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24 城下町
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約束の朝はどうして早くに目が覚めるのか?
太陽が顔を出す前に目が覚めた。良い天気だ。
やる事と言えば身支度を整えるくらいだが、昨日のうちに今日着る衣類も揃えてある。
洗面を済ませると、ゆっくりと着替える。早起きのサウラに合わせアミラも既に訪室している。
侍女は仕える人に合わせ、自分の起床時間さえ左右されるのだから、決まったリズムで生活して来たサウラから見たら大変な仕事だと思う。
アミラに後ろ髪半分程を、紺のリボンと共に編み込みアップに纏めてもらい、後は自然に流す。
長袖薄手のワンピースは紺地で、プリーツスカートの裾には光沢のある同色の糸でバラの刺繍が施されている。襟、袖口は白、胸元にもV字の白地に紺の糸で同様のバラの刺繍があしらわれている物だ。
多分、沢山歩くであろう今日もブーツだ。
本日のご予定を…
と、アミラが確認するのも待ちきれない。
城の上階からなら街を見た事はある。
綺麗に整備された道が真っ直ぐに伸びている様や、色々な色や大きさの屋根。遠くからはこれくらいしか分からないものだ。
家の数もすごい事だと思いながら眺めていたものだった。
明らかにこれから行く場所は生まれて初めて行って見る場所。強制的に連れて行かれる所ではないし、自分から望んでいく場所だ。
楽しみすぎて、直ぐに部屋から飛び出したいくらい。
アミラの話が終わったら、ルーシウスと朝食を取って出発だ。
ルーシウスの部屋に入るともう朝食の準備は整い、ルーシウスも身支度を終えて待っている。
白いスタンドカラーのシャツに、琥珀色のベストにズボン、桜色のアプリコットスカーフを着け足元はブーツだ。
お互いに動きやすそうな装いである。
「おはようサウラ。今日の日を楽しみにしていた。」
「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」
挨拶と共に礼を取る。
礼はいらないと言われていても、身に付けたものを実践してみたいサウラであった。
「綺麗な礼だな。アミラは良い教師の様だ。」
満足そうに目を細めてルーシウスが言う。
「はい。いつも分かりやすく教えてくれます。」
「それは良かった。では今日は城下の事を良く知ってもらう為に、私がサウラの教師だな。朝食を軽く済ませてから行こうか。」
いつもの朝食よりも量も種類も少なくてあっさりした物が並んでいたが、楽しみ過ぎて余り気にもならない。
王都の中央までは馬車で行く予定である。そこから町並みを探索しつつ海の側まで行く。帰城の際には予め待機している馬車を使用する。
王族と分かると騒ぎになるので、紋章の付いていない馬車が用意されている。
「馬がいます!馬が。」
城下に行く為には馬車に乗る必要があるが、馬車に乗る前からサウラの反応は良かった。
なんと、馬を実際に見たことがないそうな。
「絵本の中の王子様が乗っていました。」
勿論、乗ったことなどない。
今正に、護衛のために馬に騎乗しようとしている騎士達が瞬時に固まる。
本日の騎士は皆地味な私服で、全員帯剣している。
「馬は騎士にとっても重要な移動手段だ。」
王子様だけが乗るものでは無い。
早速のサウラの驚きに満更でもなさそうにニコニコしているルーシウス。
馬車の中にエスコートし、同乗する。
ドアが閉められ出発する旨が伝えられる。
「騎士の方は乗らないのですか?」
「彼らはあくまでも仕事で来るのだ。主人の邪魔をする様な無粋な真似は絶対にしないだろう。」
どうして一緒に乗る事が主人の邪魔になるのか?いまいち分からないサウラは首を傾げる。
「それよりもサウラ、窓の外からも街が見える。到着する迄景色も楽しもう。」
ゆっくりと馬車が進み出す。ガタンという揺れも新鮮で、表情を動かすサウラを見ているだけで楽しい。
広い庭園を横に見て、ゆっくりと城門を目指す。
いつも見えている景色かもしれないが、馬車の目線は少し高いのだ。これだけで違った世界に見える。
サウラの目がキラキラしている。それを見るルーシウスもまた嬉しそう。
「馬を見たことがないと言ったな。村は山間と聞いた。一頭も居なかったのか?」
山道の移動は人の足よりは馬などの方が良いのではないのだろうか?
「はい。でもロバが居ました。荷物を沢山載せても良く働いてくれますよ。」
村から出て買い付けに行く事が出来ないサタヤ村では、酪農動物も新しく仕入れる事はできないのだ。
その為、サウラが小さい頃に最後の一頭だった牛が死んでしまったのが最後でサタヤ村には牛がいなくなってしまった。
メインの酪農はヤギ、ニワトリ、ウサギ、山で獲れる猪に、野鳥。
時折遭遇する魔物のダークラビットは良い獲物だ。後ろ足の蹴りは強力で危険だが、1固体の大きさが非常に大きくなる為、沢山肉が取れる。
ニワトリは主に卵用、ヤギはミルク用なので山で獲れる獲物は貴重で肉は大切に食べられるのである。
サウラや村の人間には村にあった少ない書物の中からしか外の物事を知り得なかったのである。
懐かしそうに村の話をしているサウラは年相応の少女だ。
ルーシウスの事が無ければ生涯村から出る事なく村で子を産み育て、故郷を愛する1人の人間として生涯を閉じていただろう。
もう時間を戻すことも、もしかしたら、永久にサウラの望みも叶えてやる事も出来ないかもしれない。守りたいと思ったものが出来ても、逆に守られているのだから情けない話だが、出来る事なら自分が故郷の代わりになってやりたいとルーシウスは思う。
サウラがいつでも寂しくないように。
ルーシウス自身はもう、サウラに捕らえられて離れる事は出来ないのだから。
太陽が顔を出す前に目が覚めた。良い天気だ。
やる事と言えば身支度を整えるくらいだが、昨日のうちに今日着る衣類も揃えてある。
洗面を済ませると、ゆっくりと着替える。早起きのサウラに合わせアミラも既に訪室している。
侍女は仕える人に合わせ、自分の起床時間さえ左右されるのだから、決まったリズムで生活して来たサウラから見たら大変な仕事だと思う。
アミラに後ろ髪半分程を、紺のリボンと共に編み込みアップに纏めてもらい、後は自然に流す。
長袖薄手のワンピースは紺地で、プリーツスカートの裾には光沢のある同色の糸でバラの刺繍が施されている。襟、袖口は白、胸元にもV字の白地に紺の糸で同様のバラの刺繍があしらわれている物だ。
多分、沢山歩くであろう今日もブーツだ。
本日のご予定を…
と、アミラが確認するのも待ちきれない。
城の上階からなら街を見た事はある。
綺麗に整備された道が真っ直ぐに伸びている様や、色々な色や大きさの屋根。遠くからはこれくらいしか分からないものだ。
家の数もすごい事だと思いながら眺めていたものだった。
明らかにこれから行く場所は生まれて初めて行って見る場所。強制的に連れて行かれる所ではないし、自分から望んでいく場所だ。
楽しみすぎて、直ぐに部屋から飛び出したいくらい。
アミラの話が終わったら、ルーシウスと朝食を取って出発だ。
ルーシウスの部屋に入るともう朝食の準備は整い、ルーシウスも身支度を終えて待っている。
白いスタンドカラーのシャツに、琥珀色のベストにズボン、桜色のアプリコットスカーフを着け足元はブーツだ。
お互いに動きやすそうな装いである。
「おはようサウラ。今日の日を楽しみにしていた。」
「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」
挨拶と共に礼を取る。
礼はいらないと言われていても、身に付けたものを実践してみたいサウラであった。
「綺麗な礼だな。アミラは良い教師の様だ。」
満足そうに目を細めてルーシウスが言う。
「はい。いつも分かりやすく教えてくれます。」
「それは良かった。では今日は城下の事を良く知ってもらう為に、私がサウラの教師だな。朝食を軽く済ませてから行こうか。」
いつもの朝食よりも量も種類も少なくてあっさりした物が並んでいたが、楽しみ過ぎて余り気にもならない。
王都の中央までは馬車で行く予定である。そこから町並みを探索しつつ海の側まで行く。帰城の際には予め待機している馬車を使用する。
王族と分かると騒ぎになるので、紋章の付いていない馬車が用意されている。
「馬がいます!馬が。」
城下に行く為には馬車に乗る必要があるが、馬車に乗る前からサウラの反応は良かった。
なんと、馬を実際に見たことがないそうな。
「絵本の中の王子様が乗っていました。」
勿論、乗ったことなどない。
今正に、護衛のために馬に騎乗しようとしている騎士達が瞬時に固まる。
本日の騎士は皆地味な私服で、全員帯剣している。
「馬は騎士にとっても重要な移動手段だ。」
王子様だけが乗るものでは無い。
早速のサウラの驚きに満更でもなさそうにニコニコしているルーシウス。
馬車の中にエスコートし、同乗する。
ドアが閉められ出発する旨が伝えられる。
「騎士の方は乗らないのですか?」
「彼らはあくまでも仕事で来るのだ。主人の邪魔をする様な無粋な真似は絶対にしないだろう。」
どうして一緒に乗る事が主人の邪魔になるのか?いまいち分からないサウラは首を傾げる。
「それよりもサウラ、窓の外からも街が見える。到着する迄景色も楽しもう。」
ゆっくりと馬車が進み出す。ガタンという揺れも新鮮で、表情を動かすサウラを見ているだけで楽しい。
広い庭園を横に見て、ゆっくりと城門を目指す。
いつも見えている景色かもしれないが、馬車の目線は少し高いのだ。これだけで違った世界に見える。
サウラの目がキラキラしている。それを見るルーシウスもまた嬉しそう。
「馬を見たことがないと言ったな。村は山間と聞いた。一頭も居なかったのか?」
山道の移動は人の足よりは馬などの方が良いのではないのだろうか?
「はい。でもロバが居ました。荷物を沢山載せても良く働いてくれますよ。」
村から出て買い付けに行く事が出来ないサタヤ村では、酪農動物も新しく仕入れる事はできないのだ。
その為、サウラが小さい頃に最後の一頭だった牛が死んでしまったのが最後でサタヤ村には牛がいなくなってしまった。
メインの酪農はヤギ、ニワトリ、ウサギ、山で獲れる猪に、野鳥。
時折遭遇する魔物のダークラビットは良い獲物だ。後ろ足の蹴りは強力で危険だが、1固体の大きさが非常に大きくなる為、沢山肉が取れる。
ニワトリは主に卵用、ヤギはミルク用なので山で獲れる獲物は貴重で肉は大切に食べられるのである。
サウラや村の人間には村にあった少ない書物の中からしか外の物事を知り得なかったのである。
懐かしそうに村の話をしているサウラは年相応の少女だ。
ルーシウスの事が無ければ生涯村から出る事なく村で子を産み育て、故郷を愛する1人の人間として生涯を閉じていただろう。
もう時間を戻すことも、もしかしたら、永久にサウラの望みも叶えてやる事も出来ないかもしれない。守りたいと思ったものが出来ても、逆に守られているのだから情けない話だが、出来る事なら自分が故郷の代わりになってやりたいとルーシウスは思う。
サウラがいつでも寂しくないように。
ルーシウス自身はもう、サウラに捕らえられて離れる事は出来ないのだから。
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