる。
「其方の髪は、本当に心地良いな。」
そのままの手で、サウラの右頬を一撫ですると、行ってくる、と言い置いてサウラの右手側の結界石の前に立つ。
王が結界石の前に立つと同時に、ブラード、ダッフル、カリナの3名は片膝を突き、王の前に礼を取った。
部屋の外に出れば更に暗部の護衛と引き連れる人数が増えて行くサウラであったが、なぜ、王の部屋に入ると皆消えるのか?王城に居た時より変わらない朝の風景がここでも続いていく。
本日のルーシウスの朝はゆっくりとしたものだった。
サウラと共に朝食をとり、中庭や、庭園を散策した。侍女も、護衛も側には寄らず、2人だけの時間を過ごす。
ルーシウスは特別な事は何も言わず、普段と何も変わらずサウラと接する。サウラも特に何も言わず聞かない。たわいもない会話を交わすのみであった。
定刻になり、儀式の準備へと入る。
ルーシウスもサウラも部屋に戻り、それぞれ身支度を整える。
サウラに用意された物は、胸元に王家の紋が銀糸で刺繍された、ハイネックの白いロングドレスだ。右肩側にのみ柔らかな白いシフォンのマントが裾まで伸びている。
髪もスッキリと纏め上げてもらうと、気温が王都よりも高い西部では涼しいのだ。
準備が整えば、カリナ、キリシー、護衛と共に執務室へと連れ立って行く。
執務室には、既に準備を整えたルーシウスと、ダッフル、騎士、医師達、ブラードが揃っていた。
ルーシウスはサウラと揃いの白の上下に、王家の紋が背中に同じく銀糸で入った衣装だ。サウラに対し、左側にのみ白いマントが覆っている。装飾品のみに青を用いている様だ。
そして、騎士達、ブラードは正装。
執務室に通されたサウラは、礼を持ってルーシウスに挨拶をする。ルーシウスが柔らかな笑顔でそれを受けると、ブラードは儀式の開催を厳かに宣言した。
執務室の奥には結界石の間に繋がる扉がある。しかし扉にはドアノブが付いていない。常時は魔法で封されているこの扉は、王の魔力を流し込むと瞬時に奥に続く通路を出現させるのだ。
結界守りは開封の魔法石を使用し扉を開錠するが、この方法は代々の結界守りにしか伝えられない法だと言う。
扉から現れたのは、大きな石を同等に切り並べた石の通路だ。更に奥へと続いており、ルーシウスは右手でサウラをエスコートする。
一足すすむ毎に乾いた足音が響く。今踏み締めている通路は、既に数百年も前に作られた最早遺跡と言っていい物だ。
高めの天井に、所々採光用の天窓があり、中はとても明るい。壁は今の別邸が建てられた時に同じく作り直したそうで、屋敷に居るのと変わらない雰囲気だ。
正面には大きな木戸が見えている。とても重厚な作りだが、所々色は落ちくすみが目立つ。2枚の木戸一面に彫られた王家の紋の金箔も所々傷みが見える。
木戸を2人掛かりで押し開くと、更に高く打ち出されたままの石の壁、天井は高く、真上に大きな窓が開いていた。
その直下に、人の両手で抱え込める位の大きさの乳白色の丸い石が、大人の腰くらいの高さの台座に置かれていた。
結界石だ。極普通の丸いツルッとした様な石に見える。よく見ると表面には極々僅かではあるが、魔力の霧の様な幕で覆われている様にも見える。
初めてきた場所であるのに、どうしてだか、全く初めてとは思えない。懐かしい気配さえあるのは結界石からの魔力の気配だろうか?強烈な強さは感じないが、常に魔力を出し続けているのが分かる。
ルーシウスはサウラを伴い結界石左手の方へ、其方にカリナも共に控える。
奥にはブラード、結界石右手にはダッフルが控えた。
術の開始に決まりはない、ただ確認のためと事後の対策のために、見届け人を置く決まりにはなっているのだ。
「陛下、お気持ちが整いましたら、いつ始められても結構です。」
ブラードが告げる。
軽く肯いて答えると、ルーシウスはサウラの方へ向き直る。未だに右手はサウラと手を繋いでいる。
サウラからは、見上げた深いエメラルドグリーンの瞳の中に、何が有るのか見ては取れない。ただ穏やかな色である事だけだ。
「初めて見るが、サウラのドレス姿も悪くはないな。」
なんとも、拍子抜けである。自分の姿を褒められて悪い気はしないが、今、言う事だろうか?
「ありがとうございます。」
しかし、素直に答えるサウラである。
「しばし、其方には不自由をかけるかもしれないが、許してほしい。」
今までの謝罪ではなく、これからの事、だ。ルーシウスは何について、何が起こった後に、不自由だと言っているのか。
サウラの眉が少し顰められていく。
あやす様にルーシウスは結い残されたサウラの髪を弄ぶ。掬ってはさらりと流し、掬っては流すを繰り返している。
「諦めないで、下さいね。」
真剣にルーシウスを見つめ、握った手に力を込める。
サウラが出来る精一杯を込めた一言。
ルーシウスは少しだけ目を見開いて、本当に嬉しそうな笑顔になる。
「其方の髪は、本当に心地良いな。」
そのままの手で、サウラの右頬を一撫ですると、行ってくる、と言い置いてサウラの右手側の結界石の前に立つ。
王が結界石の前に立つと同時に、ブラード、ダッフル、カリナの3名は片膝を突き、王の前に礼を取った。
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